企業経営理論【19】組織の成立条件、組織の設計原則、戦略と組織の関係

1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「組織の成立条件、組織の設計原則、戦略と組織の関係」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

【組織論】

経営組織の形態と構造
・経営組織の運営
・人的資源管理
・労働関連法規

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • 組織の成立条件(共通目的、貢献意欲、コミュニケーション)
  • 組織の均衡条件(誘因≧貢献)
  • ライン機能、スタッフ機能
  • 集権的組織、分権的組織
  • 組織の設計原則(専門化の原則、権限・責任一致の原則、統制範囲の原則、命令一元化の原則、例外の原則)
  • 組織は戦略に従う、戦略は組織に従う
目次

組織論の体系

今回から組織論に入っていきますが、最初に組織論の体系を理解しておきましょう。

組織論は、組織のハード面に関する「マクロ組織論」ソフト面に関する「ミクロ組織論」に分類されます。

2次試験の事例I(組織・人事)では、設問が「組織構造(マクロ組織論)」もしくは「個人のモチベーション(ミクロ組織論)」のどちらを問われているのかを判断できることが重要になります。

最初は、マクロ組織論から勉強していきます。

組織の成立条件

組織論で有名なバーナードの理論をもとに、組織が成立する条件を確認しましょう。

バーナードは、組織とは「二人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステム」と定義しています。そして、組織の成立条件として、以下の3つを挙げています。

組織の成立条件(バーナード)

  1. 共通の目的
  2. 貢献意欲
  3. コミュニケーション

言い替えると、組織とは2人以上の人々がコミュニケーションと貢献を通じて、共通目的の達成を目指すシステムともいえます。

組織の均衡条件

組織が存続する条件として「誘因と貢献」の概念を理解しておきましょう。

従業員などの参加者は、組織に参加する(=貢献)見返りとして報酬(=誘因)を求めます。

組織は、参加者の「貢献」を引き出すのに十分な「誘因」を提供する場合に、存在することが可能になります。

ここから、組織が存続する条件として「誘因≧貢献」が成立する必要があり、これを組織の均衡条件といいます。試験対策では「以上」の関係であることを覚えておきましょう。

上記は別の視点でみると「組織は、貢献をもとに誘因を作り出すシステム」ともいえます。

組織均衡論では、組織における貢献から誘引への変換率を「能率」、組織目標の達成度を「組織の有効性」と言います。誘因≧貢献の場合、組織の有効性が高くなります。

組織の基本構造

組織は規模が拡大していくにつれて、分業が進み、階層が増えていきます。

縦方向に分業が進むことを「階層分業(垂直分業)」、横方向に分業が進むことを「機能的分業(水平分業)」といいます。

分業が進むことで専門性を発揮できるようになる一方、階層が増えることで部門間の調整や意思疎通が難しくなります。このように組織は「分業と統合・調整のシステム」と言えます。

また、組織の機能には「ライン機能」と「スタッフ機能」があります。

ライン機能とスタッフ機能

  • ライン機能
    • 製造や営業など、経営を継続していく上で不可欠であり、経営目的の達成に直接的に関連する機能
  • スタッフ機能
    • 経営企画や総務など、ラインを支援・助言することを通じて、経営目的の達成に間接的に関連する機能
    • ラインに助言するが、指揮命令権はない

加えて、権限の集中度からの「集権的組織(集権化)」と「分権的組織(分権化)」も理解しておきましょう。

集権的組織と分権的組織

  • 集権的組織(集権化)
    • トップマネジメントに権限が集中している組織
    • トップマネジメントの意思が全体に浸透しやすく、迅速な組織的な行動が可能になる
    • 規模が拡大すると、トップマネジメントの負担が重くなる
  • 分権的組織(分権化)
    • 下位の管理階層に権限が分散化した組織
    • 意思決定がスピードアップできる
    • 環境変化への対応力を高めることができる

この集権化と分散化は、次回勉強する機能別組織、事業部制組織などの基本になりますので、このタイミングで理解しておきましょう。

組織の設計原則

組織の設計原則とは「組織を設計する際の基準となる原則」をいいます。

専門化の原則

業務を分業化(専門化)することで、効率を上げる原則です。

組織活動を構造化していくには、(1)分業を進めて専門化し、(2)専門化した仕事をマニュアルなどで公式化し、(3)マニュアルを浸透させる標準化させていくことが重要となります。

権限・責任一致の原則

権限と責任は一致していなければならないという原則です。

階層性の原則とも言われます。

統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)

1人の管理者が直接統制できる部下の人数には限界があるという原則です。

部下の人数が限界を超えると、管理効率が低下します。

管理できる人数を増やすには、(1)メンバーの判断力を高める、(2)作業を標準化する、(3)研修などで管理者の例外処理力を高める、(4)スタッフ機能を強化するなどが必要になります。

命令一元化の原則

組織の秩序維持のため、1人の部下に命令するのは1人の上司にするという原則です。

マトリクス組織は、組織構造上、ワンマン・ツーボスの状態となるため、命令一元化の原則が崩れる恐れがあります。

例外の原則(権限移譲の原則)

管理者は部下に権限移譲し、例外的な意思決定に専念すべきであるという原則です。

定型的な意思決定は部下に権限移譲し、経営者は非定型的意思決定に専念すべきということです。

これは第3回目で勉強した「計画のグレシャムの法則」と同じです。2次試験における組織の問題点として、よく出てきますので、覚えておきましょう。

戦略と組織の関係

組織は経営戦略と密接に連動しています。どんなに立派な経営戦略を策定しても、それを実現できる(実現しやすい)組織形態になっていないと、その達成が遠のくためです。

このような経営戦略と組織の関係に関して、2つの命題があります。

経営戦略と組織の関係に関する命題

  • チャンドラー:組織は戦略に従う
  • アンゾフ:戦略は組織に従う

チャンドラーは、1960年代前半のアメリカを代表する4社を分析した結果、多角化、国際化を効率的に成功させるために事業部制組織を採用していると分析し、環境に適応する戦略を策定し、その戦略を実行するために最適な組織にしていくべきであると主張しました。

一方、アンゾフは、戦略が組織の変化を求めても、組織には自己防衛機能が働いたり、企業文化によって遂行されないことを分析し、戦略は組織に細心の注意を払って策定しないといけないと主張しました。

実際には、経営戦略と組織は「相互浸透」で捉えることが重要ですが、2つの命題も合わせて理解しておきましょう。

【過去問】令和2年度 第14問(組織の成立条件)

問題

Q.C.Iバーナードは、経営者の役割を論じるためには、組織についての理解が不可欠だとし、その要素を明らかにした。バーナードが示した組織の要素として、最も適切なものはどれか。

【ア】
階層、分権化、統合化

【イ】
計画、指揮、統制

【ウ】
コミュニケーション、貢献意欲、共通目的

【エ】
責任と権限の一致、命令の一元性

【オ】
分業、専門化、調整

解答・解説

正解:ウ

バーナードは、組織の成立条件として、「共通の目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」をあげています。

【過去問】平成29年度 第14問(組織の構成原理)

問題

Q.組織構造のデザインに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
異なったタスクを組み合わせて、顧客に提供するサービスとしてまとめる方法を、機能部門化という。

【イ】
指揮命令系統は、組織のトップからロアーに至る権限の系統であるが、組織横断的なコミュニケーションを可能にする情報ネットワーク技術の発展によって、指揮命令系統は組織デザインの要素としては必須ではなくなっている。

【ウ】
仕事を細かく分割された作業ルーティンとしてではなく、トータルなプロセスとして任せるように割り当てることを、職務の専門化という。

【エ】
職務の標準業務手続きの公式化が進むほど、職務の進め方に対する個人の自由裁量は小さくなる。

【オ】
組織の頂点に意思決定を集中する度合いとして集権化と分権化が決められ、集権化するほど環境変化への対応力を高めることができ、分権化するほど迅速な組織的な行動が可能になる。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。機能部門化とは「調達」「製造」「販売」など機能ごとにタスクをまとめるものであるため、不適切です。

イ:不適切。前半は正しいですが、指揮命令系統は組織デザインの要素として考慮すべきであるため、不適切です。

ウ:不適切。職務専門化とは、仕事を細かく分割して作業ルーティンを割り当てることであるため、不適切です。

エ:適切。選択肢の通りです。

オ:不適切。集権化するほど迅速な組織的な行動が可能になり、分権化するほど環境変化への対応力を高めることができるため、不適切です。

【過去問】平成24年度 第14問(組織の均衡条件)

問題

Q.組織が成立・存続していくためには、その協働体系が有効かつ能率的に機能する条件がある。この条件を明らかにした「組織均衡(organizational equilibrium)」の考え方には、5つの中心的公準がある。この中心的公準に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【ア】
貢献が十分にあって、その貢献を引き出すのに足りるほどの量の誘因を提供しているかぎりにおいてのみ、組織は「支払い能力がある」すなわち存続する。

【イ】
参加者それぞれ、および参加者の集団それぞれは、組織から誘因を受け、その見返りとして組織に対する貢献を行う。

【ウ】
参加者のさまざまな集団によって提供される貢献が、組織が参加者に提供する誘因を作り出す源泉である。

【エ】
組織は、組織の参加者と呼ばれる多くの人々の相互に関連した社会的行動の体系である。

【オ】
それぞれの参加者は、提供される誘因と要求されている貢献の差し引き超過分が正の場合にだけ、組織への参加を続ける。

解答・解説

正解:オ

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:適切。選択肢の通りです。

エ:適切。選択肢の通りです。

オ:不適切。組織が成立する条件は「誘因≧貢献」であり、誘因と貢献が等しい場合も組織に参加し続けるため、不適切です。

今日のおさらい

今回は「組織の成立条件・設計原則・戦略との関係」を勉強しました。

今日の範囲は「マクロ組織論」になります。組織の均衡条件、例外の原則などは出題されやすい論点ですので、しっかり理解しておきましょう。

組織の成立条件・設計原則・戦略との関係

  1. 組織とは「二人以上の人々の意識的に調整された活動や諸力のシステム」であり、組織の成立条件として「共通の目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」が必要である。
  2. 組織の設計原則には、「専門化の原則」「権限・責任一致の原則」「統制範囲の原則(スパン・オブ・コントロール)」「命令一元化の原則」「例外の原則(権限移譲の原則)」がある。
  3. 組織は経営戦略と密接に連動してる。チャンドラーは「組織は戦略に従う」、アンゾフは「戦略は組織に従う」との命題を主張した。

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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