1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「国際経営(グローバル戦略)」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- グローバルマーケティングの発展段階
- グローバル戦略、マルチドメスティック戦略
- IRフレームワーク(グローバル型、マルチナショナル型、トランスナショナル型、インターナショナル型)
- カントリーリスク、異文化インターフェイス、フィージビリティスタディ
- ダイバーシティ経営
グローバルマーケティングの発展段階
最初に、企業が国際経営を進めていく流れであるグローバルマーケティングの発展段階を理解しましょう。
グローバルマーケティングの発展段階
- 国内マーケティング
- 国内でビジネス活動している段階
- 輸出マーケティング
- 最初は中間業者を使うが、次第に直接輸出に移行していく段階
- 国際マーケティング
- 現地に適応していく段階。標準化と適用化を検討していく。
- 標準化:各国統一でマーケティングプログラムを実施する
- 適用化:各国の市場特性や商習慣などに適応していく
- 多国籍マーケティング
- 共通性の高いエリアで、規模の経済を発揮したり、統一したコミュニケーションを展開
- グローバルマーケティング
- 地球全体を一つの市場と捉えて行うマーケティングを展開
多国籍企業の戦略
多国籍化した企業が採用する戦略には、「グローバル戦略」と「マルチドメスティック戦略」があります。
グローバル戦略
グローバル戦略とは「世界を単一市場と捉える」考え方です。
本国の親会社がリーダーシップを取り、グローバル規模で、開発・調達・生産・販売機能の効率化を目指していきます。そのため、現地場への適応の必要性が小さくなります。
マルチドメスティック戦略
マルチドメスティック戦略とは「世界を独立した市場の集合体と捉える」考え方です。
現地への権限移譲を行い、現地ニーズへのきめ細かい対応を行います。各国単位で、開発・調達・生産・販売機能の最適化を考えていきます。
IRフレームワーク
C.A.バートレットとS.ゴシャールは、(1)グローバル統合(グローバル規模で標準化)、(2)ローカル適合(現地市場環境への適合性)から、企業の経営スタイルを4つに分類しています。
IRフレームワーク(グローバル戦略における戦略)
- グローバル型
- グローバル統合:高×ローカル適応性:低
- 世界の市場を単一であると見て、経営資源と権限を本社に集中するスタイル
- マルチナショナル型
- グローバル統合:低×ローカル適応性:高
- 各国・地域ごとに市場やニーズに対応すべく、現地の子会社が独立的に事業を行うスタイル
- トランスナショナル型
- グローバル統合:高×ローカル適応性:高
- グローバル統合とローカル適応の競争優位性の両立を目指すスタイル。各子会社に独自の専門的能力が構築されるよう経営資源が分配され、自立化を進める
- インターナショナル型
- グローバル統合:低×ローカル適応性:低
- ある程度の海外資源や意思決定権を海外子会社に委任するが、重要な経営資源と意思決定権は親会社に集中するスタイル
国際経営における主要キーワード
国際経営では、従来とは異なる市場に参入するため、いくつかの留意点があります。
ここでは「カントリーリスク」「異文化インターフェイス」「フィージビリティスタディ」「ダイバーシティ経営」を理解しておきましょう。
カントリーリスク
カントリーリスクとは「特定の国・地域における政治・社会・経済等の環境変化から企業が損失を被るリスク」をいいます。
具体的には、急激なインフレや通貨の急落、政権交代による経済・通商政策の変更、戦争や内乱による混乱、法制や商慣行の違いなどがあります。
異文化インターフェイス
異文化インターフェイスとは「文化上の違いを乗り越えて多国籍企業としての経営を遂行するために、異文化間を連結し、統合化する経営管理の仕組み」をいいます。
海外に進出した企業は、その進出先の国の社会制度や文化と適応する必要があります。
フィージビリティスタディ
フィージビリティスタディとは「プロジェクトの実現可能性を事前に調査・検討すること」をいいます。
海外市場に参入するため、その実現可能性を事前調査する文脈で使われます。実行可能性調査、企業化調査、採算性調査とも呼ばれます。
ダイバーシティ経営
ダイバーシティ経営とは「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」をいいます。
これは、国際経営だけでなく、日本でも大事な視点ですよね。
海外展開の課題と対応策
海外展開を行う際には、いくつかの主要な課題があります。対応策と合わせて理解しておきましょう。
海外展開の課題と対応策
- カントリーリスクへの対応
- 現地事情に詳しい専門家・機関と連携する
- フィージビリティスタディで事前調査を行う
- 単独出資に対する制約への対応
- 現地パートナーとの合弁会社を設立する
- 現地市場への浸透
- 現地人材への権限移譲する
- 現地ニーズへのきめ細かい対応などの適用化を推進する
なお、フィージビリティスタディの視点として、以下をイメージできるようにしておきましょう。
・経済的条件:市場需要、労働力の量と質、賃金水準、技術水準
・社会的条件:社会的慣習、文化、風土
・政治的条件:輸出入の制約、税制・関税、事業活動への法的制限
【過去問】令和2年度 第12問(国際経営)
問題
Q.C.A.バートレットとS.ゴシャールは、本国の本社と海外拠点間との分業関係や各拠点間の統合のあり方を基軸として、国際的に展開する企業の経営スタイルを、インターナショナル、グローバル、トランスナショナル、マルチナショナルの4 つに分類している。
これら4 つの類型の基本的な特性は、それぞれ次のようにまとめられる。
【a】
資産や能力は本国に集中して、その成果は世界規模で活用される。海外拠点は本国の本社の戦略を忠実に実行する。知識は本国で開発・保有される。
【b】
コア・コンピタンスの源泉は本国に集中するが、その他は分散される。海外拠点は本社の能力を適用し、活用する。知識は本国で開発され、海外拠点に移転される。
【c】
資産や能力は各国の拠点に分散されるとともに、本社を含む各国の拠点は相互依存的であり、専門化されている。知識は各国の拠点で共同で開発され、世界中で共有される。
【d】
資産や能力は各国の拠点に分散され、それぞれ自己充足的に活動する。海外拠点は現地の機会を感知して、活用する。知識は各国の拠点で開発・保有される。
上述のa、b、c、dは、それぞれインターナショナル、グローバル、トランスナショナル、マルチナショナルのいずれに該当するか。それらの組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア a:インターナショナル b:マルチナショナル c:グローバル d:トランスナショナル
イ a:グローバル b:インターナショナル c:トランスナショナル d:マルチナショナル
ウ a:グローバル b:トランスナショナル c:マルチナショナル d:インターナショナル
エ a:トランスナショナル b:グローバル c:インターナショナル d:マルチナショナル
オ a:マルチナショナル b:グローバル c:インターナショナル d:トランスナショナル
解答・解説
正解:イ
バートレットとゴシャールによる「IRフレームワーク」の用語に関する設問である。a(グローバル)とd(マルチナショナル)は正反対であるため、ここで判断できます。また、c(トランスナショナル)は、グローバル統合、ローカル適応性ともに高い形態であることを覚えておきましょう。
【過去問】令和4年度 第11問(国際経営)
問題
Q.企業が海外に進出する際の形態に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
完全子会社を新設し、海外市場に進出する形態をブラウンフィールドと呼び、1980 年代に日本企業が海外に進出するとき、この方法が多用された。
【イ】
企業が他の国の会社を買収することをクロスボーダー企業買収と呼び、海外進出形態の中で最も時間のかかる参入方法である。
【ウ】
戦略的提携による海外進出とは、提携に参加するすべての企業が出資をした上で、進出国のパートナーと進出国で事業を行うことである。
【エ】
ライセンス契約で海外進出をする場合、契約が失効した後、ライセンシーがライセンサーの競合企業となるリスクがある。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。選択肢の進出形態は「グリーンフィールド」と呼ばれるため、不適切です。試験では判断できない可能性が高いため保留して、他の選択肢を見るようにしましょう。
イ:不適切。前半のクロスボーダー企業買収の記述は正しいですが、最も時間のかかる参入方法ではない(買収の目的は時間をお金で買うこと)ため、不適切です。
ウ:不適切。戦略的提携とは、企業の独立性を維持したつながりであり、出資を条件としないため、不適切です。
エ:適切。記述の通りです。
【過去問】平成30年度 第13問(国際経営)
問題
Q.わが国の企業が東南アジアの新興国に進出する場合に考慮すべき戦略的な課題に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
海外戦略の一環としてリバースイノベーションを展開するには、現地のニーズに適合的な製品の開発能力が鍵になるので、研究開発機能の本国への統合が必要である。
【イ】
現地市場のボリュームゾーンで、売上を伸ばしている模倣部品を組み込んだ現地企業の廉価品に対抗するためには、自社の高性能部品を組み込んだ高価格な高機能製品を現地生産しなければならない。
【ウ】
電子製品や自動車などでは現地生産の進展にともなって系列を超えた域内取引が拡大しているので、日系サプライヤーにとっては現地での開発力や柔軟な生産対応力の強化が重要になる。
【エ】
東南アジアへの進出では海外直接投資による資産の所有が市場の成長への対応を鈍くするので、現地生産による内部化を避けてライセンシングによる生産委託を選択しなければならない。
【オ】
輸出代替型の東南アジア進出では、現地子会社で売れ筋の量産品の生産能力を高めることができれば、顧客密着を狙ったマスカスタマイゼーションを実現できる。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。リバースイノベーションを展開するには、現地に研究開発機能を移譲していく必要があるため、不適切です。
イ:不適切。自社の高性能部品を組み込んだ高価格な高機能製品を現地生産しても、廉価品の価格と競争できないため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:不適切。市場の成長への対応を早くするには、海外直接投資による内部化が効果的であるため、不適切です。
オ:不適切。マスカスタマイゼーションは「大量生産を前提として、顧客要望を充たす生産システム」であるため、量産品の生産能力を高めただけでは実現できないため、不適切です。
【過去問】平成29年度 第13問(国際経営)
問題
Q.世界的に展開する企業にとって、本国親会社と海外子会社との関係は重要となる。グローバルな統合の必要性と現地市場への適応の必要性を軸にした多国籍企業の戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
規模の経済が作用し、現地市場への適応の必要性が低い製品を提供する企業では、通常、本国親会社のリーダーシップで、各国の子会社の能力を最大限に発揮させ現地向けの製品を開発して全体の効率性を高める。
【イ】
グローバルな統合の必要性は低く、現地市場への適応の必要性は高い製品を提供する企業では、通常、全社方針のもと複数の国に共通する製品需要を吸い上げて集中的に生産拠点と販売拠点を整備し製品を供給する戦略をとる。
【ウ】
現地の習慣や文化への配慮の必要性は高く、グローバルな統合の必要性は低い製品を取り扱う企業では、通常、海外子会社が独自に製品開発やマーケティングに取り組み、現地の需要の変化に即座に対応する戦略がとられる。
【エ】
製品開発の固定費が大きく、各国の認可と文化的理解の必要性が高い製品を取り扱う企業では、通常、全社方針のもと集中的に生産拠点と販売拠点を整備し製品を供給することで全体の生産性を高める。
【オ】
製品開発の固定費が大きく、現地の習慣や文化への配慮の必要性が低い製品を取り扱う企業では、通常、国ごとに対応した製品開発、マーケティング、生産の戦略をとることで、現地のニーズにきめ細かく対応する。
解答・解説
正解:ウ
ア:不適切。規模の経済が作用し、現地市場への適応の必要性が低い製品を提供する場合は、グローバルで製品開発・生産したほうが効率的であるため、不適切です。
イ:不適切。
現地市場への適応の必要性は高い製品を提供する場合は、現地化に権限を委譲し、生産と販売を実施したほうが効率的であるため、不適切です。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:不適切。各国の認可と文化的理解の必要性が高い製品を取り扱う場合は、現地化に権限を委譲して進めたほうが効率的であるため、不適切です。
オ:不適切。現地の習慣や文化への配慮の必要性が低い製品を取り扱う場合は、グローバルで製品開発・マーケティング・生産したほうが効率的であるため、不適切です。
今日のおさらい
今回は「国際経営(グローバル戦略)」を勉強しました。
多国籍企業が取る戦略の名称は、出題時に柔軟に対応できるようにしておきましょう。
国際経営(グローバル戦略)
- グローバルマーケティングは、「国内マーケティング」→「輸出マーケティング」→「国際マーケティング」→「多国籍マーケティング」→「グローバルマーケティング」の発展段階がある。
- 多国籍化した企業が採用する戦略には、世界を単一市場と捉えて最適を図る「グローバル戦略」と、世界を独立した市場の集合体と捉えて現地ニーズに対応する「マルチドメスティック戦略」がある。
- 国際経営の主要キーワードとして、進出先の政治・社会・経済等の環境変化による「カントリーリスク」、文化の違いを連結し、統合していく「異文化インターフェイス」、進出の実現可能性を事前調査する「フィージビリティスタディ」、多様な人材を活用し、能力を最大限発揮できる機会を提供し、価値創造につなげる「ダイバーシティ経営」がある。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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