企業経営理論【9】VRIO分析・コアコンピタンス・ケイパビリティ

1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「VRIO分析・コアコンピタンス・ケイパビリティ」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項

【組織論】

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • ケイパビリティ学派
  • 経営資源
  • 情報的経営資源
  • VRIO分析(経済価値、希少性、模倣困難性、組織能力)
  • 競争均衡の源泉、一時的な競争優位の源泉、持続的な競争優位の源泉
  • 経路依存性、因果曖昧性、社会的複雑性
  • コア・コンピタンス
  • ケイパビリティ
目次

経営戦略策定プロセスとの関係

最初に、今回の学習内容が【経営戦略策定プロセス】のどこに該当するか、確認しましょう。

今回の内容は、事業戦略で競争優位を構築するためのアプローチの一つである「ケイパビリティ学派」について勉強します。

経営戦略のアプローチ(学派)のおさらい

最初に、今回の勉強範囲を理解するために、第4回目【経営戦略のアプローチ(学派)】のポイントを振り返っておきましょう。

経営戦略では「競争優位の構築」にあたり、ポジショニング学派とケイパビリティ学派の2つのアプローチがあります。

VRIO分析、コアコンピタンスは「ケイパビリティ学派」になります。

その根本には「外部環境よりも内部資源を重視し、企業が持つ異質で、他社が真似できない(複製に多額の費用・時間がかかる)リソースに注目する」というリソースベースドビュー(RBV)の思想があります。

また、内部資源である「経営資源」も確認しておきましょう。

経営資源は一般的に「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われますが、「情報」を社内・社外に分解して覚えておくとよいと思います。

また、経営資源では「汎用性と固定性」の視点が重要です。

  • 汎用性が高い経営資源
    • モノ・カネなどの経営資源。質より量が競争優位の源泉になりやすい
    • 模倣が容易であるため、一時的な競争優位になりやすい
  • 特殊性が高い経営資源
    • 情報などの目に見えない経営資源で「情報的資源」とも呼ばれる
    • 持続的な競争優位の源泉になりやすい

また、情報的経営資源には「自然に蓄積されて、多重利用できて、何度使っても無くならない」という特性があります。

VRIO分析

VRIO分析とは「企業が持つ経営資源が、市場において競争優位性を持つかを評価するフレームワーク」です。バーニーにより提唱されました。

バーニーは、企業が持続的な競争優位を構築するには、「経済価値」「希少性」「模倣困難性」「組織能力」の4つの条件をもつ経営資源が必要であるとし、その頭文字を取ってVRIO分析と名付けました。

なお、「組織能力」を除く3つの要素の獲得状況によって、競争優位のレベルが異なってきます。

「経済価値」しか保有していない経営資源は「競争均衡の源泉と言われます。競争から脱落しないための最低ラインになります。

次いで、「経済価値」「希少性」を保有している経営資源は「一時的な競争優位の源泉と言われます。模倣されるまでは競争優位を維持できるものの、模倣されたら競争優位が失われてしまいます。

最後に、「経済価値」「希少性」「模倣困難性」を保有している経営資源は「持続的な競争優位の源泉と言われます。模倣コスト(手間・時間など)がかかるため、長期的に競争優位を構築することができます。

つまり、VRIO分析の結論は「模倣困難性」が一番大事ということです。

この模倣困難性を高める要因に「経路依存性」「因果曖昧性」「社会複雑性」があります。

  • 経路依存性(独自の歴史的条件)
    • その企業の歴史・出来事が競争優位を構築しており、模倣するのに時間がかかる
  • 因果曖昧性
    • 内部のメンバーには当たり前のことであり、どのような要因で競争優位が構築されたか曖昧であり、どこを模倣したらよいかわからない
  • 社会的複雑性
    • 物理的な経営資源に加えて、組織文化やサプライヤーとの関係などが複雑であるため、模倣の仕方がわからない

VRIO分析は1次試験では頻出の論点ですが、上記を理解していれば正解にたどり着くことができます。

コア・コンピタンス

コア・コンピタンスとは「他社に真似できない自社の中核的能力」を言います。

コア・コンピタンスは、以下の3要素を満たす能力になります。

コア・コンピタンスの3要素

  • 顧客に利益をもたらす
  • 競合に真似されにくい
  • 複数の製品・市場に展開できる

コア・コンピタンスを提唱した『コア・コンピタンス経営』では、ソニーの小型化技術、ホンダのエンジン技術、キヤノンの光学技術、シャープの液晶パネル技術が挙げられています。

ケイパビリティ

ケイパビリティとは「企業の組織的能力」で、高い品質や効率をもたらすビジネスプロセスにフォーカスする概念になります。

コア・コンピタンスは「特定の技術力や製造能力」、ケイパビリティは「組織能力」と理解しておきましょう。

【過去問】令和5年度 第2問(VRIO)

問題

Q.J. B. バーニーが提唱した「VRIO フレームワーク」に則った記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
外部環境の機会を適切に捉えた価値がある経営資源であれば、業界内において希少でなくても、持続的な競争優位の源泉となる。

【イ】
価値があり、業界内において希少で、別の経営資源で代替される可能性が少ない経営資源を保有していても、それが組織体制とコンフリクトを起こすようであれば、組織体制を変更せずに経営資源を見直さなければならない。

【ウ】
価値が高く、業界内で希少な経営資源では、一時的な競争優位を得ることはできない。

【エ】
業界内で模倣困難かつ希少で価値ある経営資源を有していても、競争優位性を持続的に確立できないことがある。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。「持続的な競争優位の源泉」とは「経済価値」「希少性」「模倣困難性」を保有していることを指すため、不適切です。

イ:不適切。「経済価値」「希少性」「模倣困難性」を有する経営資源を活用できる「組織能力」を整備することが必要であるため、不適切です。

ウ:不適切。「経済価値」「希少性」を保有している場合は「一時的な競争優位の源泉」になるため、適切です。

エ:適切。「経済価値」「希少性」「模倣困難性」を保有しても、「組織能力」がない場合、持続的な競争優位を確立できないことがあるため、適切です。

【過去問】令和2年度 第1問(VRIO)

問題

Q.VRIO フレームワークにおける競争優位に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
ある経営資源が数多くの企業に保有されていても、外部環境の機会を適切にとらえ脅威を無力化するものであれば、この経営資源は一時的な競争優位の源泉となる。

【イ】
経営陣のチームワークや従業員同士の人間関係などの組織属性が経済価値を生み、希少性があり、かつ他の企業による模倣が困難な場合、この組織属性は企業の一時的な競争優位の源泉となる。

【ウ】
組織内のオペレーションを他の企業に比べて効率的に行うことができる技術やノウハウが、業界内で希少である場合、模倣困難性を伴わなくても企業の一時的な競争優位の源泉となる。

【エ】
他の企業が獲得できない経営資源が経済価値を持ち、業界内で希少である場合、その経営資源を活かす組織の方針や体制が整っていなくても、持続的な競争優位の源泉となる。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。「一時的な競争優位の源泉」とは「経済価値」「希少性」を保有していることを指すため、不適切です。

イ:不適切。「経済価値」「希少性」「模倣困難性」ともに保有している場合は「持続的な競争優位の源泉」になるため、不適切です。

ウ:適切。「経済価値」「希少性」を保有している場合は「一時的な競争優位の源泉」になるため、適切です。

エ:不適切。経営資源を生かす組織の方針や体制が整っていない場合は、持続的な競争優位は構築できなたいため、不適切です。

【過去問】平成29年度 第3問(VRIO)

問題

Q.企業の経営資源に基づく競争優位性を考察する VRIO フレームワークに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
外部環境の機会を適切に捉え脅威を無力化する経営資源は、業界内において希少でないときに、企業の一時的な競争優位の源泉となる。

【イ】
希少で価値がある経営資源を保有する企業は、他の企業がその経営資源を別の経営資源で代替するコストが小さい場合、持続的な競争優位を確立する。

【ウ】
組織内の事務作業を効率化する固有のノウハウは、業界内で希少でない場合、企業の一時的な競争優位の源泉となる。

【エ】
独自に長い年月をかけて開発した価値ある経営資源を保有する企業は、その資源が業界内で希少でないとき、資源をいかす組織の方針や体制が整わない中でも持続的な競争優位を確立する。

【オ】
予測が困難な環境変化が起きない場合は、希少で価値があり模倣が難しい経営資源は企業の持続的な競争優位の源泉となる

解答・解説

正解:オ

ア:不適切。企業の一時的な競争優位の源泉になるには、希少性が必要になるため、不適切です。

イ:不適切。持続的な競争優位になるには、代替するコストが大きい(=模倣困難である)ことが必要であるため、不適切です。

ウ:不適切。企業の一時的な競争優位の源泉になるには、希少性が必要になるため、不適切です。

エ:不適切。持続的な競争優位であるためには、「希少性」「組織能力」が必要であるため、不適切です。

オ:適切。「経済価値」「希少性」「模倣困難性」ともに保有している場合は「持続的な競争優位の源泉」になるため、適切です。

【過去問】平成27年度 第3問(VRIO)

問題

Q.企業の経営資源と持続的な競争優位に関する記述として、最も不適切なものはどれか。

【ア】
ある市場において、競合企業が業界のリーダーのもつ経営資源を複製する能力をもっていても、市場規模が限られていて複製を行わないような経済的抑止力のある状況では模倣しない傾向がある。

【イ】
競合企業に対する持続可能な競争優位の源泉となるためには、代替可能な経営資源の希少性が長期にわたって持続する必要がある。

【ウ】
時間の経過とともに形成され、その形成のスピードを速めることが難しく、時間をかけなければ獲得できない経営資源には経路依存性があり、模倣を遅らせることで先発者を保護する。

【エ】
代替製品の脅威は事業の収益性に影響を与えるが、競合企業は代替資源で同様の顧客ニーズを満たす製品を提供できる。

【オ】
独自能力の概念では、競争戦略の実行に不可欠な経営資源であっても、自社製品や事業のオペレーションを特徴づける独自なものでなければ、その資源は競争優位の源泉とはならない。

解答・解説

正解:イ

ア:適切。市場規模が限られている場合は、模倣するメリットがないときは模倣しないこともあるため、適切です。

イ:不適切。持続的な競争優位を持続するには、希少性だけでなく、代替が困難な資源を持つ必要があるため、不適切です。

ウ:適切。経路依存性の説明であり、適切です。

エ:適切。選択肢の通りです。代替品の脅威はポーターのファイブフォースで勉強します。

オ:適切。経営資源が競争優位の源泉となるには、独自性(=模倣困難性)が必要であるため、適切です。

【過去問】令和元年度 第4問(コア・コンピタンス)

問題

Q.G.ハメルとC.K.プラハラードによるコア・コンピタンスに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
コア・コンピタンスは、企業内部で育成していくものであるため、コア・コンピタンスを構成するスキルや技術を使った製品やサービス間で競争が行われるものの、コア・コンピタンスの構成要素であるスキルや技術を獲得するプロセスで企業間の競争が起きることはない。

【イ】
コア・コンピタンスは、企業の未来を切り拓くものであり、所有するスキルや技術が現在の製品やサービスの競争力を支えていることに加えて、そのスキルや技術は将来の新製品や新サービスの開発につながるようなものであることが必要である。

【ウ】
コア・コンピタンスは、顧客が認知する価値を高めるスキルや技術の集合体であるから、その価値をもたらす個々のスキルや技術を顧客も理解していることが必要である。

【エ】
コア・コンピタンスは、他の競争優位の源泉となり得る生産設備や特許権のような会計用語上の「資産」ではないので、貸借対照表上に表れることはなく、コア・コンピタンスの価値が減少することもない。

【オ】
コア・コンピタンスは、ユニークな競争能力であり、個々のスキルや技術を束ねたものであるから、束ねられたスキルや技術を独占的に所有していることに加えて、競合会社の模倣を避けるために個々のスキルや技術も独占的に所有していることが必要である。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。コア・コンピタンスの構成要素であるスキルや技術を獲得するプロセスで、企業間の競争が起きることがあるため、不適切です。

イ:適切。コア・コンピタンスの要素である「複数の製品・市場に展開できる」は、将来の新製品や新サービスの開発につながるものであるため、適切です。

ウ:不適切:前半は正しいですが、後半の「個々のスキルや技術を顧客も理解していることが必要である」わけではないため、不適切です。

エ:不適切。コア・コンピタンスは特許やのれんといった「無形固定資産」として貸借対照表に計上されることがあるため、不適切です。

オ:不適切。前半は正しいですが、後半の「競合会社の模倣を避けるために個々のスキルや技術も独占的に所有していることが必要である」は、他社との連携で実現することもあるため、不適切です。

今日のおさらい

今回は「VRIO分析・コアコンピタンス・ケイパビリティ」を勉強しました。

VRIO分析、コアコンピタンスは、1次試験の頻出論点です。特に、VRIO分析の4つと競争優位のレベルは必ず理解しておきましょう。

VRIO分析・コアコンピタンス・ケイパビリティ

  1. VRIO分析とは「企業が持つ経営資源が、市場において競争優位性を持つかを評価するフレームワーク」。「経済価値」「希少性」「模倣困難性」「組織能力」から経営資源の競争優位を把握する
  2. 「経済価値」「希少性」を保有する経営資源は【一時的な競争優位の源泉】であり、模倣されると競争優位が失われる。VRIO分析で一番重要なのは「模倣困難性」であり、それら3つを保有する経営資源は【持続的な競争優位の源泉】と呼ばれる
  3. コア・コンピタンスは「他社に真似できない自社の中核的能力」のことで、①顧客に利益をもたらす、②競合に真似されにくい、③複数の製品・市場に展開できる、の3要素が必要である

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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