企業経営理論【14】イノベーションの種類、普及プロセス

中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「イノベーションの種類、普及プロセス」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項

【組織論】

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • イノベーション
  • プロダクトイノベーション、プロセスイノベーション
  • インクリメンタルイノベーション、ラディカルイノベーション
  • リバースイノベーション、オープンイノベーション
  • 技術革新のS字カーブ
  • イノベーションのジレンマ
  • 生産ユニットの進化過程
  • イノベーションの普及プロセス、キャズム

試験対策

「インクリメンタルイノベーション」「ラディカルイノベーション」「技術革新のS字カーブ」「イノベーションのジレンマ」の特徴は理解しておきましょう。

目次

イノベーションとは

イノベーションとは「技術革新」と訳されることが多いですが、本来はもっと広い意味を持っています。

具体的には「従来の製品やサービス、仕組みなどに対して、新しい技術や考え方を取り入れて、新たな価値を創造し、社会的に大きな変化を起こすこと」をいいます。

イノベーションで有名なシュンペーターは、イノベーションの種類として、以下の5つを挙げています。

試験に出題されないですが、中小企業政策の【経営革新】に関連するため、イメージを理解しておきましょう。

イノベーションの種類(シュンペーター)

  • 新しい製品/サービスの創出
    • プロダクション・イノベーション
  • 新しい生産方法の導入
    • プロセス・イノベーション
  • 新しい市場への参入
    • マーケット・イノベーション
  • 新しい資源の獲得
    • サプライチェーン・イノベーション
  • 新しい組織の実現
    • オルガニゼーション・イノベーション

イノベーションの種類

イノベーションには、いくつかの分類があります。以下の図で整理しておきましょう。

イノベーションの種類

  • プロダクトイノベーション(製品革新)
    • 従来にはない新製品を創り出すための技術革新
  • プロセスイノベーション(工程革新)
    • 既存製品の生産工程や生産技術を改良するための技術革新
  • インクリメンタルイノベーション(漸進的イノベーション)
    • 既存製品の部分改良の積み重ねで、漸進的に進歩する技術革新
  • ラディカルイノベーション(破壊的イノベーション)
    • 従来の製品とは全く異なる革新的な技術をもたらす技術革新
  • リバースイノベーション
    • 新興国のニーズに合わせて開発した、シンプルかつ低価格の製品や技術を、新興国だけでなく、先進国向けにも展開すること(逆輸入すること)
  • オープン・イノベーション
    • 大学や他社の技術やアイディア等を有機的に結合することで、新しい価値を生み出すイノベーション

インクリメンタルイノベーション(漸進的イノベーション)の関連キーワードとして「生産性のジレンマ」も覚えておきましょう。

これは特定産業の標準的なデザイン(ドミナントデザイン)が確立された後は、インクリメンタルイノベーションは生産性向上に寄与するが、大幅な技術革新を阻害してしまうことをいいます。

また、試験対策として、オープン・イノベーションのメリットも覚えておきましょう。

オープン・イノベーションのメリット

  • 組織が活性化する
  • 開発費用を抑えることができる
  • 開発のスピードが向上する

オープン・イノベーションは、基盤技術の開発よりも事業化レベルのコラボレーションを促進する特徴があります。

一方で、オープン・イノベーションは、自社の技術やアイディアが流出するリスクがあるため、どこまで共有して、どこを隠すかといった「オープン&クローズ戦略」が重要になります。

技術革新のS字カーブ

製品の技術進歩の過程を見ていくと、最初の頃は、知識不足などから開発努力を技術成果に活かせない状況が続きますが、知識の蓄積とともに技術成果が急速に向上し、その後、成果が緩やかになっていくS字カーブとなることが多いです。これを「技術革新のS字カーブ」といいます。

また、技術は連続ではなく、非連続のS字カーブを取ります。これを「技術革新の非連続性」といいます。

わかりやすい例として、「フィルムカメラ」の延長線上に「デジタルカメラ」があるのではなく、別技術が発生し、旧技術に取って変わることになります。

旧技術における技術成果はインクリメンタルイノベーション(漸進的イノベーション)ですが、新技術に変わるときはラディカルイノベーション(破壊的イノベーション)が発生する点も理解しておきましょう。

イノベーションのジレンマ

クリステンセン教授は、数々の業界で技術革新のS字カーブがあることを発見して「イノベーションのジレンマ」を提唱しました。

イノベーションのジレンマとは「リーダー企業が既存製品のインクリメンタルイノベーションに注力しすぎて、ラディカルイノベーションに対応できなくなること」です。

既存顧客の細かい要望に応えていくと、顧客の要求水準を超えたオーバースペックになり、初心者には使いづらい製品になってしまいます。

でも、リーダー企業はそれに気づかず、新しい技術革新を伴った新製品が出現しても、不十分な品質水準に対して「あれじゃ、ダメだよね」と無視しがちです。

特に、新しい技術革新を伴った技術は、既存製品よりも性能が低く、市場規模が小さく、利益率が低いため、リーダー企業が対応が取りづらい側面も強いです。

ただし、新製品が改良して顧客の要求水準を満たし始めると、新製品に取られてしまう現象を指摘しています。

既存製品の知識や経験に固執するのではなく、製品を横断して知識を共有したり、専門的な技術や知識を持たない利用者からの評価を大事にしたり、既存とは別組織を設立して情報収集・製品開発を行うなどの対策が重要になります。

逆に、専門領域に固有の知識や経路依存的に蓄積される知識は、イノベーションの阻害要因になることも理解しておきましょう。

イノベーションの吸収能力

吸収能力とは「企業が新しい情報の価値を同化し、その商業目的への応用のために同化する能力」をいいます。イノベーションにとって重要な要素になります。

令和5年度の設問では、吸収能力を「既存知識によって新しい情報の価値に気付き、それを活用する能力である」と記述しています。

吸収能力の3つの要素として、以下を理解しておきましょう。

吸収能力の3要素

  • 新たな価値の認識(=新しい価値に気づき)
  • 外部からの情報・技術の獲得(=社内に価値を取り入れて)
  • 獲得したものを社内技術と融合し活用できる状態にする同化(=既存知識と融合する)

生産ユニットの進化過程

生産ユニットの進化過程とは「横軸に時間、縦軸に革新の頻度をとり、プロダクトイノベーション(製品革新)とプロセスイノベーション(工程革新)の観点から分析する」ものです。

生産ユニットの進化過程

  1. 流動化段階
    • ドミナントデザイン(=標準となる製品アーキテクチャ)が確立するまでの段階
  2. 成長段階
    • 製品革新の頻度が減少しつつ、工程革新が進む段階
  3. 特定化段階
    • 工程革新が成熟してきた段階

流動化段階では、ドミナントデザインが確立していないため、多数の製品が存在します。

この段階では、不確定要素が大きいため、自社内で設計や製造を対応します。また、リードユーザーの意見を聞きながら改善していく吸収能力が重要になります。

成長段階では、ドミナントデザインが確立したため、工程革新の頻度が増えていき、生産性向上を図っていきます。この段階では、価格競争が激しくなっていきます。必要に応じて、部品メーカーを垂直統合して体制を強化していきます。

特定段階では、工程革新の頻度も少なくなり、生産工程も標準化され、企業間の水平分業が進みます。その結果、製品のコモディティ化が生じやすくなります。この状況を打破するには、新しいものを取り込んでいくため、一定以上の垂直統合が必要と言われています。

イノベーションの普及プロセス

イノベーションの普及プロセスとは、ロジャースにより提唱された理論で、「新商品に対する採用の順番により、消費者は5つのタイプに分類される」とする理論です。

具体的には、新商品の採用の早い順から、(1)イノベーター(2.5%)、(2)アーリー・アダプター(13.5%)、(3)アーリー・マジョリティ(34.0%)、(4)レイト・マジョリティ(34.0%)、(5)ラガード(16.0%)の5つのタイプに分類しました。

ロジャースは、アーリー・アダプターへの普及が商品普及のポイントであることを見出し、イノベーターとアーリー・アダプターの割合を足した16%を「普及率16%の論理」として提唱しました。

また、ムーアは著書『キャズム』の中で、イノベーターとアーリー・アダプターで構成される初期市場と、アーリー・マジョリティ以降の大衆市場の間には、「キャズム(市場の断層)」があることを発見しました。

キャズムの原因は、アーリー・アダプターが「誰も使っていない商品を先に使う」、アーリー・マジョリティは「多くの人が採用している安心できる商品を使う」を望む層である点です。

キャズム理論では、普及のためにはキャズムを超えて、アーリー・マジョリティに受け入れられる需要を喚起できるかが課題になると主張しています。

【過去問】平成30年度 第9問(イノベーション)

問題

Q.技術のイノベーションは発生してから、いくつかの特徴的な変化のパターンをとりながら進化していく。イノベーションの進化に見られる特徴に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【ア】
技術システムが均衡状態にあることが、技術開発への努力を導く不可欠な力になるので、技術間の依存関係や補完関係に注意することは重要である。

【イ】
技術進歩のパターンが経時的にS字型の曲線をたどることがあるのは、時間の経過とともに基礎となる知識が蓄積され、資源投入の方向性が 収斂(しゅうれん)するからである。

【ウ】
優れた技術が事業の成功に結びつかない理由として、ある技術システムとそれを使用する社会との相互依存関係が、その後の技術発展の方向を制約するという経路依存性を挙げることができる。

【エ】
製品の要素部品の進歩や使い手のレベルアップが、予測された技術の限界を克服したり、新規技術による製品の登場を遅らせることもある。

【オ】
連続的なイノベーションが成功するのは、漸進的に積み上げられた技術進化の累積的効果が、技術の進歩や普及を促進するからである。

解答・解説

正解:ア

ア:不適切。技術システムが均衡状態である場合、新しい技術に開発に進む場合もあれば、そこに安住することもあるため、技術開発への努力を導く不可欠な力になるとは言えないため、不適切です。

イ:適切。S字型になるのは、時間の経過ともに、基礎となる知識が蓄積され、資源投入の方向性が収斂するためであり、適切です。

ウ:適切。経路依存性とは、過去の歴史・出来事により決まった制度や仕組みに拘束される現象です。経路依存性があるため、優れた技術が事業の成功に結びつかないことがあるため、適切です。

エ:適切。既存製品の進歩や使い手のレベルアップにより、新規技術による製品の登場を遅らせることがあるため、適切です。

オ:適切。連続的なイノベーションは、技術進化が漸進的に積み上げられた累積効果に基づくため、適切です。

【過去問】平成30年度 第20問(イノベーション)

問題

Q.イノベーションを起こすために必要な専門知識が社会に分散し、オープンイノベーションや企業間システムの重要性が高まるとともに、オープンイノベーションの解釈も広く多義的になってきている。チェスブローが提唱したオリジナルのオープンイノベーションや企業間システムに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
オープンイノベーションは、基盤技術の開発などのコラボレーションというよりも、事業化レベルのコラボレーションを促進するという特徴がある。

【イ】
オープンイノベーションを促進するためには、ネットワーク外部性がある製品を開発している企業同士が共通の規格を採用する必要がある。

【ウ】
オープンイノベーションを通じて、自社内で技術開発投資を行う必要がなくなるため、コストやリスクを負担することなく、新製品を開発できるメリットがある。

【エ】
自社内の非効率な業務のアウトソースを通じて、オープンイノベーションを低コストで行うことができるようになる。

【オ】
製品アーキテクチャーがモジュラー化するほど垂直統合が進むため、企業間の水平的連携システムを通じたオープンイノベーションが重要になる。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。オープンイノベーションは、基盤技術の開発よりも事業化レベルのコラボレーションを促進する特徴があるため、適切です。

イ:不適切。オープンイノベーションは共通の規格を採用する必要はないため、不適切です。

ウ:不適切。オープンイノベーションは大学や他社の技術やアイディア等を有機的に結合するため、自社で技術開発を行う必要がなくなるわけではないため、不適切です。

エ:不適切。自社内の非効率な業務のアウトソースがオープンイノベーションにつながるわけではないため、不適切です。

オ:不適切。製品アーキテクチャがモジュラー化するほど、水平分業が進むため、不適切です。

【過去問】平成28年度 第4問(設問1)(イノベーション)

問題

Q.次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。

現代の企業にとって、外部組織との連携の活用は、事業の競争力を構築するための主要な経営課題となっている。ヘンリー・チェスブロウは「企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること」をオープン・イノベーションと定義した。技術や市場の変化の激しい経営環境では、経営資源の制約のある中小企業にとっても、新商品開発でのオープン・イノベーションの必要性は小さくない。
オープン・イノベーションにはメリットとデメリットがあり、オープン・イノベーションによる競争力の構築にあたっては、経営者の戦略的な判断が問われる。自動車産業での密接な企業間関係に見られるように、日本企業も企業外部の経営資源の活用に取り組んできた。近年では、大学や公的研究所などの研究組織との共同開発
に積極的な取り組みをする企業も増えている。

(設問1)
文中の下線部①の「オープン・イノベーションにはメリット」があることに関する記述として、最も不適切なものはどれか

【ア】
オープン・イノベーションは、企業外部の経営資源の探索プロセスにおいて、内部での商品開発に対する競争圧力が強くなり、組織の活性化につながる。

【イ】
オープン・イノベーションは、企業内部の優れた人材に限らず、企業外部の優秀な人材と共同で新商品開発を進めればよく、内部での開発コストの低減が期待できる。

【ウ】
オープン・イノベーションは、研究開発から事業化・収益化までのすべてのプロセスを企業内部で行う手法の延長上に位置付けられるが、企業内部の経営資源の見直しに左右されずに進捗する。

【エ】
オープン・イノベーションは、一般的により高い専門性をもつ企業との連携などによって新商品開発プロセスのスピードアップにつながる。

解答・解説

正解:ウ

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。オープンイノベーションは大学や他社の技術やアイディア等を有機的に結合するため、すべてのプロセスを企業内部で行う手法ではないため、不適切です。

エ:適切。選択肢の通りです。

【過去問】平成29年度 第11問(イノベーション)

問題

Q.製品のイノベーションを起こすには、企業の内外の知識や情報を動員し、それを有効に活用することが重要である。イノベーションのタイプと知識の関係に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
アーキテクチャの構成要素の改善を積み重ねながら、製品を進化させるイノベーションでは、システムの複雑性に対処するための専門横断的に共有される知識が重要になる。

【イ】
アーキテクチャの構成要素の組み合わせやつながり方を変えることによって生み出されるイノベーションでは、専門領域に固有な知識がイノベーションの機会を捉えるうえで重要な役割を担う。

【ウ】
アーキテクチャの構成要素を見直して、ユーザーの価値の変化に適応した製品コンセプトを生み出すイノベーションでは、専門的な技術知識や経路依存的に蓄積される知識が有効になる。

【エ】
アーキテクチャを変えることなく、構成要素のイノベーションを起こそうとするモジュラー・イノベーションでは、その構成要素をめぐって培われた学習や経験などのノウハウ的な知識を用いることが有効である。

【オ】
製品コンセプトを変えるようなラディカルなイノベーションでは、専門的な技術知識を持たないユーザーからの製品価値評価を用いずに、研究開発部門から生み出される専門知識を活用することが重要になる。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。インクリメンタルイノベーションでは、システムの複雑性に対処するための専門横断的に共有される知識が重要になるため、適切です。

イ:不適切。構成要素の組み合わせを変えるようなイノベーションでは、構成部品のつながりに関する知識が重要であるため、不適切です。

ウ:不適切。ユーザーの価値観の変化に対応するには、経路依存的に蓄積される知識よりも、未来志向や顧客ニーズの把握が重要であるため、不適切です。

エ:不適切。構成要素が変化していくため、構成要素をめぐって培われた学習や経験などのノウハウ的な知識は適さない可能性があるため、不適切です。

オ:不適切。ラディカルなイノベーションでは、専門的な技術知識を持たないユーザーからの製品価値評価の重要性が高まるため、不適切です。

【過去問】令和4年度 第9問(イノベーション)

問題

Q.イノベーションのプロセスにおいて重要とされる吸収能力(absorptive capacity)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

a:破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の性能の方が持続的技術を利用した製品の性能よりも低い。

b:破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品市場の方が持続的技術が対象とする製品市場よりも小規模である。

c:破壊的技術が登場した初期段階においては、破壊的技術を利用した製品の方が持続的技術を利用した製品よりも利益率が低い。

〔解答群〕
ア a:正  b:正  c:正
イ a:正  b:誤  c:正
ウ a:誤  b:正  c:誤
エ a:誤  b:誤  c:正
オ a:誤  b:誤  c:誤

解答・解説

正解:ア

解説:ラディカルイノベーションにおける破壊的技術の初期段階は、従来の製品よりも性能が低く、小規模になることが多いです。また、従来の製品が見逃していた市場であることが多く、利益率が低いことを理解しておきましょう。

【過去問】令和5年度 第9問(イノベーション)

問題

Q.企業におけるイノベーションには外部からの知識が欠かせない場合が多い。イノベーションのプロセスにおいて重要とされる吸収能力(absorptive capacity)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
多くの企業にとって、吸収能力を高めることが研究開発投資の最大の目的である。

【イ】
企業の吸収能力は、新しい知識やスキルを組織内部のメンバーに共有させる組織能力であり、組織内の個人が保有する既存の知識とは関係がない。

【ウ】
企業の吸収能力は、個々の構成メンバーの吸収能力に大きく左右されるため、個人の吸収能力の総和と考えられる。

【エ】
吸収能力とは、既存知識によって新しい情報の価値に気付き、それを活用する能力である。

【オ】
吸収能力は、研究開発部門に特有の能力である。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。一瞬わかりにくいですが、吸収能力を高めることが研究開発投資の【最大】の目的とは言いづらいため、不適切です。

イ:不適切。吸収能力の要素の一つに、既存知識との融合があるため、不適切です。

ウ:不適切:個々の構成メンバーの吸収能力に大きく左右されますが、総和とは限らないため、不適切です。

エ:適切。記述の通りです。

オ:不適切。吸収能力は、研究開発部門に特有の能力ではないため、不適切です。

【過去問】令和6年度 第9問(イノベーション)

問題

Q.W.アバナシーとJ.アッターバックによって提唱された産業発展の段階とイノベーションのモデル(A-Uモデル)に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
ある製品について、使用状況、仕様、評価基準が顧客の間で共有されるようになると、ドミナントデザインが定まってくる。

【イ】
生産者の評価基準は、工程イノベーションが主流になると、コストから製品の新規性に移っていく。

【ウ】
製品そのものや、それを背後で支える各種の要素技術の進歩をもたらす製品イノベーションは、ドミナントデザインが生じた後により多く現れる。

【エ】
ドミナントデザインが出現すると、機械的組織よりも有機的組織が、その産業において増えていく。

【オ】
ドミナントデザインが出現すると、製品イノベーションも工程イノベーションも活発化する。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。ドミナントデザインとは、標準となる製品アーキテクチャのことであるため、適切です。

イ:不適切。工程イノベーションが主流になると、製品の新規性からコストに移っていくため、不適切です。

ウ:不適切:製品イノベーションは、ドミナントデザインよりも前に生じやすいため、不適切です。

エ:不適切。有機的組織(不確実性が高い環境に適する)と機械的組織(安定的な環境に適する)の表記が逆であるため、不適切です。

オ:不適切。ドミナントデザインが発生すると、工程イノベーションが多く発生するため、不適切です。

【過去問】平成27年度 第9問(イノベーション)

問題

Q.社外の企業や研究機関と連携して展開されるイノベーションが注目されている。そのようなイノベーションへの対応や課題に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
NIH(Not Invented Here)現象と呼ばれる社外技術の活用への抵抗の主な理由は、社外技術への不信感や予算削減への抵抗ではなく、自社技術への強い自信にある。

【イ】
新しいモノ好きのリードユーザー(先端顧客)からの製品情報は、技術的な裏付けを欠くので、イノベーションのアイデアとして評価するにとどめる。

【ウ】
自社の経営資源を社外に開放して活用することによって、知的財産権からの収入やジョイントベンチャー設置による事業収入などの多様な収益源を確保できる可能性が生まれる。

【エ】
製品が市場に出るまでの時間や製品のライフサイクルが短くなるにつれて、研究開発部門への技術人材や資金の投入が効果的でなくなるので、他社とのオープンな技術交流による研究開発にそれらを集中的に投入しなければならない。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。NIH(Not Invented Here)現象とは、ある組織が別の組織が発祥であることを理由に、そのアイデアや製品を採用しない/採用したがらない現象をいいます。その理由は「自社で開発したものではないから」といった抵抗から生じるため、不適切です。

イ:不適切。リードユーザーではなく、イノベーターであるため、不適切です。

ウ:適切:選択肢の通りです。

エ:不適切。研究開発部門への技術人材や資金の投入は組織成長に不可欠であるため、不適切です。

【過去問】令和元年度 第9問(キャズム)

問題

Q.新製品や新サービスを受け入れる市場が一様ではなく、いくつかの異なったグループによって構成されているとする考え方に、市場をマニア・マーケットと大衆マーケットとに分けて市場の顧客層の質的な違いに着目するキャズム(Chasm:市場の断層)の理論がある。キャズムの理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
キャズムの理論では、大衆マーケットにおける新製品や新サービスの急成長は、目利きの層(アーリー・アドプター)と流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)に対し、並行的に受け入れられる必要がある。

【イ】
キャズムの理論では、大衆マーケットを構成する流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)にいかに受け入れられ、その需要を喚起するかが課題となる。

【ウ】
キャズムの理論では、大衆マーケットを構成する流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)には受け入れられても、無関心の層(ラガード)に受け入れられるかどうかが問題となる。

【エ】
キャズムの理論では、まずマニア・マーケットを構成する新しいモノ好きの層(イノベーター)と無関心の層(ラガード)とに受け入れられることが必要である。

【オ】
キャズムの理論では、マニア・マーケットを構成する新しいモノ好きの層(イノベーター)に受け入れられ、いかに目利きの層(アーリー・アドプター)の反応を推測するかが問題となる。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。目利きの層(アーリー・アドプター)と流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)で平衡的に受け入れられることはないため、不適切です。

イ:適切。キャズム理論は、大衆マーケットを構成する流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)にいかに受け入れられるかが重要であり、その需要を喚起するかが課題であるため、適切です。

ウ:不適切:キャズム理論では、無関心の層(ラガード)に受け入れられるかは問題ではないため、不適切です。

エ:不適切。キャズム理論では、無関心の層(ラガード)に受け入れられるかは問題ではないため、不適切です。

オ:不適切。キャズムの理論では、マニア・マーケットを構成する新しいモノ好きの層(イノベーター)、目利きの層(アーリー・アドプター)の両方に受け入れられることが必要であるため、不適切です。

【過去問】平成26年度 第10問(キャズム)

問題

Q.創業間もないベンチャー企業は、新製品や新サービスを受け入れる市場が一様ではなく、いくつかの異なったグループによって構成されていることに着目する必要がある。新製品・サービスの販売に悪戦苦闘する場合にみられる「市場の断層(キャズム)」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
新しいモノ好きの層(イノベーター)や目利きの層(アーリー・アドプター)には受け入れられても、いかに流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)に受け入れられるかが課題である。

【イ】
新しいモノ好きの層(イノベーター)や流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)には受け入れられても、いかに無関心の層(ラガード)に受け入れられるかが課題である。

【ウ】
流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)には一時的に受け入れられても、新しいモノ好きの層(イノベーター)には受け入れられないという問題である。

【エ】
流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)の反応を見て、新しいモノ好きの層(イノベーター)や目利きの層(アーリー・アドプター)の反応を勘違いして判断してしまう問題である。

【オ】
流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)や流行を後追いする層(レイト・マジョリティー)には受け入れられても、いかに無関心の層(ラガード)に受け入れられるかが課題である。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。無関心の層(ラガード)ではなく、流行に敏感な層(アーリー・マジョリティー)に受けられることが重要であるため、不適切です。

ウ:不適切:新しいモノ好きの層(イノベーター)にも受け入れられる必要があるため、不適切です。

エ:不適切。キャズム理論は、新製品の採用プロセスを表したものであるため、不適切です。

オ:不適切。キャズムの理論では、無関心の層(ラガード)は商品を購入しない層であるため、不適切です。

今回のおさらい

今回は「イノベーションの種類、普及プロセス」を勉強しました。

イノベーションの分類は、その特徴を整理しておきましょう。また、「キャズム」も頻出論点なので、しっかり理解しておきましょう。

イノベーションの種類、普及プロセス

  1. イノベーションには、「プロダクトイノベーション」「プロセスイノベーション」のほかに、革新度合いで「インクリメンタルイノベーション」「ラディカルイノベーション」、市場特性による「リバースイノベーション」、企業間連携による「オープンイノベーション」がある。
  2. 技術革新は「S字カーブの曲線」になるが、旧技術から新技術に変わるときは「非連続性」が発生する。旧技術における技術成果はインクリメンタルイノベーションであるが、新技術に変わるときはラディカルイノベーションが発生する。
  3. イノベーションは、「イノベーター」「アーリー・アダプター」「アーリー・マジョリティ」「レイト・マジョリティ」「ラガード」の順番に普及する。アーリー・アダプターとアーリー・マジョリティの間には「キャズム」があり、これを乗り換えることが大きな課題となる。

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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