企業経営理論【7】PPM・ビジネススクリーン

1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「PPM・ビジネススクリーン」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

・経営計画と経営管理
・企業戦略
成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項

【組織論】

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)
  • 花形製品、金のなる木、問題児、負け犬
  • 市場成長率
  • 相対的市場シェア、経験曲線効果
  • SBU(戦略事業単位)
  • ビジネススクリーン(BS)
目次

経営戦略策定プロセスとの関係

最初に、今回の学習内容が【経営戦略策定プロセス】のどこに該当するか、確認しましょう。

今回の内容は、複数事業を展開する企業において、どの事業に集中し、どの事業から撤退するかなどを検討する際の手法を勉強します。

PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)

複数事業を展開する企業では、どの事業に集中し、どの事業から撤退するかを検討することが必要になります。

その際、有名な分析フレームが、BCGが提唱した「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」です。

PPMとは「資金(キャッシュフロー)の観点から、複数事業の経営資源の配分を検討するフレーム」です。

キーワードは「資金(キャッシュフロー)」です。

PPMは、縦軸に「市場成長率」、横軸に「相対的市場シェア」をとり、「花形製品」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に分類し、各SBUへの資金配分を検討します。

なお、PPMで検討されるのは製品や事業部ではなく、「SBU(戦略事業単位)」です。

SBUとは「特定の事業を中心として構成される戦略策定のための組織単位」のことです。独立して事業戦略や計画を立案し、権限の範囲内で経営資源をコントロールできる組織になります。

SBUの特徴

  • 単一事業であり、明確な事業戦略を持つ
  • 他の事業から独立して計画を策定できる
  • それぞれが独立して競合企業を持つ
  • 権限の範囲で経営資源をコントールできる

市場成長率(縦軸)

市場成長率は、プロモーションなどの資金流出」の程度を意味しています。市場成長率が高いと資金流出が多く、市場成長率が低いと資金流出が少ないことになります。

市場成長率の前提には「PLC(製品ライフサイクル)」があります。

これは製品の市場投入から撤退までには「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」のライフサイクルがあるという理論です。

導入期と成長期は市場成長率が高いため資金流出が必要になり、成熟期と衰退期は市場成長率が低いため資金流出が少なくなります。

PLCとPPMの4象限を連動させて、「導入期=問題児」→「成長期=花形製品」→「成熟期=金のなる木」→「衰退期=負け犬」と理解しておきましょう。

相対的市場シェア(横軸)

相対的市場シェアは、コストの低減に伴う「資金収入」の意味しています。相対的市場シェアが高いと資金収入が多く、相対的市場シェアが低いと資金収入が少ないことになります。

相対的市場シェアの前提には「経験曲線効果」があります。

これは製品の累積生産量が増えると、1単位あたり費用が減少する効果をいいます。

マーケットシェアが高いと累積生産量が増えて経験曲線効果が働き、1単位当たり費用が低下し、資金が増加するサイクルになります。

なお、経験効果が働くのは担当者の経験やプロセス改善などの「習熟・改善」が要因です。

相対的市場シェアの算出方法も出題されます。ポイントは「自社を除いて最も高い競合を分母に置く」ことです。トップ企業の場合は「自社÷2位企業」、2位企業の場合は「自社÷トップ企業」で算出します。

PPMの理想的な流れ

企業は市場成長率が高い分野に、新製品を市場投入します。

当初は相対的市場シェアが低いため「問題児」ですが、市場シェアを獲得し、相対的市場シェアが高くなることで「花形製品」に移行します。その後、市場が成熟して市場成長率が低下することで「金のなる木」に移行するのが理想的な流れです。

また、企業の成長には「問題児の育成」「花形製品の維持」も大事です。

そこで、「金のなる木」で獲得した資金を、①有望な「問題児」に投入し、「花形製品」に育成する、②「花形製品」の維持に投入するのが理想的な資金の流れになります。

PPMの問題点

PPMですが、問題点も指摘されています。試験の頻出論点なので、絶対覚えておきましょう。

PPMの問題点

  • キャッシュフローの観点のみで、SBU間のシナジーが考慮されていない
  • 過去の分析になるので、新規事業の手掛かりにならない
  • 競争の手段をコストリーダーシップにしか置いていない
  • 負け犬に分類されたSBUの社員のモラールが低下する
  • 経営資源の重要性を軽視している

ビジネススクリーン(BS)

PPMは資金(キャッシュフロー)の観点からの資源配分でしたが、それでは狭すぎるのでは?という発想で、GEとマッキンゼーによって開発されたのが「ビジネススクリーン」です。

PPMとの共通点と相違点の視点で整理しておきましょう。

PPMと同じく、【成長性】と【収益性】で評価しますが、ビジネススクリーンは縦軸が「業界魅力度」、横軸が「自社の事業強度」となっています。

PPMとの相違点は「象限数が9つに増えている」だけでなく、業界の魅力度を「市場規模、市場成長率、産業の収益性など」、自社の事業強度を「市場における地位、相対的収益性など」といった定量や定性的な複数要素から設定している点になります。

【過去問】令和3年度 第2問(PPM)

問題

Q.ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が開発した「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント」(以下「PPM」という)と、その分析ツールである「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス(BCG 成長-シェア・マトリックス)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
PPM の分析単位である戦略事業単位(SBU)は、製品市場の特性によって客観的に規定される。

【イ】
「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」では、縦軸に市場成長率、横軸に戦略事業単位(SBU)の売上高をとり、その2 次元の座標軸の中に各事業が位置付けられる。

【ウ】
「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「金のなる木」に分類された事業は、将来の成長に必要な資金を供給する。

【エ】
「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「花形」に分類された事業は、生産量も大きく、マージンは高く、安定性も安全性も高い。

【オ】
「プロダクト・ポートフォリオ・マトリックス」において「問題児」に分類された事業からは撤退すべきである。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。SBUは製品市場の特性ではなく、企業内部で主観的に決定するため、不適切です。

イ:不適切。縦軸は正しいですが、横軸は「相対的市場シェア」であるため、不適切です。

ウ:適切。将来の成長に必要な資金を供給するのは「金のなる木」であるため、適切です。

エ:不適切。「花形」は必要な資金も多くなるため、マージンは低くなる傾向にあるため、不適切です。

オ:不適切:「問題児」は、「育成」が基本戦略であるため、不適切です。

【過去問】令和元年度 第2問(PPM)

問題

Q.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、自社の事業の成長率と相対的な市場シェアとを基準として事業を分類し、戦略事業単位が他の戦略事業単位と製品や市場について相互に関連した統合的な戦略を持つ。

【イ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、成長市場で市場シェアを維持するために必要な再投資を大きく上回るキャッシュフローをもたらし、資金の投入によって競争優位を維持する「花形」よりも、資金の流出を削減して競争優位を獲得できる「問題児」の選択が重要である。

【ウ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、「花形」は分野の将来性に大きな魅力があり、特定の事業に対する集中的な投資の主要な資金供給源としても重要であり、「負け犬」からの撤退を支える役割を果たす。

【エ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、事業間のマーケティングや技術に関するシナジーが考慮されていないが、外部技術の導入によって規模の経済を達成することで優位性を構築する事業にも適用できる。

【オ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、全社的な資源配分の論理の1 つとして位置づけられ、成長率の鈍化した業界の「花形」事業の大きな余剰資金と「負け犬」を売却して得た資金を「金のなる木」に集中的に投入して競争優位を維持する。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。自社の事業の成長率ではなく、市場の成長率です。また、戦略事業単位は、個々に独立した単位であり、関連した統合戦略を持つわけではないため、不適切です。

イ:不適切。維持するための再投資を大きく上回るキャッシュフローをもたらすのは、「花形」ではなく、「金のなる木」であるため、不適切です。

ウ:不適切。特定の事業に対する主要な資金源になるのは、「花形」ではなく、「金のなる木」であるため、不適切です。

エ:適切。PPMはシナジー効果は考慮されていません。なお、規模の経済とPPMは明確に関係ありませんが、生産量の拡大が経験曲線効果に関連するため、適切です。

オ:不適切:「花形」ではなく、「金のなる木」であるため、不適切です。

【過去問】平成28年度 第2問(PPM)

問題

Q.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
競争優位性のある「金のなる木」事業は、分野の将来性に大きな魅力はなく、さらなる資金投下には資金効率からの判断が必要である。

【イ】
市場成長率の高い「花形商品」事業からの大きな余剰資金と「問題児」事業の売却で得た資金は、衰退期に入った業界の「金のなる木」事業に集中的に投入して市場地位を維持することが重要である。

【ウ】
市場成長率の高い「花形商品」事業の生み出す余剰資金は大きいので、その資金を「問題児」事業に分散して投入を図ることが重要である。

【エ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントでは、事業への資金の投入量は自社の相対的な市場シェアで決まると考える。

【オ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントは、キャッシュフローの観点から企業の事業戦略の方向性を示し、事業間のキャッシュフローのアンバランスを許容している。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。「金のなる木」は、市場成長率が低いため、資金投下には資金効率からの判断が必要であるため、適切です。

イ:不適切。「花形」は、資金投下が必要であるため大きな余剰資金は望めません。また、集中的に資金投入するのは「問題児」であるため、不適切です。

ウ:不適切。「花形」は、資金投下が必要であるため大きな余剰資金は望めないため、不適切です。

エ:不適切。事業への資金の投入量を規定するのは市場成長率であるため、不適切です。

オ:不適切:PPMは、資金(キャッシュフロー)の観点から、複数事業の経営資源の配分を検討するフレームであり、企業の事業戦略の方向性を示すものではないため、不適切です。

【過去問】平成27年度 第1問(PPM)

問題

Q.プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
競争優位性を期待できない「負け犬」事業からの撤退の検討に加え、資金投入によって成長市場で競争優位の実現を期待できる「問題児」の選択が重要である。

【イ】
競争優位性を期待できない「負け犬」事業からの撤退を進めるのに重要な資金供給源は「花形商品」の事業である。

【ウ】
衰退期に入った業界の「花形商品」事業は、徐々に撤退してできるだけ多くのキャッシュを生み出させることが重要である。

【エ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方では、資金の流入と流出は市場と自社事業との成長率で決まる。

【オ】
プロダクト・ポートフォリオ・マネジメントの考え方は、外部からの資金調達を考慮していないが、事業の財務面を重視して事業間のマーケティングや技術に関するシナジーを考慮している。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。「負け犬」「問題児」の説明として、理解しておきましょう。

イ:不適切。資金供給源は「花形」ではなく、「金のなる木」であるため、不適切です。

ウ:不適切。「花形」ではなく、「負け犬」の説明であるため、不適切です。

エ:不適切。資金の流入と流出を規定するのは、相対的マーケットシェアと市場成長率であるため、不適切です。

オ:不適切:PPMは、事業間のマーケティングや技術に関するシナジーを考慮していないため、不適切です。

今日のおさらい

今回は「PPM・ビジネススクリーン」を勉強しました。

PPMは頻出論点です。PPMの各象限の特徴、資金の理想的な流れ、問題点は絶対覚えてきましょう。

PPM・ビジネススクリーン

  1. PPMとは「キャッシュフローの観点から、複数事業の経営資源の配分を検討するフレーム」。縦軸に「市場成長率」、横軸に「相対的市場シェア」をとり、「花形製品」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4象限に分類し、各SBUへの資金配分を検討する
  2. PPMは「キャッシュフローの観点のみで、SBU間のシナジーが考慮されていない」「過去の分析になるので、新規事業の手掛かりにならない」「負け犬に分類されたSBUの社員のモラールが低下する」などの問題点がある
  3. そこで開発されたのがGEとマッキンゼーの「ビジネススクリーン」。複数の要素をもとに、縦軸に「業界魅力度」、横軸に「自社の事業強度」を設定した9象限から構成される

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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