中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「技術経営(MOT)、製品アーキテクチャ」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 技術経営(MOT)
- 製品アーキテクチャ
- オープンアーキテクチャ、クローズアーキテクチャ
- モジュール型アーキテクチャ、インテグラル型アーキテクチャ
- コア技術戦略
- 知的財産戦略(特許戦略)
試験対策
「製品アーキテクチャ」について、モジュール型とインテグラル型の違いを理解しておきましょう。
技術経営(MOT)
技術経営(MOT)とは、Management of Technologyの略です。
具体的には「技術力をベースに、研究開発の成果を事業・商品・サービスに結び付け、経済的な価値を創出していくマネジメント手法」をいいます。
欧米では1980年代以降、MOTの重要性が叫ばれ、それまでのプロセスイノベーション(生産工程の改良)からプロダクトイノベーション(従来にない新製品の創出)に軸足を転換した結果、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)などの巨大企業が登場しました。
一方、日本では2000年以降、MOTの重要性が認識されるようになり、企業戦略や国策としての取り組みを始めていますが、欧米よりも出遅れています。
イノベーションは次回取り上げます。今回は「製品アーキテクチャ」について勉強していきます。
製品アーキテクチャ
製品アーキテクチャとは「製品の基本的な設計思想」をいいます。
具体的には、製品をどのような構成部品に分けるか、繋ぎ合わせるかを考えることで、製品間のつなぎ目のことを「インターフェイス」といいます。
製品のアーキテクチャには「インターフェイスのオープン度合い」「インターフェイス間の調整度合い」で2つの分類があります。
オープンアーキテクチャ、クローズアーキテクチャ
これは「インターフェイスのオープン度合い」による分類です。
オープンアーキテクチャ
オープンアーキテクチャとは「設計や仕様などの全部または一部を、オープン(公開)にしたアーキテクチャ」です。
パソコンが代表例です。パソコンはUSBをインターフェイスに、本体やマウス、外付けHDDなどをメーカーを問わず接続することができます。
このように、インターフェイスが企業を超えて業界レベルで標準化していくのがオープンアーキテクチャです。これが進むとデファクトスタンダードが形成されていくことになります。
その反面、新しいメーカーが次々に参入してくるため、価格競争が発生しやすく、製品のコモディティ化が進みやすくなります。
コモディティ化とは「価格以外で差別化されていない製品」をいいます。
クローズアーキテクチャ
クローズアーキテクチャとは「設計や仕様などを独自化し、下請けなどの系列ネットワークで完結するアーキテクチャ」です。
自動車が代表例です。完成車メーカーを頂点に、下請け系列ネットワークが形成されており、そのグループ内で完結しています。
モジュール型アーキテクチャ、インテグラル型アーキテクチャ
これは「インターフェイス間の調整度合い」の分類です。
モジュール型アーキテクチャ
モジュール型アーキテクチャとは「機能的な独立性が高く、交換可能な部品(モジュール)を組み合わせて、最終製品を作る設計思想」を言います。
モジュールと機能の関係は基本的に1対1で、モジュール間の相互干渉(擦り合わせ)はない点が特徴です。
代表例はパソコンです。パソコンはUSBをインターフェイスに、本体やマウス、外付けHDDなどを組み合わせて完成品を生産していきます。このように組み合わせや交換の自由度が高いのが特徴です。
モジュール型アーキテクチャのメリット
- 様々な部品の組み合わせが可能になる(システムの多様性を容易に確保できる)
- 構成部品間の調整コストを抑えることができる
- 各メーカーはモジュールに集中して開発・生産することができる
モジュール型アーキテクチャのデメリット
- インターフェイスの変更が難しく、インターフェイスの進化が滞る
- 不要なインターフェースが発生し、全体システムに無駄が生じやすい
- 組立メーカーの製品が標準化され、差別化が困難になり、収益が低下しがちになる。(部品メーカーの収益は関係ないので要注意)
インテグラル型アーキテクチャ
インテグラル型アーキテクチャとは「部品を相互に調整・摺り合わせし、全体としての最適化を図る設計思想」です。
機能と部品との関係が複雑に錯綜し、相互に影響を与え合うため、相互調整(擦り合わせ)が必要となる点が特徴です。
代表例は自動車です。完成車メーカーと系列会社が細かく摺り合わせしながら仕上げていきます。その結果、全体として無駄がなく、全体として調和された自動車が完成されることになります。
なお、次世代自動車(電気自動車など)は電子機器部品が多く使われており、モジュール化の動きが見られる点は覚えておきましょう。
インテグラル型アーキテクチャのメリット
- 製品としてのまとまりがよい(プロダクトインテグリティ)
- 全体最適により、小型化・軽量化が実現できる
- 他社の模倣がしにくい(システム全体の模倣が困難)
インテグラル型アーキテクチャのデメリット
- 摺り合わせのための調整コストがかかる
- システムの多様性を追求しにくく、製品の進化に時間がかかる
コア技術戦略
技術経営の戦略に関連して「コア技術戦略」についても、理解しておきましょう。
コア技術戦略とは「特定分野に技術を集中し、それを応用して様々な製品に技術を適用する戦略」をいいます。コア・コンピタンスの技術版とイメージすると、理解が進みやすいと思います。
コア・コンピタンスとは「他社に真似できない自社の中核的能力」のことで、以下の3要素を満たす能力でした。
コア・コンピタンスの3要素
- 顧客に利益をもたらす
- 競合に真似されにくい
- 複数の製品・市場に展開できる
つまり、コア技術戦略、コア・コンピタンスともに、自社の中核技術(能力)をもとに、様々な製品に適用していこうという概念です。
知的財産戦略(特許戦略)
最後に、知的財産戦略(特許戦略)も理解しておきましょう。
知的財戦戦略とは「特許権などの知的財産権を企業収益につなげること」をいいます。
知的財産戦略は、他社からの模倣を防ぐという「守り」と、競争優位性を構築する「攻め」の両面から理解することがポイントです。
「守り」の知的財産戦略(特許戦略)
- 自社のイノベーションに対する他社の模倣を防ぐ
- 他社による関連技術の特許化を防ぐ
- 他社に対する特許侵害リスクを回避する
「攻め」の知的財産戦略(特許戦略)
- 業界におけるデファクトスタンダードを確立する
- クロスライセンス契約(特許の相互使用契約)における優位性を確立する
- ライセンス供与による収入を確保する
【過去問】令和6年度 第10問(製品アーキテクチャ)
問題
Q.製品アーキテクチャーとは、製品を構成する個々の部品や要素の間のつなぎ方や製品としてのまとめ方である。製品アーキテクチャーに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
インテグラル型のアーキテクチャーを持つ製品は、標準化が進んでいる。
【イ】
擦り合わせによって創造される価値が差別化要因になる製品については、モジュラー型のアーキテクチャーを持つことが多い。
【ウ】
部品間の相互依存性が高いインテグラル型のアーキテクチャーを持つ製品の場合、部門横断的に調整することが不可欠になる。
【エ】
モジュラー型のアーキテクチャーを持つ製品では、部品調達業者は、部品のコスト低減ではなく、部品の差別化をしなければならない。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。インテグラル型のアーキテクチャーは相互調整が必要であり、標準化がしにくいため、不適切です。
イ:不適切。モジュラー型ではなく、インテグラル型の説明であるため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:不適切。部品の差別化をしなければならないのは、インテグラル型のアーキテクチャーを持つ製品であり、
標準化しやすいモジュラー型の場合は部品のコスト低減であるため、不適切です。
【過去問】令和元年度 第11問(製品アーキテクチャ)
問題
Q.製品アーキテクチャは、製品を構成する個々の部品や要素の間のつなぎ方や製品としてのまとめ方であり、部品(要素)間の相互依存性の程度によって、インテグラル型とモジュラー型の 2 つに分類される。
「a 乗用車」、「b 大型旅客機」、「c デスクトップパソコン」、「d 業務用複合機(コピー機)」の 4 つの領域において、現在の市場で主に取引されている製品を想定した場合、それぞれインテグラル型、モジュラー型のいずれに該当するか。下記の解答群から、最も適切なものの組み合わせを選べ。
〔解答群〕
ア a:インテグラル型 b:インテグラル型 c:インテグラル型 d:モジュラー型
イ a:インテグラル型 b:インテグラル型 c:モジュラー型 d:インテグラル型
ウ a:モジュラー型 b:インテグラル型 c:モジュラー型 d:モジュラー型
エ a:モジュラー型 b:モジュラー型 c:インテグラル型 d:インテグラル型
オ a:モジュラー型 b:モジュラー型 c:モジュラー型 d:インテグラル型
解答・解説
正解:イ
乗用車、大型旅客機、業務用複合機(コピー機)は擦り合わせを行うインテグラル型、デスクトップパソコンはモジュール型です。
ただし、乗用車は電気自動車が増えてきており、モジュール型の要素が増えつつある点に注意しておきましょう。
【過去問】平成27年度 第7問(製品アーキテクチャ)
問題
Q.製品アーキテクチャがモジュール化するにつれて、技術戦略は変わってくる。そのような変化がもたらす部品メーカーの状況や、部品メーカーの変化への対応に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
製品サブシステムのインターフェースが標準化されるにつれて、部品メーカーは一定のデザインルールのもとで、独自に技術開発を進めることが可能になる。
【イ】
製品統合が容易になり、組立メーカーの製品が標準化されるにつれて、その収益が低下するので、部品メーカーも収益が悪化する。
【ウ】
製品のサブシステム間の関係が簡素になるので、部品メーカーは部品生産技術をめぐって、組立メーカーとの技術交流を緊密化することが重要になる。
【エ】
標準化された部品の生産プロセスにおける技術改良の余地がなくなり、価格競争が激化するので、部品メーカーの収益は悪化する。
【オ】
部品メーカーにとっては、自社固有の独自技術を梃て子こにして新規なモジュール部品を開発する必要性がなくなるので、これまで取引がなかった組立メーカーにも販路を広げることが重要になる。
解答・解説
正解:ア
ア:適切。インターフェイスは共通される一方で、部品は部品メーカーが独自に製品開発を進めることができるため、適切です。
イ:不適切。前半部分は正しく、モジュール化が進むと、組立メーカーの製品が標準化され、差別化が困難になり、収益が低下しがちになります。ただし、部品メーカーの収益が悪化するとは限らないため、不適切です。
ウ:不適切。モジュール化により、サブシステム間の関係が簡素になり、部品間の擦り合わせは減少するため、不適切です。
エ:不適切。インターフェイスは共通される一方で、部品は部品メーカーが独自に製品開発を進めることができるため、不適切です。
オ:不適切。部品自体は開発が進められるため、モジュール部品を開発する必要性がなくなるわけではないため、不適切です。
【過去問】平成25年度 第8問(製品アーキテクチャ)
問題
Q.製品の設計が、部品間のインターフェースが単純なモジュラー的な場合と、複雑で調整が必要な擦り合わせ的な場合とで、製品開発や技術開発の進め方が異なる。モジュラー的な製品開発や技術開発に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
モジュール部品を多様に組み合わせて得られる製品は、低価格・高機能を容易に実現でき、差別化による高い収益性を発揮できる。
【イ】
モジュラー化の進展によって、自社固有の技術開発余地が狭まり、標準部品を使った製品間の競争が激化し、価格競争が激しくなる。
【ウ】
モジュラー的な製品開発では、多様な部品を幅広く組み合わせるので、技術開発と製品開発が緊密に連携することが不可欠になる。
【エ】
モジュラー的な製品では、モジュール部品を広く外部から調達することが可能になるので、これまでの社内のモジュール部品の生産設備は埋没原価になる。
【オ】
モジュラー的な製品は、技術を持たない企業の参入可能性を高めるが、先発企業はシステム統合技術で先行するので、市場シェアには大きな影響を与えない。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。低価格・高機能は実現できる一方で、差別化は困難になるため、不適切です。
イ:適切。モジュール化が進むと、製品が標準化され、差別化が困難になります。その結果、価格競争が激しくなるため、適切です。
ウ:不適切。モジュール化により、部品間の擦り合わせは減少するため、不適切です。
エ:不適切。モジュール化により、広く外部から調達することは可能であるが、社内のモジュール部品の生産設備が埋没原価になるとは言い切れないため、不適切です。
オ:不適切。モジュール的な製品は、技術を持たない企業の参入可能性を高めるため、後発企業でもシェアを獲得することが可能です。そのため不適切です。
【過去問】令和3年度 第11問(知的財産戦略)
問題
Q.特許戦略に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【ア】
特許などの知的財産の権利化に当たっては、数多く出願し、権利化していけばよいのではなく、出願・登録のコストやその後の活用の可能性を踏まえ、選別して出願・権利化し、管理・維持していくことが必要である。
【イ】
日本国内における2011 年度から2018 年度の特許権の利用状況を見ると、自社および他社によって利用されている特許権の割合は、およそ半数にとどまっている。
【ウ】
日本の特許法は、同一の発明について2 つ以上の特許出願があったときに、先に発明をしたものに権利を付与する「先発明主義」を採用している。
【エ】
発明を特許として出願すると、一定期間が経過した後に発明の内容が公開されてしまうので、あえて出願せずノウハウとして保持するという選択肢もある。
解答・解説
正解:ウ
ア:適切。記述の通りです。
イ:適切。記述の通りですが、試験会場では判断つかないため、保留して他の選択肢をみましょう。
ウ:不適切。日本の特許法では「先発明主義」ではなく、「先願主義」を採用しているため、不適切です。
エ:適切。記述の通りです。特許は一定期間経過後に、発明の内容が公開されるため、あえて出願しない選択肢もあります。
【過去問】令和28年度 第10問(知的財産戦略)
問題
Q.技術志向の企業では、企業価値に占める無形資産の割合が有形資産のそれを大きく上回る企業が多く見られ、知的資産の戦略的経営が注目されている。特に特許は守るだけでなく、企業価値を高めるべくそれを他社と相互に活用したりすることも重要になっている。特許の戦略的運用に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
特許をオープンライセンスすることは、ライセンスを許諾することによって自社技術基盤の上に他社製品をのせて、他社の代替技術開発のモチベーションを下げる効果を期待できるが、ロイヤルティ収入は期待できなくなる。
【イ】
プロパテント戦略は特許侵害に対応すべく、訴訟に訴えて差止請求権や損害賠償請求権などの法的手段で特許を守る戦略であり、知財戦略の基本をなすものである。
【ウ】
包括クロスライセンス契約では、特定分野についてリスト化された特許の範囲で特許の相互利用が許されるが、その後成立した特定分野の特許についてはリストに加えることは法的に許されていない
【エ】
包括クロスライセンス契約を結ぶのは、主として企業間で特許を相互に幅広く利用するためであり、契約提携企業間での金銭の授受を伴うこともある。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。ロイヤルティ収入が期待できるため、不適切です。
イ:不適切。プロパテントとは、特許権による保護を強くする(特許を重視する)ことであり、法的手段で特許を守る戦略ではないため、不適切です。
ウ:不適切。成立した特定分野の特許についてリストに加えることは法的に許されていないわけではないため、不適切です。
エ:適切。選択肢の通りです。
【過去問】令和5年度 第10問(プラットフォーム)
問題
Q.プラットフォームを用いた戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
1つのプラットフォームには、同業者だけを参加させる方が効果的かつ効率的である。
【イ】
参加者がプラットフォームから得られる効用は、参加者が増加するにつれて指数関数的に増加する。
【ウ】
プラットフォームに参加する人が増えるほど、参加者がそのプラットフォームから得られる効用が増加することをフレーミング効果と呼ぶ。
【エ】
プラットフォームは社会にとっての価値を生み出すものなので、規制は必要とされない。
【オ】
プラットフォームを用いたビジネスでは、サービスの受益者には課金されない。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。プラットフォームは、集客やマッチングに活用されるため、同業種よりも異業種が参加したほうが効果が出やすいため、不適切です。
イ:適切。記述の通りです。
ウ:不適切。「フレーミング効果」ではなく、「ネットワーク効果(ネットワーク外部性)」であるため、不適切です。フレーミング効果とは、同じ内容でも表現方法の違いにより、受け取り方が異なる効果をいいます。
エ:不適切。GAFAなどに対して、独占禁止法による規制されているケースがあるため、不適切です。
オ:不適切。アマゾンなどではサービスの受益者に課金しているため、不適切です。
【過去問】令和3年度 第12問(情報財)
問題
Q.ソフトウェアやコンテンツなどの情報財には、独自の特性があるとされる。その特性やそこから派生する状況として、どのようなことが想定できるか。最も適切なものを選べ。
【ア】
インターネットの普及によって情報財の流通コストは低下しているために、情報財をその一部でも無償で提供すると、広告収入以外で収入を獲得することは不可能になる。
【イ】
情報財では、幅広いユーザーが利用するという特性から、スイッチングコストを生み出して顧客を囲い込む方策は、例外的な状況を除いて有効ではない。
【ウ】
情報財では、複製にかかるコストが相対的に低いという特性から、個々の顧客が持つ価値に応じて価格差別を行うことは困難である。
【エ】
情報財において、ネットワーク外部性が大きい状況では、顧客数が増えるほど、その情報財の価値は顧客間で希釈化され、個々の顧客が獲得する効用は低下する。
【オ】
制作・開発には多額のコストがかかるが、複製にかかるコストは低いという特性を持った情報財では、コモディティ化によって製品市場で激しい価格競争が生じると、複製にかかるコストの近傍まで製品価格が下落して、制作・開発にかかったコストが回収できなくなる可能性がある。
解答・解説
正解:オ
ア:不適切。一部でも無償で提供すると、広告収入以外で収入を獲得できなくなることはないため、不適切です。有償へのアップデート版は多くの事例があります。
イ:不適切。スイッチングコストを生み出して顧客を囲い込む方策は有効であるため、不適切です。
ウ:不適切。ダイナミックプライシングなど、個々の顧客が持つ価値に応じて価格差別を行うことは一般的に行われているため、不適切です。
エ:不適切。ネットワーク外部性が大きい場合、個々の顧客が獲得する効用は上昇するため、不適切です。
オ:適切。選択肢の通りです。
【過去問】令和元年度 第8問(情報財)
問題
Q.次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
コンピュータのソフトウェアやコンテンツなどのデジタル化された情報財は、製品開発費などの固定費が占める比率が【 A 】く、製品 1 単位を追加的に生産するためにかかる費用が【 B 】い傾向があるという特性を有している。
こうした情報財の特性は、製品市場での競争状況や、その状況に基づく競争戦略に影響を与える。特に重要なのは、複数の企業が同様の情報財を供給して、コモディティ化が生じる場合、たとえ当該市場が成長段階にあったとしても、企業間での競争が激化して、最終的には【 C 】の水準まで価格が低下してしまう点にある。
そのために、デジタル化された情報財では、その特性を勘案した競争戦略によって、コストリーダーシップや製品差別化を実現することで、コモディティ化に伴う熾烈な価格競争を回避すべきだとされる。例えば、パソコンのオペレーティング・システム(OS)の場合、支配的な地位を確立した企業は、ユーザー数の多さが当該製品の便益の増大につながる【 D 】などを背景として、持続的な競争優位を獲得してきた。
(設問 1 )
文中の空欄A~Cに入る語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。
ア A:高 B:低 C:機会費用
イ A:高 B:低 C:限界費用
ウ A:高 B:低 C:固定費
エ A:低 B:高 C:機会費用
オ A:低 B:高 C:限界費用
(設問 2 )
文中の空欄Dに入る語句として、最も適切なものはどれか。
ア オープン・イノベーション
イ デジュール標準
ウ ネットワーク外部性
エ リバース・イノベーション
オ リバース・エンジニアリング
解答・解説
(設問1)
正解:イ
情報財は、製品開発費などの固定費の占める割合が高い傾向があります。ただし、一度作ると、複製するためのコストが少なく、追加的に生産するための費用は少なくなります。
なお、情報財がコモディティ化した場合は、競争が激化し、最終的には限界費用(1単位を追加生産する際の追加費用)の水準まで価格が低下する点も覚えておきましょう。
(設問2)
正解:ウ
ネットワーク外部性とは「ネットワークに参加する利用者が増えるほど、利用者の価値が高まること」をいいます。
今回のおさらい
今回は「技術経営(MOT)、製品アーキテクチャ」を勉強しました。
モジュール型アーキテクチャ、インテグラル型アーキテクチャのメリット・デメリットは出題されやすいので、しっかり理解しておきましょう。
技術経営(MOT)、製品アーキテクチャ
- 技術経営(MOT)とは「技術力をベースに、研究開発の成果を事業・商品・サービスに結び付け、経済的な価値を創出していくマネジメント手法」である。
- 製品アーキテクチャとは「製品の基本的な設計思想」のこと。アーキテクチャの分類方法として「インターフェイスのオープン度合い」「インターフェイス間の調整度合い」の2パターンがある。
- インターフェイス間の調整度合いでは「モジュール型アーキテクチャ」と「インテグラル型アーキテクチャ」がある。前者はモジュールを組み合わせて自由度を高める、後者は摺り合わせをして全体最適を目指している。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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