1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「組織形態(機能別組織、事業部制組織)」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
【組織論】
・経営組織の形態と構造
・経営組織の運営
・人的資源管理
・労働関連法規
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 静態的組織、動態的組織
- 機能別組織(職能別組織)
- 事業部制組織
- プロフィットセンター、コストセンター
組織形態の全体図
今回から具体的な組織形態を勉強していきますが、まずは全体像を理解しましょう。
組織形態には、機能別組織と事業部制組織からなる「静態的組織」と、事業部制組織の欠点を補う流れで登場した「動態的組織」があります。
1次試験では各組織の特徴を理解しておけば大丈夫ですが、2次試験では機能別組織、事業部制組織、マトリクス組織のメリット・デメリットを書けるようになっている必要があります。
機能別組織(職能別組織)
機能別組織とは「製造、営業、人事といった個々の機能を機能部門として単体化した組織」で、中小企業で最も多い形態です。1次試験では「職能別組織」として出題されることがあります。
機能別に部門化されており、部門間の調整はトップマネジメントが実施します。
トップマネジメントに権限が集中する機能別組織で、現場には「日常的な業務」に関する権限が委譲されます。
機能別組織のメリットは以下になります。
機能別組織のメリット
- 分業化することで役割分担が明確になる
- 各部門の専門性が発揮できる
- 規模の経済を発揮できる(知識やスキルが共有できる)
- トップダウンで組織の統制が取りやすい(意思決定がトップに集中しているので)
一方、機能別組織のデメリットも覚えておきましょう。
機能別組織のデメリット
- トップの負担が大きく、トップの意思決定に遅れが発生しやすい
- 機能部間のセクショナリズムで、部門間の連携が十分とれなくなる
- 全社的なマネジメントができる人材が育ちにくい
- 各部の利益責任が不明確となる
機能別組織は、規模が拡大するにつれて、トップマネジメントの負担が増大し、意思決定の遅れが生じたり、市場の多様化に迅速に対応できなくなるなどの問題が発生します。
その解決策として、事業部制組織に移行していくことになります。
事業部制組織
事業部制組織とは「組織を製品・地域・顧客の観点から分別した分権組織」をいいます。
事業部に分ける基準には「製品」「地域」「顧客」の3つがあります。各事業部のもとに製造、営業といった機能別の部門がそれぞれ配置される形態になります。
事業部制組織では、現場には「短期的な意思決定」に関する権限が移譲され、各事業部は「PL(損益)」について責任を負うことになります。
独立採算制による独自の収入と費用を持ち、PL(損益)に責任を負う組織単位を「プロフィットセンター(利益責任単位)」と呼びます。
一方、コストだけが集計され、収益に対する責任を持たない組織単位を「コストセンター」と呼びます。上記の図では、総務・人事・広報が該当します。
事業部制組織のメリットは以下になります。
事業部制組織のメリット
- トップマネジメントは全社的意思決定に専念できる
- 現場の状況に応じた対応を迅速に取ることができる
- 下位管理者のモチベーションが向上する
- 次世代の経営者の育成がしやすい
- 利益責任が明確化しやすい
一方、事業部制組織のデメリットも覚えておきましょう。
事業部制組織のデメリット
- 機能や設備が重複し、コストアップにつながりやすい
- 経営ビジョンよりも短期的な判断になりやすい
- 事業部間のセクショナリズムが生じやすい
- 事業部間のコンフリクトが生じやすい
2次試験では、(1)機能別組織によるデメリットが顕在化しているため、事業部制組織のメリットを活かすために組織変更する、(2)事業部制組織にすると資源分散するので、機能別組織のメリットを活かして活動する
などの設問パターンが多いため、機能別組織と事業部制組織は連動させて理解するようにしましょう。
【過去問】平成22年度 第11問(組織形態)
問題
Q.企業の規模や経営戦略、環境条件などさまざまな要因によって、組織が処理すべき情報の量や質が異なるため、それに応じて機能別部門組織(functional organization)、事業部制組織(divisional organization)、マトリックス組織(matrix organization)など、異なる組織構造をデザインする必要がある。これに関して、下記の設問に答えよ。
(設問1)
機能別部門組織に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
機能別部門組織では、各機能部門が専門機能を基礎に編成されているため、全社的なコントロールを担当する次世代のトップマネジメントを養成することが難しい。
【イ】
機能別部門組織では、高度な分権化が進展しているため、トップマネジメントへの集権化の程度は低い。
【ウ】
機能別部門組織では、それぞれの部門が異なる機能を担当しているため、変化する環境でも部門間コンフリクトが発生する可能性は低い。
【エ】
機能別部門組織の利点は、機能部門ごとの専門化の利益を最大限に発揮できる点にあり、その分、規模の経済は犠牲になる。
【オ】
機能別部門組織は、単一製品一市場分野に進出している企業に採用される傾向が高く、あまり大規模な操業には適さない。
解答・解説
正解:ア
ア:適切。選択肢の通りです。
イ:不適切。機能別組織は、トップマネジメントに権限が集中した集権的組織であるため、不適切です。
ウ:不適切。機能別組織は、部門間で連携が十分とれない可能性が高く、部門間コンフリクトが発生する可能性が高いため、不適切です。
エ:不適切。機能別組織は、規模の経済性を志向する組織であるため、不適切です。
オ:不適切。前半は正しく、大規模な操業にも適するため、不適切です。
問題
Q.企業の規模や経営戦略、環境条件などさまざまな要因によって、組織が処理すべき情報の量や質が異なるため、それに応じて機能別部門組織(functional organization)、事業部制組織(divisional organization)、マトリックス組織(matrix organization)など、異なる組織構造をデザインする必要がある。これに関して、下記の設問に答えよ。
(設問2)
事業部制組織に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
事業部制組織では、各事業部は独立採算のプロフィットセンターとして管理されるために、複数の事業部にまたがる統合的な製品の開発などは遅れがちになる。
【イ】
事業部制組織では、各事業部を評価する統一的な基準がないために、本社機構のオーバーヘッドコストが高くなる傾向がある。
【ウ】
事業部制組織では、本社と事業部の間に擬似的な資本市場が存在することになり、一般に各事業部の限界利益率に応じて予算配分が行われる。
【エ】
事業部制組織では、複数の製品-市場分野に進出している企業で採用される傾向が高く、事業部間の高度な連携をとることが容易になる。
【オ】
事業部制組織は、本社の情報処理負担が軽減されるとともに、事業戦略に関する権限が本社に集中するために、事業部の再編成や既存事業の融合を通じた新規事業を創造しやすくなる。
解答・解説
正解:ア
ア:適切。選択肢の通りです。
イ:不適切。事業部制組織は、本社機構のオーバーヘッドコスト(各事業部を管理するための間接費)が高くなる傾向はありますが、各事業部をROIなどの統一基準で評価することが多いため、不適切です。
ウ:不適切。事業部制組織は、本社と事業部の間に擬似的な資本市場が存在するとは限らないため、不適切です。
エ:不適切。事業部制組織は、事業部間のセクショナリズムが生じやすく、高度な連携が難しいため、不適切です。
オ:不適切。事業部制組織は、事業戦略に関する権限を事業部に移譲されるため、事業部の再編成や既存事業の融合を通じた新規事業を創造しにくくなるため、不適切です。
【過去問】令和4年度 第13問(組織形態)
問題
Q.経営組織の形態と構造に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
事業部制組織では事業部ごとに製品-市場分野が異なるので、事業部を共通の基準で評価することが困難なため、トップマネジメントの調整負担が職能部門別組織に比べて大きくなる。
【イ】
職能部門別組織は、範囲の経済の追求に適している。
【ウ】
トップマネジメント層の下に、生産、販売などの部門を配置する組織形態が職能部門別組織であり、各職能部門はプロフィットセンターとして管理される必要がある。
【エ】
マトリックス組織では、部下が複数の上司の指示を仰ぐため、機能マネジャーと事業マネジャーの権限は重複させておかなければならない。
【オ】
命令の一元化の原則を貫徹する組織形態がライン組織であり、責任と権限が包括的に行使される。
解答・解説
正解:オ
ア:不適切。トップマネジメントの負担は職能別組織(=機能別組織)よりも事業部制組織の方が小さいため、不適切です。
イ:不適切。職能別組織は、範囲の経済よりも規模の経済を志向しているため、不適切です。
ウ:不適切。前半は正しいですが、後半は間接部門はコストセンターの役割になるため、不適切です。
エ:不適切。マトリクス組織は、機能マネジャーと事業マネジャーの権限は、別々に持たせることになるため、不適切です。
オ:適切。選択肢の通りです。
【過去問】令和2年度 第17問(組織形態)
問題
Q.ある時点で特定の組織形態を採用している企業でも、経営戦略に従って新たな組織形態に移行していくべき場合がある。その場合、単純な発展段階を経るというよりも、経営者の意思決定によって、異なる経路をたどる可能性がある。J.R.ガルブレイスとD.A.ネサンソンは、経営戦略とそれによって採用される組織形態の可能な組み合わせを、組織の発展段階モデルとして定式化した。
下図は、彼らがモデル化した企業組織の発展過程を図示したものである。図の□は組織形態を、→は経営戦略をそれぞれ表している。図の中のA~Dに当てはまる経営戦略の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
〔解答群〕
ア A:関連多角化 B:垂直統合 C:非関連多角化 D:非関連事業の買収
イ A:垂直統合 B:関連多角化 C:規模の経済の活用 D:非関連事業の買収
ウ A:内部成長の強化 B:関連多角化 C:垂直統合 D:非関連多角化
エ A:非関連多角化 B:規模の経済の活用 C:垂直統合 D:内部成長の強化
解答・解説
正解:イ
解説:単一職能別組織から集権的職能部門に移行する可能性には「垂直統合」「内部成長の強化」が候補として考えられます。一方、世界的複数事業部制組織から世界的職能部門制組織に移行する可能性は「規模の経済の活用」、世界的複数事業部制組織から世界的持株会社に移行する可能性は「非関連事業の買収」と想定されるため、イが正解と導くことができます。
今日のおさらい
今回は「組織形態(機能別組織、事業部制組織)」を勉強しました。
1次試験、2次試験ともに、各組織のメリット・デメリットは頻出ですので、しっかり理解しておきましょう。
組織形態(機能別組織、事業部制組織)
- 組織形態には、機能別組織と事業部制組織からなる「静態的組織」と、事業部制組織の欠点を補う流れで登場した「動態的組織(カンパニー制組織、マトリクス組織、プロジェクト組織など)」がある。
- 機能別組織とは「個々の機能を機能部門として単体化した組織」。分業化による生産性向上、トップダウンでの迅速な行動がとりやすいメリットがあるが、トップの負担増大による意思決定の遅れ、部門間の連携不足、後継経営者の育成が難しいデメリットがある。
- 事業部制組織とは「製品・地域・顧客の観点から分別した分権組織」。現場で意思決定の迅速化が図られ、トップは全社的意思決定に専念できるメリットがあるが、資源重複によるコストアップ、短期的な判断になりやすい、事業部間のコンフリクトが発生しやすいなどのデメリットがある。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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