中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「ポーターの競争戦略」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- ファイブフォース分析(業者間の敵対関係、新規参入の脅威、代替製品・サービスの脅威、売り手の交渉力、買い手の交渉力)
- 参入障壁、戦略グループ、移動障壁
- 3つの基本戦略(コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)
- バリューチェーン(価値連鎖)
- オペレーション効率(業務効果、業務改善)
- ハーフィンダール・ハーシュマン指数
試験対策
「ファイブフォース分析」「バリューチェーン」は頻出論点です。過去問を通じてを理解を深めておきましょう。
経営戦略策定プロセスとの関係
最初に、今回の学習内容が【経営戦略策定プロセス】のどこに該当するか、確認しましょう。
今回の内容は、事業戦略で有名なポーターの主要理論になります。機能別戦略の「オペレーション効率」も取り上げます。
経営戦略のアプローチ(学派)のおさらい
最初に、今日の勉強範囲を理解するために、第4回目【経営戦略のアプローチ(学派)】のポイントを振り返っておきましょう。
経営戦略では「競争優位の構築」にあたり、ポジショニング学派とケイパビリティ学派の2つのアプローチがあります。
ポジショニング学派は、外部環境に注目し、儲かる業界で、儲かるポジションを獲得する「ポジショニング」が重要であると考えるアプローチです。
ポジショニング学派の代表的な学者はポーターです。ポーターは競争戦略論を「自社が競争他社との違いを打ち出すことである」とし、独自性を目指すことが重要であるとしています。
ポーターは産業組織論出身の経済学者で、「SCPパラダイム」を使って競争戦略を説明しています。
SCPパラダイムとは、①市場構造(Structure:参入障壁や市場の競争条件など)が、②市場行動(Conduct:マーケティングや研究開発、M&Aなど)を決め、それが③市場成果(Performance:市場の収益性など)を決めるという考え方です。収益を上げるには、儲かる業界にいることが大事ということになります。
上記を踏まえて、ポーターの競争戦略論は以下のステップで理解するとスムーズです。
ポーターの競争戦略論のステップ
- 儲かる業界を探す
- •ファイブフォース分析(業界構造分析)
- 競争を回避する
- 参入障壁、移動障壁
- 儲かる位置取りをする
- 3つの基本戦略(コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略)
- 組織能力を磨く
- バリューチェーン(価値連鎖)、オペレーション効率(業務効果、業務改善)
ファイブフォース分析(業界構造分析)
ファイブフォース分析とは「5つの競争要因から業界の収益性(魅力度)を測定する分析フレーム」です。
ファイブフォース分析の結論は「脅威が多いほど、業界の収益性が低くなる」になります。そのため、「参入障壁」を構築することが重要になります。
では、5つの競争要因をそれぞれ見ていきましょう。
1.業者間の敵対関係
現在の市場における競争です。業界内の競争が激しいほど、収益性は低くなります。競争が激しくなる要因には以下があります。
「業者間の敵対関係」が激しくなる要因
- 競合企業が多い、あるいは企業規模が同程度である
- 市場の成長率が低い
- 製品の差別化がしにくい(スイッチングコストが低い)
- 固定費が高い(超過供給状態に陥り、売るために価格を下げる)
- 撤退障壁が高い
また、企業の競争状態を測る指標として、ハーフィンダール・ハーシュマン指数を覚えておきましょう。
ハーフィンダール・ハーシュマン指数は、各企業の市場占有率(シェア)の2乗を合計して算出します。
1社が独占している場合は「10,000(=100×100)」になリます。一方、ゼロに近いほど完全競争状態(企業が多数存在し、シェアに違いがなく、差別化しにくい状態)に近づきます。
つまり、指数が高い業界の場合、業界企業が少なく、企業規模の格差がバラツキが大きくなることを覚えておきましょう。
2.代替製品・サービスの脅威
代替品が登場することで、現在の利用者を奪われる可能性があります。以下の状況だと、脅威が高まり、業界の収益性は低くなります。
「代替製品・サービスの脅威」が高まる要因
- 代替品の方がコストパフォーマンスが高い
- 高収益をあげている業界が代替品を生産する(資金力があるから)
3.新規参入の脅威
新規参入しやすい業界ほど、業界の収益性は低くなります。業界として参入障壁を高める(=競争の回避戦略)ことが大事になります。以下の状況だと参入障壁が低くなります。
「新規参入の脅威」が高まる要因
- 市場の成長率が高い
- 規模の経済性が低い
- 製品の差別化の程度が低い
- 新規参入の必要投資額(固定費、在庫)が低い
- スイッチングコストが低い(乗り換えしやすい)
- 流通チャネルを確保しやすい
- 政府や法律による参入規制がない
参入障壁を構築する場合は、上記の逆の方法を実施します。参入障壁を作り競争を回避する戦略のことを「競争回避の戦略」といいます。
参入障壁の種類(競争回避の戦略)
- 規模の経済性
- 経験曲線効果
- 製品の差別化
- 新規参入における巨額の投資
- 流通チャネルの確保
- 政府の許認可(特許など)
4.売り手の交渉力
売り手とは供給業者のことで、値上げをされたり、供給量を減らされると収益性が低くなります。以下の状況だと、脅威が高まり、業界の収益性は低くなります。
「売り手の交渉力」が高まる要因
- 売り手の数が少ない
- 売り手にとって買い手が重要な顧客でない(値下げする必要がない)
- 買い手にとって売り手の供給品の品質が重要である
- 買い手のスイッチングコストが高い
- 売り手が川下統合に乗り出す姿勢を示す(競合になる)
売り手への依存度が高いほど、交渉力が低くなるため、複数の取引先を持つことが回避策になります。
5.買い手の交渉力
買い手とはメーカーの場合、小売業になります。値下げや品質向上を要求されると収益性が低くなります。以下の状況だと、脅威が高まり、業界の収益性は低くなります。
「買い手の交渉力」が高まる要因
- 買い手の数が少ない
- 売り手が特定の買い手に依存している
- 買い手のスイッチングコストが低い
- 買い手の購入する製品が、買い手の売上構成比の多くを占める
- 売り手の製品が、買い手の製品の品質に対して影響が少ない
- 買い手が川上統合に乗り出す姿勢を示す(競合になる)
買い手への依存度が高いほど、交渉力が低くなるため、代替的な資源開発に取り組むことが回避策になります。
戦略グループと移動障壁
ファイブフォース分析において「業者間の敵対関係」に注目すると、企業は複数の戦略グループに分類されます。
戦略グループとは「同一業界において、類似の戦略を採用している企業のグループ」を言います。
複数のグループに分かれるのは、企業の経営目標や経営資源が異なることが主要な要因です。
また、移動障壁とは「異なる戦略グループに移動する際の障壁」のことで、企業文化やノウハウ、経営資源などを蓄積するのに時間がかかるため、グループ間の移動が困難になります。
なお、強力な移動障壁を持つ戦略グループは収益性が良好である可能性が高くなります。また、同じ業界に複数の戦略グループがあると、競争が激化する傾向があります。
ポーターの3つの基本戦略(競争優位の源泉)
ポーターは競争優位を構築するために「競争優位のタイプ」と「戦略ターゲットの幅」を組み合わせて、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つを提唱しています。
コストリーダーシップ戦略
コストリーダーシップ戦略とは「競争企業よりも低コストで生産することで競争優位を獲得する戦略」です。リーダー企業が採用できる戦略です。
業界全体を対象に、生産量を増やすことで、規模の経済性や経験曲線効果による低コストを実現し、他社よりも高い利益率を獲得したり、低価格販売が可能となります。「売価」ではなく「原価」がポイントです。
ただし、コストリーダーシップには、以下のリスクがあります。
コストリーダーシップ戦略のリスク
- 過去の投資や習熟が無駄になってしまう技術革新の変化が生じる
- コストに意識するばかり、市場変化への対応が遅れる
差別化戦略
差別化戦略とは「他社にはない独自性がある製品やサービスで差別化して競争優位を獲得する戦略」です。業界2~3番手が採用する戦略です。
製品(品質・デザイン・機能など)、ブランドイメージ、チャネル、サービスなどで差別化を目指しますが、高価格になる傾向があります。
なお、自社が「差別化している!」と思っていても、顧客が認識していないと差別化にならない点に注意が必要です。商材のタイプで訴求方法も変わってきます。
商材タイプ別の訴求方法
- 客観的に判断できる商材
- スペックなど「物理的な差別化」が有効
- 客観的に判断できない商材
- 安心感など「宣伝活動による差別化」が有効
また、差別化戦略には、以下のリスクがあります。
差別化戦略のリスク
- 他社とのコスト差が開きすぎると、ロイヤリティが維持できなくなる
- 差別化した製品やサービスを他社に模倣されてしまう
- 差別化の要因に対する顧客のニーズが落ち込む
集中戦略
集中戦略とは「特定の市場に絞って、経営資源を集中的に投入することで競争優位を獲得する戦略」です。
集中戦略は競争優位のタイプによって、特定市場でのコスト優位を目指す「コスト集中戦略」、差別化優位を目指す「差別化集中戦略」に分かれます。
中小企業は、差別化集中戦略が基本になります。
集中戦略には、以下のリスクがあります。
集中戦略のリスク
- 絞り込んだターゲットのニーズが陳腐化し、業界全体のニーズと同質になってしまう可能性がある
- ターゲットを絞り込みすぎると、利益の確保が困難になる
ここまで、3つの基本戦略を整理してきましたが、ポーターは「2つ以上の戦略を同時に採用することは困難である(スタック・イン・ザ・ミドル)」と言っています。
規模の拡大による低コスト化(コストリーダーシップ戦略)の実現と製品差別化(差別化戦略)の同時追求はスタック・イン・ザ・ミドルに陥る可能性があります。
現実には、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略を採用している企業もありますが、試験対策として割り切っておきましょう。
バリューチェーン(価値連鎖)
ポーターは3つの基本戦略の展開にあたり、企業のどこに競争優位が存在するかを分析する必要があり、その分析の枠組みとして「バリューチェーン(価値連鎖)」を提唱しています。
バリューチェーン(価値連鎖)とは「企業が行う購買、製造、マーケティングなどの活動の相互関係を分析する枠組み」です。
事業活動を機能ごとに分解し、どの部分(機能)で価値(低コスト化、差別化)が生み出されるのか、どの部分に強み・弱みがあるかを分析していきます。
バリューチェーンは「主活動」と「支援活動」から構成されます。
- 主活動
- 購買物流、製造、出荷物流、販売・マーケティング、サービス
- 支援活動
- 全般管理、人事・労務管理、技術開発、調達活動
付加価値を生む機能が多いと模倣困難性が高まり、独自性が高まるため競争優位を構築しやすくなります。また、バリューチェーンの全体最適化を図ると、シナジー効果が得られ、低コストが実現しやすくなります。
業界や市場により、強みや付加価値の源泉は違ってきます。例えば、自動車業界では製造、コンビニ業界では出荷物流に強みがあります。逆に、付加価値が低い機能はアウトソーシングの候補になります。
オペレーション効率(業務効果、業務改善)
最後に、機能別戦略になりますが、ポーターが提唱している「オペレーション効率」も勉強しておきましょう。
オペレーション効率とは「企業が同じか似たような活動を効率的に行うこと」をいいます。
3つの基本戦略は「ポジショニングによる競争優位の構築」、オペレーション効率は「業務効率化によるコスト最小化」と違ったレイヤーの話なので混同しないように気を付けましょう。
【過去問】令和6年度 第7問(業界構造分析)
問題
Q.M.ポーターの「業界の構造分析(5フォース分析)」における代替品に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
ある業界に代替品が存在することは、その業界の潜在的な収益性に正の影響を及ぼす。
【イ】
代替品となるものが少ないほど、代替品の脅威は大きくなる。
【ウ】
代替品のコストパフォーマンス比の向上が急速であるほど、その代替品の脅威は大きい。
【エ】
代替品を提供する業界の利益率が高いほど、代替品の脅威は小さい。
【オ】
何を代替品と見なすかは客観的に識別しやすいものである。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。代替品の存在は、業界の潜在的な収益性に不の影響を及ぼすため、不適切です。
イ:不適切。代替品となるものが少ないほど、代替品の脅威は小さくなるため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りであるため、適切です。
エ:不適切。代替品を提供する業界の利益率が高いほど、代替品の脅威は大きくなる(資金力勝負になる)ため、不適切です。
オ:不適切:何を代替品と見なすかは客観的に識別することが難しいため、不適切です。
【過去問】令和5年度 第3問(業界構造分析)
問題
Q.下表では、業界A~Eの競争状況が示されている。M. ポーターの「業界の構造分析( 5 フォース分析)」に基づき、既存企業間の対抗度の最も低い業界を下記の解答群から選べ。ただし、他の条件は全て等しいものとする。
〔解答群〕
ア:業界A
イ:業界B
ウ:業界C
エ:業界D
オ:業界E
解答・解説
正解:イ
既存企業間の対抗度の最も低い業界とは、競争が最も弱い状態を指します。
ハーフィンダール指数は、各企業の市場占有率(シェア)の2乗を合計して算出したもので、ゼロに近いほど競争が激しくなります。そのため、ハーフィンダール指数が高い選択肢アとイが残ります。
続いて、製品の差別化の程度ですが、差別化されていないほど競争が激しくなるため、「高い」ほうが競争が弱くなります。そのため、選択肢イが正解になります。
【過去問】令和2年度 第3問(業界構造分析)
問題
Q.「業界の構造分析」の枠組みに基づいて考えられる、売り手(サプライヤー)と買い手(顧客)との間での交渉力に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
新たな企業が売り手として参入できる場合には、新規参入が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
【イ】
ある売り手が供給する製品と他社の競合製品との間での互換性が高い場合には、互換性が低い場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
【ウ】
ある売り手が供給する製品を買い手が他社の競合製品に切り換える際に、買い手がその製品の使用方法を初めから学び直す必要がある場合には、その必要がない場合と比べて、買い手に対する売り手の交渉力は低下する。
【エ】
売り手が前方統合できる場合には、前方統合が不可能な場合と比べて、売り手に対する買い手の交渉力は低下する。
【オ】
売り手側のハーフィンダール指数がゼロに近づくほど、買い手に対する売り手の交渉力は高くなる。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。売り手が新規参入できるということは、売り手を変更できる可能性が高まります。そのため、売り手に対する交渉力は上昇するため、不適切です。
イ:不適切。売り手間の互換性が高いということは、売り手を変更できる可能性が高まります。そのため、売り手に対する交渉力は上昇するため、不適切です。
ウ:不適切。スイッチングコストが高まる場合、買い手に対する売り手の交渉力は上昇するため、不適切です。
エ:適切。記述の通りです。
オ:不適切:ハーフィンダール指数がゼロに近づく完全競争状態に近づくため、買い手に対する売り手の交渉力が低くなるため、不適切です。
【過去問】令和元年度 第6問(業界構造分析)
問題
Q.「業界の構造分析」の枠組みに基づいて想定される、既存企業間での対抗度に関する予測として、最も適切なものはどれか。
【ア】
業界の成長率が高いと、製品市場での競合が激化して、業界全体の潜在的な収益性は低くなる。
【イ】
顧客側で生じるスイッチングコストが高い業界では、製品市場での競合が緩和されて、業界全体の潜在的な収益性は高くなる。
【ウ】
固定費が高い業界では、製品市場での競合が緩和されて、業界全体の潜在的な収益性は高くなる。
【エ】
事業戦略の方向性という点で、多様なバックグラウンドを有する企業が事業を展開する業界では、製品市場での競合が緩和されて、業界全体の潜在的な収益性は高くなる。
【オ】
退出障壁が高いと、製品市場での競合が緩和されて、業界全体の潜在的な収益性は高くなる。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。製品市場での競合が激化して、業界全体の潜在的な収益性は低くなるのは、業界の成長率が低い場合であるため、不適切です。
イ:適切。スイッチングコストが高い場合、他社への切り替えが難しくなるため、競合が緩和されて、潜在的な収益性は高くなるため、適切です。
ウ:不適切。固定費が高い業界では、費用を回収するため、競合が激化するため、潜在的な収益性は低くなるため、不適切です。
エ:不適切。多様なバックグラウンドを有する企業が事業を展開する業界では、新規参入がしやすい状況でもあるため、競合が激化して潜在的な収益性が低くなるため、不適切です。
オ:不適切:退出障壁が高いと、その業界に残り続けることになるため、競合が激化して潜在的な収益性が低くなるため、不適切です。
【過去問】平成30年度 第5問(業界構造分析)
問題
Q.マイケル・ポーターによる業界の構造分析に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
価値連鎖(バリューチェーン)を構成する設計、製造、販売、流通、支援サービスなどの諸活動において規模の経済が働くかどうかは、その業界構造を決定する要因であり、多数乱戦(市場分散型)業界では、すべての諸活動において規模の経済性が欠如している。
【イ】
継続的に売り上げが減少している衰退業界においては、できるだけ早く投資を回収して撤退する戦略の他に、縮小した業界においてリーダーの地位を確保することも重要な戦略の1 つである。
【ウ】
成熟業界においては、新製品開発の可能性が少なく、成長が鈍化するために、多くの企業は、プロセス革新や現行製品の改良に力を入れるようになり、企業間のシェア争いは緩やかになる。
【エ】
多数乱戦(市場分散型)業界は、ニーズが多様であること、人手によるサービスが中心であることが特徴なので、集約・統合戦略は、この業界には適さない戦略である。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。多数乱戦(市場分散型)業界では、規模の経済性が欠如する可能性が高いですが、全ての諸活動が該当するとは言い切れないため、不適切です。
イ:適切。選択肢の通りです。
ウ:不適切。プロセス革新や現行製品の改良に力を入れるようになると、企業間のシェア争いは激しくなるため、不適切です。
エ:不適切。多数乱戦(市場分散型)業界において、シェアを拡大するためには、集約・統合戦略(規模の経済を志向する戦略)は有効であるため、不適切です。
【過去問】平成29年度 第7問(業界構造分析)
問題
Q.企業の競争戦略と持続的な競争優位に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【ア】
競争戦略の実行に不可欠な独自の経営資源を持ち、製品市場における規模の経済を実現できれば、代替製品の脅威は事業の収益性に影響を与えず競争優位の源泉となる。
【イ】
経路依存性のある経営資源は、模倣を遅らせることで市場における競争者の脅威から先発者を保護する。
【ウ】
顧客からの強い支持を受ける製品差別化は、競合他社との間の競争に勝ち抜く手段である以上に、他社との競争を可能な限り回避できる自社市場構築の手段となる。
【エ】
差別化した製品と標準的な製品の機能的な差が小さくなるほど、差別化した製品を選好する顧客の割合は低下するが、標準的な製品よりも高い価格を設定し、差別化した製品で高い収益性を確保しようとする場合、できるだけ多くの顧客を対象とすると戦略上の矛盾を生み出す。
【オ】
スイッチング・コストの発生する状況では、買い手側は、現在使用する製品やサービスと他の代替的な製品・サービスと価格や機能が同じであったとしても、別のものとして見なす。
解答・解説
正解:ア
ア:不適切。前半は正しい記述ですが、規模の経済が「代替製品の脅威は事業の収益性に影響を与えず」と言い切れるわけではないため、不適切です。
イ:適切。経路依存性のある経営資源は、競争者の脅威から先発者を保護するため、適切です。
ウ:適切。製品差別化は競争回避するための手段であるため、適切です。
エ:適切。わかりにくい文章ですが、標準的な製品との機能的な差が小さくなった製品で高い価格を設定すると、購入する顧客は減少します。その中で、高い収益性を確保するには、多くの顧客に購入してもらう矛盾が生じるため、不適切です。
オ:適切:スイッチング・コストが高い場合、他の代替的な製品・サービスと価格や機能が同じであったとしても、別の製品・サービスと見なすため、適切です。
【過去問】平成27年度 第4問(業界構造分析)
問題
Q.自社の仕入先および顧客に対する交渉力に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
今まで仕入先から調達していた部品の内製の割合を高めていく場合は、自社の仕入先に対する交渉力は弱くなる。
【イ】
希少価値の高い原材料を仕入れている場合は、自社の仕入先に対する交渉力は強くなる。
【ウ】
顧客が他社製品へ乗り換える際に多大なコストが発生する場合は、自社の顧客に対する交渉力は強くなる。
【エ】
仕入先の売上高に占める自社の割合が高い場合は、自社の交渉力は弱くなる。
【オ】
自社が顧客の意思決定を左右できるような場合は、仕入先に対する交渉力は弱くなる。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。調達していた部品の内製の割合を高めていくと、自社の仕入先に対する交渉力は強くなるため、不適切です。
イ:不適切。希少価値の高い原材料を仕入れている場合は、自社の仕入先に対する交渉力は弱くなるため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:不適切。仕入先の売上高に占める自社の割合が高い場合は、自社の交渉力は強くなるため、不適切です。
オ:不適切:顧客の意思決定を左右できるような場合は、仕入先に対する交渉力は強くなるため、不適切です。
【過去問】平成27年度 第4問(業界構造分析)
問題
Q.自社の仕入先および顧客に対する交渉力に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
今まで仕入先から調達していた部品の内製の割合を高めていく場合は、自社の仕入先に対する交渉力は弱くなる。
【イ】
希少価値の高い原材料を仕入れている場合は、自社の仕入先に対する交渉力は強くなる。
【ウ】
顧客が他社製品へ乗り換える際に多大なコストが発生する場合は、自社の顧客に対する交渉力は強くなる。
【エ】
仕入先の売上高に占める自社の割合が高い場合は、自社の交渉力は弱くなる。
【オ】
自社が顧客の意思決定を左右できるような場合は、仕入先に対する交渉力は弱くなる。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。調達していた部品の内製の割合を高めていくと、自社の仕入先に対する交渉力は強くなるため、不適切です。
イ:不適切。希少価値の高い原材料を仕入れている場合は、自社の仕入先に対する交渉力は弱くなるため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:不適切。仕入先の売上高に占める自社の割合が高い場合は、自社の交渉力は強くなるため、不適切です。
オ:不適切:顧客の意思決定を左右できるような場合は、仕入先に対する交渉力は強くなるため、不適切です。
【過去問】平成28年度 第6問(コストリーダーシップ戦略)
問題
Q.企業が競争優位を獲得するための競争戦略のひとつであるコスト・リーダーシップ戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
コスト・リーダーシップ戦略では、継続的に自社製品を購入する顧客を確保するために、ブランド・ロイヤルティを高めることが課題となり、企業の提供する付加価値が明確になっている。
【イ】
コスト・リーダーシップ戦略は、市場成長率が安定してきて、製品ライフサイクルの成熟期以降に採用する戦略として適しており、企業が脱成熟をしていくうえで有益な戦略となる。
【ウ】
コスト・リーダーシップ戦略は、多角化した企業において、シナジーの創出によるコスト削減を目指していく戦略であるので、事業間の関連性が高い企業の方が、優位性を得やすくなる。
【エ】
コスト・リーダーシップ戦略を行う企業が、浸透価格政策をとると、自社の経験効果によるコスト低下のスピードは、競合他社よりもはやくなる。
【オ】
コスト・リーダーシップ戦略を行っている企業は、特定モデルの専用工場を建設し、生産性の高い設備を導入しており、新しい市場ニーズへも迅速に対応できる。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。選択肢の内容は、差別化戦略のことであるため、不適切です。
イ:不適切。成熟期において、企業が脱成熟を図るには、コストリーダーシップ戦略よりも差別化戦略のほうが有益であるため、不適切です。
ウ:不適切。コストリーダーシップ戦略は、規模の経済性や経験曲線効果による低コストを志向するため、不適切です。
エ:適切。選択肢の通りです。浸透価格政策で市場シェアを確保することは、規模の経済、経験曲線効果が発揮されて、コスト低下のスピードが速くなるため、適切です。
オ:不適切:コストへの意識が高く、市場変化への対応が遅れるのがコストリーダーシップ戦略のデメリットであるため、不適切です。
【過去問】平成24年度 第5問(差別化戦略)
問題
Q.差別化戦略は競争者に対抗するための基本的戦略のひとつである。商品の属性と製品差別化に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【ア】
売り手の信用をもとに安全性を確認するような信用的な属性については、物理的な差異による製品差別化よりも広告や宣伝活動による製品差別化が有効である。
【イ】
購入前に調べてみれば分かるような探索的な属性については、広告や宣伝活動による製品差別化よりも物理的な差異による製品差別化が有効である。
【ウ】
実際の消費経験から判断できるような経験的な属性については、物理的な差異による製品差別化よりも広告や宣伝活動による製品差別化が有効である。
【エ】
製品差別化は特定の売り手の製品に関する買い手の主観的な判断をベースとしている。
解答・解説
正解:ウ
ア:適切。感情型属性(客観的に判断できない商材)の場合は、安心感など宣伝活動による差別化であるため、適切です。
イ:適切。思考型属性(客観的に判断できる商材)の場合は、スペックなど物理的な差別化が有効であるため、適切です。
ウ:不適切。実際の消費経験から判断できるような経験的な属性は、物理的な差異による差別化が有効であるため、不適切です。
エ:適切。差別化は買い手の主観的な判断がベースになるため、適切です。
【過去問】平成30年度 第6問(バリューチェーン)
問題
Q.価値連鎖(バリューチェーン)のどれだけの活動を自社の中で行うかが、その企業の垂直統合度を決めると言われている。自社の中で行う活動の数が多いほど、垂直統合度が高く、その数が少ないほど垂直統合度が低いとした場合、ある部品メーカーA社が垂直統合度を高める理由として、最も適切なものはどれか。
【ア】
A社の部品を使って完成品を製造している企業は多数存在しているが、いずれの企業もA社の部品を仕入れることができないと、それぞれの完成品を製造できない。
【イ】
A社の部品を作るために必要な原材料については、優良な販売先が多数存在しており、それらの企業から品質の良い原材料を低コストで仕入れることが容易である。
【ウ】
A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーは、その原材料をA社以外に販売することはできない。
【エ】
A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーが少数であり、環境変化により、A社はこれらの原材料の入手が困難となる。
【オ】
A社は、A社の部品を作るために必要な原材料を製造しているメーカーとの間で、将来起こりうるすべての事態を想定し、かつそれらの事態に対してA社が不利にならないようなすべての条件を網羅した契約を交わすことができる。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。完成品メーカーがA社の部品がないと完成品を製造できず、A社の交渉力が強い状況であるため、垂直統合する理由が乏しく、不適切です。
イ:不適切。優良な販売先が多数存在しており、A社が垂直統合する理由が乏しいため、不適切です。
ウ:不適切。A社以外に販売することができず、A社の交渉力が強い状況であるため、垂直統合する理由が乏しく、不適切です。
エ:適切。A社が原材料を入手できなくなる事態を回避すべく、垂直統合する理由になるため、適切です。
オ:不適切:A社が不利にならないようなすべての条件を網羅した契約を交わすことができため、垂直統合する理由に乏しく、不適切です。
【過去問】平成28年度 第8問(バリューチェーン)
問題
Q.競争優位の源泉を分析するには、バリュー・チェーン(価値連鎖)という概念が有効である。バリュー・チェーンに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
差別化の効果は、買い手が認める価値と、自社のバリュー・チェーンのなかで作り出した特異性を生み出すためのコストが同水準になった時に最大化する。
【イ】
バリュー・チェーン内で付加価値を生み出していない価値活動に関して、アウトソーシングなどによって外部企業に依存する場合、企業の競争力を弱めてしまう。
【ウ】
バリュー・チェーンの各々の価値活動とともに、それらの結び付き方は、企業の独特な経営資源やケイパビリティとして認識することができる。
【エ】
バリュー・チェーンの全体から生み出される付加価値は、個別の価値活動がそれぞれ生み出す付加価値の総和であり、各価値活動の部分最適化を図っていくことが、収益性を高める。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。買い手が認める価値とコストが一致する場合は、価値相当になります。価値>コストの段階で、差別化の効果を感じるため、不適切です。
イ:不適切。価値がない活動はアウトソーシングすることで、他社のノウハウを活用できるため、競争力を弱めることにならないことから、不適切です。
ウ:適切。それぞれの価値活動の結びつき方が、企業の独特な経営資源やケイパビリティにつながるため、適切です。
エ:不適切。収益性を高めるには、各価値活動の全体最適化を図る必要があるため、不適切です。
今日のおさらい
今回は「ポーターの競争戦略」を勉強しました。
ファイブフォース分析、3つの基本戦略のリスクは頻出論点です。しっかり理解しておきましょう。
ポーターの競争戦略
- ファイブフォース分析(業界構造分析)とは、「業者間の敵対関係」「新規参入の脅威」「代替製品・サービスの脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」といった5つの競争要因から業界の収益性(魅力度)を測定する分析フレームであり、脅威が多いほど、業界の収益性が低くなる。
- ポーターは競争優位を構築するために「競争優位のタイプ」と「戦略ターゲットの幅」を組み合わせて、コストリーダーシップ戦略、差別化戦略、集中戦略の3つを提唱している。
- バリューチェーン(価値連鎖)とは「企業が行う購買、製造、マーケティングなどの活動の相互関係を分析する枠組み」であり、事業活動を機能ごとに分解し、どの部分(機能)で価値(低コスト化、差別化)が生み出されるのか、どの部分に強み・弱みがあるかを分析するフレームである。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
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