企業経営理論【25】モチベーション理論(後半)

1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「モチベーション理論(後半)」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

【組織論】

・経営組織の形態と構造
経営組織の運営
・人的資源管理
・労働関連法規

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • 強化理論
  • ブルームの期待理論
  • ローラーの期待理論
  • ロックの目標設定理論
  • アダムスの公平理論
  • 職務特性モデル
  • エドワード・デシの認知的評価理論
目次

モチベーション理論の体系図(再掲)

モチベーション理論とは「働く人のやる気・モラールをどのように高めていくのか方法論」をいいます。

モチベーション理論は、(1)内容説(どういった欲求構造があり、その欲求をどうやって満たすのか)、(2)過程説(どのようなプロセスで動機づけられるのか)、(3)内発的動機づけ理論(人間の内面に動機づけ要因が存在する)に分かれます。

前回は「内容説」について勉強しましたので、今回は「過程説」「内発的動機づけ理論」について解説していきます。

モチベーション理論(過程説)

モチベーション理論の過程説には、大きく4つの理論があります。それぞれ見ていきましょう。

強化理論

人の行動はその行動に結び付いている報酬(外発的要因)によって強化されるという理論をいいます。

連続的に報酬が得られる「連続強化」よりも、一時的に報酬が与えられる「部分強化」のほうが有効と言われています。

ブルームの「期待理論」

ブルームは、人間の動機づけの強さは、以下の式で決まると提唱しました。

動機づけの強さ = 期待(報酬の実現可能性× 誘意性(報酬の魅力度)

ブルームの期待理論のポイントは「期待」と「誘意性」の【積で決まる】と主張した点です。

どれだけ報酬の魅力(誘意性)が高くても、期待が「0」の場合は、動機づけの強さは「0」になります。

1次試験では「総和」と聞いてくることがありますので、気を付けましょう。

ローラーの「期待理論」

ローラーは、報酬とモチベーションはループしており、2段階の期待が大きいほどモチベーションが高まると主張しました。

具体的には、(1)業務遂行の努力が業績に結び付く「期待」→(2)業績が報酬に結び付く「期待」→(3)報酬の大きさに満足→さらに努力する…といった流れを理解しておきましょう。

ロックの「目標設定理論」

ロックは、モチベーションの違いは目標設定の違いによって生じると提唱しました。

具体的には、本人が納得している目標については、(1)難易度が低い目標よりも難易度が高い目標、(2)曖昧な目標よりも明確な目標、を設定するほうが結果としての業績は高いと主張しました。

また、本人が目標を受容している、目標の達成度合いについてフィードバックが得られると、より高い効果が得られる点も覚えておきましょう。

アダムスの「公平理論」

人間は、仕事への取り組み(インプット)と報酬(アウトプット)の比(=アウトプット/インプット)」を他人と比較し、不公平を感じる場合は、公平性を感じるような行動をとるように動機づけられるという理論です。

不公平に感じるときの行動

  • 他人よりも「比(=アウトプット/インプット)」が高い
    • 過多報酬と感じるため、比を落とす行動が動機づけられる
    • (アウトプット↓)成果物を落とす
    • (インプット↑)努力を増やす
  • 他人よりも「比(=アウトプット/インプット)」が低い
    • 過少報酬と感じるため、比を上げる行動が動機づけられる
    • (アウトプット↑)賃上げ交渉
    • (インプット↓)サボタージュ

モチベーション理論(内発的動機づけ理論)

モチベーションには、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」があります。

内発的動機づけ、外発的動機づけ

  • 内発的動機づけ
    • 仕事そのものの楽しさ、有能感や満足感、自己決定の感覚など、本人の内部要因から発生している動機づけ
  • 外発的動機づけ
    • お金など他人からもらう報酬によって動機づけられること

なお、R.Wホワイトは、有能感に関する動機付けとして「コンピテンス概念」を提唱しています。

具体的には、自らの潜在能力(有能感)と、それが環境に働き掛けることで自らの有能性を追求しようとする動機づけのことを言います。

内発的動機づけ理論では「職務特性モデル」と「認知的評価理論」を理解しておきましょう。

職務特性モデル

職務特性モデルとは、仕事内容、つまり職務特性が動機づけに影響を与えるという理論です。

具体的には、5つの基本特性から構成される「中心的職務次元」が3つの「臨界的心理状態」を生み出し、その結果が仕事の成果や、従業員のモチベーションに影響するというものです。

1次試験では、中心的職務次元(5つの基本特性)の内容が出題されることが多いです。

「中心的職務次元(5つの基本特性)」

  • 技能多様性
    • その仕事を行うにあたって、どの程度の多様な技能を必要とするか
  • タスク完結性(仕事一貫性)
    • 仕事の最初から最後まで、どの程度の一貫性を持って関与できるか
  • タスク重要性(仕事有意味性)
    • その仕事が、他人の生活や仕事に重大な影響をもたらすか
  • 自律性
    • 仕事のやり方の自由度、どの程度の裁量が与えられているか
  • フィードバック
    • 仕事の進捗や成果が、明確な反応としてもたらされるか

フィードバックは、一般的に言われる「他者(上司)からのフィードバックではない」点に注意しましょう。

エドワード・デシの「認知的評価理論」

内発的に動機づけられた行為(内発的動機づけ)に対して、報酬を与えるなど外発的動機づけを行うことによって、内発的動機づけが低下するという理論です。

ボランティア活動を自発的に行っている人に、報酬を与えることで、お金目当てと思われてやる気が低下するなどがあります。

【過去問】令和5年度 第17問(モチベーション理論)

問題

Q.E. A. ロックと G. P. レイサムらが提唱した目標設定理論に則した管理者の判断と行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
自分には目標を達成できる能力があるという信念を持つ人ほど、達成が困難な状況になると目標を断念する傾向があるため、自分の能力を過信しないように部下に伝えた。

【イ】
達成に多くの努力を要する目標は、達成できる見込みが立てづらく部下からの反発や抵抗が予想されるため、容易に達成できる業績目標を設定した。

【ウ】
達成の難易度が高い目標を設定するにあたっては、部下にその目標を受容させることが重要であるため、その目標が公正で妥当であることを強調して部下に伝えた。

【エ】
一人ひとりの目標の内容が職場で公表されると、目標に対するコミットメントが阻害されるため、各自の目標が互いに知られることのないように配慮した。

【オ】
明確な数値目標を設定すると、目標達成に対する心理的プレッシャーが高まり、部下の達成意欲が低下するため、自由に解釈できる定性的な目標を設定した。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。目標を達成できる能力があるという信念を持たない人ほど、達成が困難な状況になると目標を断念する傾向があるため、不適切です。

イ:不適切。前半は正しいですが、後半は「目標を受容できるように丁寧に説明する」ことが大事であるため、不適切です。

ウ:適切。選択肢の通りです。目標設定理論では、本人が目標を受容しているほうがモチベーションは高まるとされています。

エ:不適切。1人1人の目標の内容を職場で公表するほうが、目標への各自のコミットメントが高まるため、不適切です。

オ:不適切。曖昧な目標よりも明確な目標を設定するほうが結果としての業績は高いため、不適切です。

【過去問】令和4年度 第16問(モチベーション理論)

問題

Q.動機づけ理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
期待理論では、職務成果と報酬とのつながりが明確な場合に報酬の魅力度が高まりやすいことを根拠として、人事評価制度の透明性が仕事に対する従業員のモチベーションを高めると考える。

【イ】
公平理論では、従業員間で報酬に関する不公平感が生まれないように公正に処遇することで、仕事の量と質を現状よりも高めるように従業員を動機づけられると考える。

【ウ】
動機づけ・衛生理論(二要因理論)では、職場の物理的な作業条件を改善することは、仕事に対する従業員の不満を解消するための方法として有効ではないと考える。

【エ】
D.C.マクレランドの欲求理論では、達成欲求の高い従業員は、成功確率が低く挑戦的な目標よりも、成功確率が中程度の目標の方により強く動機づけられると考える。

【オ】
D.マグレガーが「X理論」と命名した一連の考え方では、人間は生来的に仕事が嫌いで責任回避の欲求を持つため、やりがいが強く感じられる仕事を与えて責任感を育てる必要があると考える。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。期待理論では「期待(報酬の実現可能性)× 誘意性(報酬の魅力度)」でモチベーションが決まりますが、期待が明確な場合に誘意性が高まるという関係性はないため、不適切です。

イ:不適切。公平理論は、仕事への取り組み(インプット)と報酬(アウトプット)の比を他人と比較し、不公平を感じる場合は、公平性を感じるような行動をとるように動機づけられる理論であり、仕事の量と質と関係がないため、不適切です。

ウ:不適切。職場の物理的な作業条件の改善は「衛生要因」であり、従業員の不満を解消するために有効であるため、不適切です。

エ:適切。選択肢の通りです。

オ:不適切。期待理論は【期待】と【誘意性】の「総和」ではなく、「積」であるため、不適切です。

【過去問】令和2年度 第19問(モチベーション理論)

問題

Q.期待理論における、組織メンバーのモチベーションの水準を規定する要因に関する記述として、最も不適切なものはどれか

【ア】
成果が自身の報酬につながるかについての認知

【イ】
他者の報酬と比較した自身の報酬に対する認知

【ウ】
努力することで成果をあげられるかについての期待

【エ】
報酬がもたらしうる満足の程度

解答・解説

正解:イ

ローラーの期待理論では、(1)業務遂行の努力が業績に結び付く期待、(2)業績が報酬に結び付く期待、(3)報酬の大きさに満足のループで動機付けが強まっていきます。ただし、期待理論は他者との比較を考慮していないため、イが不適切です。

【過去問】令和元年度 第16問(モチベーション理論)

問題

Q.E.ロックやG.レイサムらにより体系化された目標設定理論において指摘されている、組織メンバーの努力や成果を引き出す目標の特徴として、最も適切なものはどれか。

【ア】
目標と報酬(昇給や昇進など)の間の関係が明示されていること。

【イ】
目標の達成困難度が顕著に高いこと。

【ウ】
目標の達成度合いについてのフィードバックが得られること。

【エ】
目標の内容が組織運営上合理的であること。

【オ】
目標の内容が抽象的であること。

解答・解説

正解:ウ

目標理論は、本人が納得している目標については、(1)難易度が低い目標よりも難易度が高い目標、(2)曖昧な目標よりも明確な目標を設定するほうが結果としての業績は高いと主張しました。また、本人が目標を受容している、目標の達成度合いについてフィードバックが得られると、より高い効果が得られる点が特徴です。

上記よりウが正解になります。

【過去問】平成30年度 第15問(モチベーション理論)

問題

Q.働き方や価値観の多様化とともに、外発的動機づけに加え、内発的な動機づけがいっそう重要になっている。内発的な動機づけに関わる代表的な論者による説明として、最も不適切なものはどれか

【ア】
A.マズローの欲求段階説における自己実現欲求は、外発的に動機づけられるものではなく、自分自身の理想を追い求め続けることを通じた内発的な動機づけとも考えられる。

【イ】
E.メイヨーとF.レスリスバーガーのホーソン実験では、従業員が自分たちの作業条件を決定することによって内発的に動機づけられていたことを発見し、これをホーソン効果と呼んだ。

【ウ】
M.チクセントミハイは、特定の作業に没頭する中で、自身や環境を完全に支配できているという感覚が生まれることをフロー経験と呼び、そうした経験は他者からのフィードバックも必要とせず、給与などの報酬とも無関係であるとした。

【エ】
R.W.ホワイトが提唱するコンピテンス(有能性)概念では、環境と相互作用する有機体の能力自体が、「うまくいった」という内発的な動機づけの源泉となる。

【オ】
内発的動機づけを概念として広く知らしめたE.デシは、報酬のためにやらされているのではなく、自分の好きにやっているという自己決定が重要であるとした。

解答・解説

正解:イ

ア:適切。マズローの欲求段階説は、自身の理想を追い求めることを通じた内発的動機付けともいえるため、適切です。

イ:不適切。ホーソン効果とは、自分達が観察されていると意識するときに、従業員が意識的・無意識的に団結し協力する性向であるため、不適切です。

ウ:適切。試験会場では判断できないので、他の選択肢をもとに判断しましょう。

エ:適切。コンピテンス概念とは、自らの潜在能力(有能感)と、それが環境に働き掛けることで自らの有能性を追求しようとする動機づけのことであるため、適切です。

オ:適切。選択肢の通りです。

【過去問】令和5年度 第16問(職務特性モデル)

問題

Q.職務に対する従業員のモチベーションは、組織から与えられる報酬だけではなく、担当する職務の特性それ自体からも影響を受ける。
 J. R. ハックマンと G. R. オルダムによって提唱された職務特性モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
技能多様性、タスク完結性、タスク重要性の度合いが高いほど、従業員はその仕事に価値や意義を見出すようになる。

【イ】
職務特性モデルでは、従業員の心理状態が中核的な職務特性を介して従業員の仕事の成果に影響を及ぼすと考える。

【ウ】
成長欲求の程度が低い従業員は、その程度が高い従業員と比べて、自律性の高い仕事を与えられた場合に、仕事の結果への責任感をより強く感じる傾向がある。

【エ】
タスク完結性とは、仕事のスケジュールや手順を決めるにあたって、担当者が自己完結的にそれらを自由に決められる程度を指す。

【オ】
幅広い工程を一貫して担当することが求められるタスクは、細分化された 1 つの工程を担当するタスクよりもタスク重要性が高い。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。職務特性モデルでは「中心的職務次元」が「臨界的心理状態」を生み出し、その結果が仕事の成果や従業員のモチベーションに影響するため、不適切です。

ウ:不適切。成長欲求の程度が「低い従業員」と「高い従業員」で逆であるため、不適切です。

エ:不適切。「タスク完結性(仕事一貫性)」とは、仕事の最初から最後まで一貫性を持って関与できるかを表します。選択肢の内容は「自律性」であるため、不適切です。

オ:不適切。「タスク重要性(仕事有意味性)」とは、その仕事が他人の生活や仕事に重大な影響をもたらすかを表します、選択肢の内容は「技能多様性」であるため、不適切です。

【過去問】令和2年度 第20問(職務特性モデル)

問題

Q.職務特性の代表的なモデルであるJ.R.ハックマンとG.R.オルダムのモデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
上司からのフィードバックの程度が低く、職務の自律性が高い場合、内発的動機づけが高まる。

【イ】
職務が細分化され、他の職務への依存度が高い場合、その職務の有意義感は高まる。

【ウ】
職務に対する有意義感の実感、責任の実感、結果についての理解、の 3 つがそろうと、内発的動機づけが高まる。

【エ】
成長欲求が高い従業員ほど、職務特性に関わりなく、内発的動機づけが高くなる。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。「フィードバック」とは、仕事の進捗や成果が、明確な反応としてもたらされるかを表すもので、上司からのフィードバックではないため、不適切です。

イ:不適切。職務が細分化され、他の職務への依存度が高いと、有意義感は高まらないため、不適切です。

ウ:適切。選択肢の通りです。

エ:不適切。職務特性モデルは、5つの基本特性が揃って内発的動機づけが高まるため、不適切です。

今日のおさらい

今回は「モチベーション理論(後半)」を勉強しました。

モチベーション理論は頻出論点なので、理論と施策は必ず覚えておきましょう。最近は、職務特性モデルの5つの基本特性が出題される機会が増えています。

モチベーション理論(後半)

  1. モチベーション理論の過程説は、どのようなプロセスで動機づけられるのかに関する理論である。
  2. ブルームは動機づけの強さは「期待×誘意性」で決まる期待理論、ローラーは「2段階の期待」で決まる期待理論、ロックは「モチベーションの違いは目標設定の違いで生じる」という目標設定理論、アダムスは自分と他人の「アウトプット/インプットの比」を比較し、公平性を感じるような行動をとる公平理論を提唱した。
  3. 職務特性モデルとは、職務特性が動機づけに影響を与えるという考え方で、基本的特性として「技能多様性」「仕事一貫性(タスク完結性)」「仕事意味性(タスク重要性)」「自律性」「フィードバック」の5つがある。

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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