1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「経営理念・経営計画・経営管理」 です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 経営理念、経営ビジョン、経営目標
- CI(コーポレート・アイデンティティ)
- マネジメント・サイクル(PDCAサイクル)
- 経営計画
- ローリングプラン、コンティンジェンシープラン
- BCP(事業継続計画)
- クライシスマネジメント
- 分析麻痺症候群
- プロセス型(学習型)アプローチ
- バランススコアカード
試験対策
「コンティンジェンシープラン」「BCP」「クライシスマネジメント」「プロセス型アプローチ」はチェックしておきましょう。
経営のピラミッド構造
前回の【企業活動を理解する】では、企業はゴーイング・コンサーンとして、事業を継続的に運営していく必要があると説明しました。
今回は、経営活動を体系的に整理した「経営のピラミッド構造」を理解しましょう。青の部分がピラミッド構造、白の部分は関連キーワードになります。
このピラミッドの意味合いは、経営活動とは「企業の存在意義、あるべき姿を定義してから、それを達成するために、企業の経営資源を配分し、計画・実行・評価を繰り返していくこと」ということです。
経営理念・経営ビジョン・経営戦略
経営理念とは「企業の存在意義を示した信条や信念」をいいます。創業者の想い・精神が詰まった会社の存在意義です。
経営理念を定めるメリットは以下になります。
経営理念を定めるメリット
- 従業員の判断基準を明確化できる
- 従業員のモチベーション向上につながる
- 社内外に対する振る舞いが統一できる
また、経営理念の留意点として「経営理念は経営者の想いであるため、社内に浸透させないといけない」ということも覚えておきましょう。
経営理念を浸透させる手段の1つがCI(コーポレート・アイデンティティ)です。
CIとは「社内外に経営理念を正しく理解してもらう活動」をいいます。
CIには、以下の3つの内容があります。
CIの3つの内容
- MI(Mind Identity)
- 思考様式の統一化
- BI(Behavior Identity)
- 行動様式の統一化
- VI(Visual Identity)
- 視覚的な展開の統一化
社員にクレドを配布したり、経営者が全社MTGなどで会社の意義を繰り返し説明するのも意図的に浸透させる意味合いがあります。
経営理念が定まった後は、経営ビジョンの策定になります。
経営ビジョンとは「企業の将来のあるべき姿や目標」をいいます。
「〇〇市場において、3年後に市場シェアを〇%にする」など数値目標を設定します。
なお、経営ビジョンに近い用語に「経営目標」があります。
経営目標とは「企業が長期的に達成しようとする姿を、数値によって具体化したもの」をいいます。
例えば、「売上高50億円の中堅メーカーになる」などです。
経営ビジョン(経営目標)が定まった後は、ビジョン達成のための行程を「経営戦略」として立案します。
経営戦略とは「経営ビジョンを達成するための資源配分の選択」のことです。
マネジメントサイクル(PDCAサイクル)
経営戦略を立案した後は、経営ビジョンの実現に向けて「計画(Plan)-実行(Do)-評価(Check)-改善(Action)」を繰り返して、マネジメントしていきます。
上記の流れをマネジメントサイクル(PDCAサイクル)といいます。
別名、デミングサイクルと言われることもあります。
経営計画・経営管理
ここからは、マネジメントサイクルの要素である「経営計画・経営管理」を勉強していきましょう。
経営計画とは「目標を達成するための方策と具体的行動予定を決定すること」をいいます。
「誰が、いつまでに、何を、どのように行うのか」の視点で整理していきます。
経営計画の種類
経営計画は目的・切り口によって、いくつかの種類があります。
経営計画の種類(期間)
- 長期経営計画
- 5~10年の計画
- 経営ビジョンを実現するために、長期でやるべきことを明確化
- 中期経営計画
- 3~5年の計画
- 長期経営計画を実現するために、売上等の具体的な目標数値を設定
- 短期経営計画
- 1年の計画
- 業務レベルでの実行計画。年度予算として作成される
経営計画の種類(範囲)
- 総合計画
- 企業全体の計画。マスタープランとも呼ばれる
- 部門計画
- 特定の部門や機能に限定した計画
経営計画の見直し手法
経営計画は状況に合わせて修正していく必要があります。その代表的な方法が以下の2つです。
経営計画の見直し手法
- ローリングプラン
- 定期的な経営計画の見直し
- コンティンジェンシープラン
- あらかじめ複数の計画(良い環境、悪い環境時の計画など)を立てておき、それが生じたときに、その計画に乗り換えること
- 不測事象対応計画、シャドープランとも呼ばれる
- 適応行動の柔軟性・迅速性がメリットであるが、計画策定のコストが増大するデメリットもある
また、1次試験では「分析麻痺症候群」も論点になりやすいです。
これは、本社スタッフだけで計画を立案し、その計画が現場と乖離した場合、本社スタッフと現場との相互不信が生まれ、計画が実行に移されない現象をいいます。あるいは、定量化(数値化)した分析が好まれるため、リスクの高い実験的な計画は回避されやすい(保守的になりやすい)現象をいうこともあります。
不確実性が高い今日では、「事業活動で生じる予期せぬ事象を学習の機会ととらえ、常に戦略を見直して修正していく」「事後的に戦略を創発していく」というプロセス型(学習型)アプローチが重要になっています。
加えて、最近では「BCP(事業継続計画)」の重要性が上昇しています。
BCP(事業継続計画)とは「自然災害などの緊急事態に遭遇したときに、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能とするための計画」です。
事業停止の影響度や、業務の中断の許容期限を把握し、復旧の優先順位を決めておくことが大事です。計画として「平時から準備しておきましょう」ということです。
また、BCPに関連して、クライシスマネジメントも覚えておきましょう。
クライシスマネジメントとは「事前に想定することが困難な事業継続や組織の存続を脅かすような危機的状況に直面した際に、組織として被害を最小限に抑えるために行う活動や対処法」のことをいいます。
クライシスマネジメントは「事前に防止策を検討するものではない」点を覚えておきましょう。
バランススコアカード(BSC)
最後に、計画と評価に関連して「バランススコアカード(BSC)」を理解しておきましょう。
バランススコアカードとは「財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の視点から業績を評価する技法」のことをいいます。
財務数値以外の定性的な視点も含めてバランスよく評価しようというものです。
具体的な指標として、以下があります。
バランススコアカードの視点・評価指標
- 財務の視点
- 売上、利益、ROEなど
- 顧客の視点
- 顧客満足度、顧客定着率、市場シェア、新規顧客獲得数など
- 業務プロセスの視点
- 在庫回転率、リードタイム、改善施策提案数など
- 学習と成長の視点
- 資格保有率、従業員満足度、技術開発数など
【過去問】平成25年度 第1問(経営計画)
問題
Q.経営計画の策定と実行について留意すべき点に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
経営計画策定時に用いられる業績に関する定量的なデータを収集して分析することによって、新機軸の戦略を構築することができる。
【イ】
経営計画になかった機会や脅威から生まれてくる新規な戦略要素を取り入れていくには、計画遂行プロセスで学習が起こることが重要になる。
【ウ】
経営計画に盛り込まれた戦略ビジョンは、予算計画や下位レベルのアクション・プランと連動させるとコントロール指針として機能するようになり、戦略行動の柔軟性を失わせる。
【エ】
経営計画の策定に際して、将来の様々な場合を想定した複数のシナリオを描いて分析することによって、起こりそうな未来を確定することができる。
【オ】
経営計画の進行を本社の計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見には無効であるが、部門間の齟齬を把握するには有効である。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。業績に関するデータは過去データであり、新機軸の戦略の構築は難しいため、不適切です。
イ:適切。環境変化が激しいと全てを見通すことはできません。そのため、計画遂行プロセスでの学習が重要になります。
ウ:不適切。経営計画は上位レベルと下位レベルで連動する必要があるため、不適切です。
エ: 不適切。環境変化が激しい時代では、起こりそうな未来を確定することはできないため、不適切です。
オ:不適切:計画部門と事業部門が双方向的にコントロールすることは、事業の機会や脅威の発見にも有効であるため、不適切です。
【過去問】平成29年度 第12問(事業継続計画)
問題
Q.自然災害や大事故などの突発的な不測の事態の発生に対応することは、企業にとって戦略的な経営課題であり、停滞のない企業活動の継続は企業の社会的責任の一環をなしている。そのような事態への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
カフェテリア・プランは、多くの場合、ポイント制によって福利厚生メニューを自主的に、また公平に選択できるようにしているので、突発的な災害などの支援に活用できるメニューは盛り込めない。
【イ】
クライシス・マネジメントは、想定される危機的事象を予測し、事前にその発生抑止や防止策を検討して危機への対応を図ろうとするものである。
【ウ】
コンティンジェンシー・プランでは、不測の事態や最悪の事態を想定して、その事態が与える業務間の影響を測るべく、事業インパクト分析を重視して危機対応の計画を策定するのが一般的な方法である。
【エ】
事業継続計画(BCP)では、事業停止の影響度を評価分析して、業務の中断が許される許容期限を把握して業務の復旧優先順位を導くために事業インパクト分析の実施が行われる。
【オ】
事業継続計画(BCP)は、災害時のロジスティクスの確保を重視した企業間ネットワークの構築を目指すものとして策定されている。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。カフェテリアプランに社会貢献に関するメニューを盛り込めないことはないため、不適切です。
イ:不適切。クライシス・マネジメントは、不測の事態に遭遇した際に、被害を最小限に抑えるための組織の対応手段や仕組みのことです。事前に防止策を検討するものではないため、不適切です。
ウ:不適切。コンティンジェンシープランは、あらかじめ複数の計画(良い環境、悪い環境における計画など)を立てておくもので、事業インパクト分析を重視するわけではないため、不適切です。
エ: 適切。事業継続計画は、緊急事態に遭遇したときに、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能とするための計画であり、事業インパクト分析も含まれます。
オ:不適切:事業継続計画は、緊急事態に遭遇したときに、中核事業の継続あるいは早期復旧を可能とするための計画であるため、不適切です。
今回のおさらい
今回は「経営理念・経営計画・経営管理」 を勉強しました。
近年、あまり出題されていない領域です。経営計画を中心に復習しておきましょう。
経営理念・経営計画・経営管理
- 経営活動は「経営理念」→「経営ビジョン」→「経営戦略」→「マネジメントサイクル(計画・実行・評価)」のピラミッドから構成される
- 経営理念は「存在意義を示した信条や信念」。従業員の判断基準やモチベーション向上に寄与するため、CIなどを通じて社内外に浸透させていくことが必要
- 経営計画は、一度決めたら不変ではなく、ローリングプラン、コンティンジェンシープランなどで状況に適合させていく。計画を実行・学習しながら戦略を創発していく「プロセス型アプローチ」が重要
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
この記事に満足頂いた方は、ぜひTwitterのフォローをお願いします。