1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「経営戦略の全体像・学派」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 経営戦略の定義・構成要素
- 経営戦略の策定プロセス
- 経営戦略の階層(企業戦略、事業戦略、機能別戦略)
- ポジショニング学派
- ポーター(ファイブフォース分析、3つの基本戦略、バリューチェーン)
- ケイパビリティ学派
- リソースベースドビュー(RBV)
- バーニー
経営戦略の定義・構成要素
経営戦略とは「経営ビジョンを達成するための資源配分の選択」ことをいいます。
具体的には、経営ビジョン(企業のありたい姿や目標)を実現するために、経営資源の配分を決めていくことです。
また、企業は経営環境の変化に対応し、競合との競争に勝っていく必要があります。
これに対応するように、経営戦略は(1)経営環境の変化に対応しながら、(2)ビジョンを達成するための方向性を模索し、(3)競争上の優位性を確保するために、(4)経営資源を配分していく、の4ステップで考えると、わかりやすくなります。
経営戦略の構成要素
経営戦略には4つの構成要素があります。
経営戦略の構成要素
- ドメイン(=自社が戦う場所を決める)
- 経営資源の展開(=経営資源を蓄積し、配分する)
- 競争優位性(=競合に対する独自性を築く)
- シナジー(=経営資源の有効活用で相乗効果を狙う)
なお、競争優位とは「企業が業界内の競合企業と比べて、平均以上の収益を持続的に獲得できる能力」のことをいいます。
経営戦略の策定プロセス、階層性
経営戦略はどのように策定されるのでしょうか。これは2次試験で重要なフレームになります。
企業は「経営理念」「経営ビジョン」を策定した後、外部環境と内部環境を分析して「ドメイン」を定義します。その後、「企業戦略」→「事業戦略」→「機能別戦略」と戦略をブレークダウンしていきます。
大事なことは、前回の【マネジメント・意思決定の階層構造】で勉強した、マネジメント階層ごとに担うべき意思決定が異なるように、経営戦略にも階層があるということです。
経営戦略の階層
経営戦略には3つの階層があります。
経営戦略の階層
- 企業戦略(成長戦略)
- 企業の事業範囲を決定し、複数事業のバランスや資源配分などを決定する
- トップマネジメントが担う
- 事業戦略(競争戦略)
- 特定の事業分野で、どのように競争優位性を確保するかを決定する
- ミドルマネジメントが担う
- 機能別戦略
- 開発、生産、マーケティング、営業、人事などの機能ごとの戦略を決定する
- ミドルマネジメントが担う
また、経営戦略の階層と構成要素の関係についても理解しておきましょう。
企業戦略は「ドメインの定義」、事業戦略は「競争優位性」、機能別戦略は「シナジー」との関係が強くなります。「経営資源の展開」は全ての階層で必要になります。
経営戦略のアプローチ(ポジショニング学派、ケイパビリティ学派)
「競争優位の構築」に対するアプローチで、経営戦略は「ポジショニング学派」と「ケイパビリティ学派」の2つのアプローチ(学派)に分類できます。
ポジショニング学派は、企業の外部環境に注目し、「儲かる業界で、儲かる位置を獲得するポジショニングが重要」というアプローチです。
1980年に『競争の戦略』を出版したポーターが代表的な学者です。競争戦略の分析ツール・概念として、ポーターの競争戦略(ファイブフォース分析、3つの基本戦略、バリューチェーン)、コトラーの競争地位別戦略などがあります。
一方、ケイパビリティ学派は、ポジショニング学派の後に生まれた学派で、同じ業界に所属していながら、企業間で収益性に差があるのはなぜか?それは、企業が持つ経営資源の使い方に差があるからではないか?という考え方がベースにあります。
このように、「外部環境よりも内部資源を重視し、企業が持つ異質で、他社が真似できない(複製に多額の費用・時間がかかる)リソースに注目する」考え方をリソースベースドビュー(RBV)といいます。
代表的な学者はバーニーです。VRIO分析、コアコンピタンス、ケイパビリティ、タイムベース競争などの分析ツール・概念が該当します。
この2つのアプローチ(学派)は大論争を巻き起こしましたが、後に、ミンツバーグが「状況に合わせて組み合わせればいいのでは?」という統合概念(コンフィギュレーション派)を主張しています。
【過去問】平成26年度 第5問(シナジー)
問題
Q.シナジー効果に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
動的なシナジーよりも静的なシナジーをつくり出せるような事業の組み合わせの方が望ましい。
【イ】
範囲の経済の効果とは別個に発生し、複数事業の組み合わせによる費用の低下を生じさせる。
【ウ】
複数事業の組み合わせによる情報的資源の同時多重利用によって発生する効果を指す。
【エ】
複数の製品分野での事業が互いに足りない部分を補い合うことで、企業全体として売上の季節変動などを平準化できる。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。動的シナジーとは、組織の学習効果によって、時間とともにシナジー効果が大きくなるシナジーをいいます。一方、静的シナジーとは、時間の概念がないシナジーをいいます。動的シナジーのほうが時間とともに効果を発揮できるため、こちらを目指すべきであるため、不適切です。
イ:不適切。範囲の経済とシナジー効果は似た概念であり、別個で発生するわけではないため、不適切です。
ウ:適切。経営資源の有効活用で相乗効果を狙うのがシナジー効果です。そのなかでも、情報的資源の同時多重利用により、効果が大きくなるため、適切です。
エ: 不適切。相補効果(コンプリメント効果)の説明であるため、不適切です。
今日のおさらい
今回は「経営戦略の全体像・学派」を勉強しました。
経営戦略の全体像を理解しておきましょう。次回以降、詳細に勉強していきます。
経営戦略の全体像・学派
- 経営戦略とは「経営ビジョンを達成するための資源配分の選択」のこと。企業戦略は「ドメインの定義」、事業戦略は「競争優位性」、機能別戦略は「シナジー」との関係が強い
- ポジショニング学派は、企業の外部環境に注目し、儲かる業界で、儲かる位置を獲得するポジショニングが重要というアプローチ。ポーターの競争戦略(ファイブフォース分析、3つの基本戦略、バリューチェーン)が有名
- ケイパビリティ学派は、外部環境よりも内部資源を重視し、企業が持つ異質で、他社が真似できないリソースに注目する「リソースベースドビュー(RBV)」を重視するアプローチ。バーニーのVRIO分析、コアコンピタンスが有名
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