1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「組織文化」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
【組織論】
・経営組織の形態と構造
・経営組織の運営
・人的資源管理
・労働関連法規
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 組織文化
- 組織文化の類型(クラン文化、アドホクラシ―文化、マーケット文化、ヒエラルキー文化)
- 組織コミットメント
組織文化
経営者の理念に共感し、多くの人が組織に集まると、そこには組織文化が生まれます。
組織文化とは、「組織メンバー間で共有された価値や信念、思考様式や行動規範」のことを言います。
強い組織文化は一体感を高める一方で、同調圧力(斉一性の圧力)を通じて、組織の硬直化、思考様式の均質化をもたらす。
組織文化が形成される要因には、以下の5つがあります。
組織文化の形成要因
- 近接性:メンバーが物理的に近くにいる
- 同質性:メンバーの性格や特性が似ている
- 相互依存性:•メンバーが相互に依存しあう関係にある
- コミュニケーション・ネットワーク:情報が全体に行き渡っている
- 帰属意識の高揚:研修等を通じて組織への忠誠心を高める機会がある
強固な組織文化を形成するには、フェイスツーフェイスのコミュニケーションを図ったり、定期的に経営陣の想いを伝えていくことで、メンバーの関心を高めて、一体感を醸成していくことが必要になります。
組織文化のメリット・デメリットも合わせて理解しておきましょう。
組織文化のメリット
- 組織に強い一体感・使命感を醸成できる
- 従業員間のコミュニケーションが円滑化する
- 目的の共有がしやすくなる
組織文化のデメリット
- 固定化(組織の硬直化)
- 過去の成功体験に依存し、組織変革の必要性を認識しても行動できない
- 画一化(思考様式の均質化)
- 従業員の考えが近く、革新的なアイデアが生まれにくい
このような固定化、画一化を打破するために、組織変革や組織学習が重要になります(次回勉強します)。
なお、キャメロンとワインは、組織文化を「柔軟性⇔安定性」「外向的⇔内向的」の2軸から4つのタイプに類型化しています。
組織文化の類型
- アドホクラシ―(企業家的)文化
- 柔軟性が高く(=不確実性が高い)、外向的な組織文化
- 創造性を志向し、イノベーター的な創造性を持つリーダーが求められる
- クラン(仲間的)文化
- 柔軟性が高く(=不確実性が高い)、内向的な組織文化
- 協調を志向し、チーム内の強調を重視するリーダーが求められる
- ハイアラーキー(官僚的)文化
- 安定性が高く、内向的な組織文化
- 組織の統制を志向し、規則や手続きを重視したリーダーが求められる
- マーケット(市場的)文化
- 安定性が高く、外向的な組織文化
- 競争を志向し、現実主義的で競争を推進するリーダーが求められる
組織コミットメント
組織文化の関連キーワードとして「組織コミットメント」があります。
これは、組織に所属するメンバーの組織に対する帰属意識の強さのことで、以下の3つの種類があります。
組織コミットメントの種類
- 感情的コミットメント
- 「この会社が好きだ」といった組織に対する愛着や同一化
- 存続的コミットメント
- 「辞めたらまた人間関係が…」など、組織を去るときの損得勘定から組織に留まること
- 規範的コミットメント
- 「組織には尽くすべき」といった理屈抜きにコミットすべきという忠誠心
【過去問】平成27年度 第21問(組織文化)
問題
Q.組織文化の機能やその変容に適したメカニズムは、組織の発展段階に応じて異なる。組織文化の機能と変容メカニズムに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
垂直統合や多角化を通じて組織が成長初期段階に達すると、下位組織文化が発達し始め、組織文化は組織のアイデンティティーの源泉としての機能を持つようになる。
【イ】
成熟段階の組織において、組織文化がイノベーションを妨げるものに転嫁した場合、スキャンダルや神話の構築を使った組織文化の変革手法が有効になる。
【ウ】
創業者やその家族が支配している創業段階の組織では、組織文化を変革するためには、組織開発などの手法が効果的である。
【エ】
組織の創業段階では、組織文化はまだ明確ではなく十分機能しないため、組織構造面での精緻な統制が必要である。
【オ】
組織が成熟段階に達し、パラダイム・レベルでの深い組織文化の変革が必要な場合には、首脳陣の大量交代や組織構造の再編成などの方法が有効である。
解答・解説
正解:オ
ア:不適切。後半は正しいですが、垂直統合や多角化を通じて組織が成長初期段階ではなく、もう少し後の段階(発達段階)であるため、不適切です。
イ:不適切。試験会場では判断しにくい可能性がありますが、スキャンダルよりは「リッチな情報」のほうが組織変革に向いているため、不適切です。
ウ:不適切。組織開発が有効になるのは、創業段階よりも後の段階であるため、不適切です。
エ:不適切。創業段階では、組織文化の推進力となるのは創業者の個人的な思考様式であるため、不適切です。
オ:適切。選択肢の通りです。
【過去問】令和2年度 第10問(組織文化)
問題
Q.老舗と呼ばれる中小企業Z社は、重代で受け継ぐ製法による生産品を中心に事業を営むファミリービジネスである。創業以来の価値観や行動規範を重視して独自の組織文化を形成し、50 %を超える株式を保有する創業家出身の四代目社長と、創業者一族が中心となって従業員との一体感を重視している。二代目社長の代からは、新しい品目や製造プロセスの改良に関して外部から技術を導入してきた。①歴史的経緯で外部から導入した製造プロセスの改良技術に基づき、技術関係部門同士の連携による問題解決は定型化されて続いている。
創業以来、危機的状況を何度も乗り切ってきたが、近年、過去にZ社を危機から救った伝統的な事業戦略が機能しなくなった。②創業以来の企業の価値観は、現在も社員の間で共有されているが、伝統的な価値観に基づく戦略による過去の成功が現在の戦略を機能させていない根本的原因となっていることを誰も認めようとはしな
い。
経営の意思決定は、創業家出身の社長を中心として行われてきた。最近、③役員や生え抜きの部門長と違和感なく全員一致で戦略的に意思決定したが、建設的なアイデアや現実的な解決策は顧みられなかった。
Z社に関する下線部①~③の記述と、それらを説明する以下のa~cの語句の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
a 経路依存性
b グループ・シンク
c 組織文化の逆機能
〔解答群〕
ア ①-a ②-b ③-c
イ ①-a ②-c ③-b
ウ ①-b ②-a ③-c
エ ①-b ②-c ③-a
オ ①-c ②-a ③-b
解答・解説
正解:イ
①は歴史的経緯とあるので「経路依存性」が入ります。②は組織文化のデメリットである「画一化(思考様式の均質化)」による弊害なので、「組織文化の逆機能」が入ります。③は個人よりも集団で意思決定したほうが短絡的な決定になりやすい「グループ・シンク」が入ります。
今日のおさらい
今回は「組織文化」を勉強しました。
組織文化のメリット・デメリット、4つのタイプを理解しておきましょう。
組織文化
- 組織文化とは「組織メンバー間で共有された価値や信念、思考様式や行動規範」のこと。強い組織文化は一体感を高める一方で、同調圧力(斉一性の圧力)を通じて、組織の硬直化、思考様式の均質化をもたらす。
- 組織文化には、「柔軟性⇔安定性」「外向的⇔内向的」の2軸から(1)アドホクラシ―文化(創造性)、(2)クラン文化(協調)、(3)ハイアラーキー文化(統制)、(4)マーケット文化(競争)に分かれる
- 組織コミットメントとは「組織メンバーの組織に対する帰属意識の強さ」であり、感情的コミットメント(愛着)、存続的コミットメント(損得勘定)、規範的コミットメント(理屈抜き)がある。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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