企業経営理論【30】組織活性化

1回「20分」で、中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「組織活性化」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

【組織論】

・経営組織の形態と構造
経営組織の運営
・人的資源管理
・労働関連法規

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • 組織活性化
  • 組織文化の変革
  • 組織学習、低次学習(シングルループ学習)、高次学習(ダブルループ学習)
  • 組織学習サイクル(役割制約的学習、傍観者的学習、迷信的学習、曖昧さのもとでの学習)
  • SECIモデル(共同化、表出化、連結化、内面化)
  • 両利きの経営
  • 人材のダイバーシティ
目次

組織活性化の方法

組織が大きな環境変化に直面した場合、環境変化に対応するために、組織を変革して活性化していく必要があります。

組織活性化の主な手法には、以下があります。

組織活性化の主な手法

  • 組織文化の変革
    • トップマネジメントの変革。全社としての取り組み
  • 組織学習(高次学習)
    • ミドルマネジメントの変革。中間層に権限を付与して組織を変える
  • 人材のダイバーシティ
    • ロワーマネジメントの変革。人材レベルでの変革を図る

では、それぞれについて勉強していきましょう。

組織文化の変革

成熟期の企業、組織のライフサイクルの「公式化段階」にある組織では、組織文化が硬直化し、環境変化に対応できなくなっている場合があります。

そのような場合、組織を活性化させるために、組織文化の変革が必要になってきます。

組織文化を変革させるには、以下の3つのステップが必要です。

組織文化の変革プロセス

  • (1)変革の必要性を認識する
  • (2)変革案を創造する
  • (3)変革を実施して定着させる

(1)変革の必要性を認識する

最初のプロセスは、組織文化の変革の必要性を認識するステップです。

変革の必要性を認識するには、以下の3点が重要です。

組織文化の変革の必要性を認識する

  • 組織スラックがある
  • リッチな情報を入手する(未加工の生データで、多様な解釈を導き出せる情報)
  • コンフリクトを活用する

組織スラックとは「組織における余裕資源」をいいます。

組織スラックがあると、イノベーション遂行のための資源になる、新規行動案の探索に対してリスク選好的(リスク志向的)になりやすいなどのメリットがあります。

また、リッチな情報を入手することも重要です。

リッチな情報とは「顧客や従業員の声のなど、未加工の生データで、多様な解釈を導き出せる情報」のことを言います。

リッチな情報を入手することで、部署間のコンフリクトが発生することがありますが、コンフリクトを活用することで、組織を変革する必要性を認識させていくことが重要です。

(2)変革案を創造する

組織文化の変革の必要性を認識した後は、変革案を創造します。

変革案を創造する過程に影響を与える条件には、以下があります。

変革案の創造過程に影響を与える条件

  • 多様な領域・背景を持つ人々からなる自律的組織単位を編成する
  • フェイス・トゥ・フェイスの対話で、暗黙知を組織に共有する取り組みがある
  • 各メンバーが重複した情報を持つこと(情報の冗長性)

多様な領域・背景を持つ人々を集めて、対話を通じて議論を活性化させる」ことがポイントです。

(3)変革を実施して定着させる

最後のプロセスは、変革を実施して定着させることです。

変革には抵抗が生じます。その抵抗が生じる理由には、以下があります。

変革への抵抗が生じる理由

  • 既得権益が失われる
  • 現状を維持しようとする力が働く
  • 有能性の罠(既にある程度の水準を満たしており、変革の必要性を感じない)
  • 埋没コストの発生(これまで投資してきたものが無駄になる)

変革への抵抗を克服する手段としては、以下が重要になります。

変革への抵抗を克服する手段

  • 大きな犠牲者を変革のデザイン段階で参画させ、犠牲者ではなく、設計者と認識させる
  • 新しい組織に適応するための十分な教育・訓練の時間と機会を提供する
  • 従業員と十分なコミュニケーションを取る
  • 変革を支持する従業員にボーナス、給与、昇進などの報酬を与えて動機付けする
  • プロジェクトチームを構成し、移行プロセスを管理する

なお、組織の心理的安全性(自分の考えや気持ちを誰にでも安心して発言できる状態)が高い場合は、抵抗が生じにくくなる点も覚えておきましょう。

組織学習

組織学習とは「組織やメンバーが新しい知識を獲得する活動」をいいます。

組織学習には、「低次学習(シングルループ学習)」と「高次学習(ダブルループ学習)」があります。組織活性化には「高次学習(ダブルループ学習)」が必要になります。

組織学習の種類

  • 低次学習(シングルループ学習)
    • 既存のフレームワークの中で、継続的な改善を加えていく学習
    • 一定の価値観のもとでの行動を繰り返すことによって学習を供する漸進的な活動
  • 高次学習(ダブルループ学習)
    • 既存のフレームワークの枠組みを超えて、組織全体を根本的に変革していく学習
    • 高次学習の質は「知識の獲得能力」「組織の吸収能力」に依存する
    • 吸収能力は、既存研究や応用研究への継続投資によって高まる

以下の図で、低次学習と高次学習の関係を理解しておきましょう。

高次学習(ダブルループ学習)の具体的な方法も、理解しておきましょう。

高次学習(ダブルループ学習)の具体的な方法

  • ミドル層に権限移譲する
  • 様々な視点を持った参加者を活用する(人材のダイバーシティ、オープンイノベーション)
  • 過程主義(プロセス重視)から成果主義(結果重視)への評価体系を変更する
  • 成功・失敗経験のデータベース化と共有を行う

組織学習サイクル

組織学習は、「組織学習サイクル」と呼ばれる個人の学習を通じて行われます。

「個人の信念・知識→個人の行動→組織の行動→環境の変化→個人の信念・知識→…」の流れで個人の学習が行われますが、このサイクルを断絶する(A)~(D)が発生することで、組織学習が阻害されることになります(=組織学習の失敗)。

組織学習サイクルの断絶

  • 【A】役割制約的学習
    • 与えられた役割や手続きの制約により、行動に移せない状態
  • 【B】傍観者的学習
    • 個人の学習成果が組織の行動に活かされず、個人が傍観者の状態
  • 【C】迷信的学習
    • 組織の行動とそれが環境に与える因果関係がわかりにくい状態
  • 【D】曖昧さのもとでの学習
    • 環境の変化が起きても、個人には何が生じたか解釈できない状態

ナレッジマネジメント、SECIモデル

ナレッジマネジメントとは「ITなどを活用して、ナレッジを組織に共有・蓄積し、企業の競争力を向上させる経営手法」を言います。

組織にナレッジを共有・蓄積・発展させていく方法に「SECIモデル」があります。

SECI(セキ)モデルとは「野中都次郎らが提唱した、知識や経験を共有し、新たな発見を得るための枠組み」をいいます。

SECIモデルの4ステップ

  1. 共同化(Socialization) : 個人の持つ暗黙知を共同体験などで暗黙知を共有する
  2. 表出化(Externalization): 暗黙知を形式知に転換する
  3. 連結化(Combination): 洗い出された形式知を結合して、新たな形式知を創出する
  4. 内面化(Internalization): 形式知を個人が実践することで、暗黙知として体得する

なお、経営者の主観的な思い、当面必要のない仕事の共有なども、「共同化」として知識創造に貢献する点を覚えておきましょう。

両利きの経営

両利きの経営とは「新たな事業機会の発掘である「探索」と、既存事業の深堀である「深化」をバランスよく行うべきという考え方」のことを言います。

「ラディカルイノベーション(破壊的イノベーション)」と「インクリメンタルイノベーション(漸進的イノベーション)」のバランスが大事であるということです。

両利きの経営の成功要因ついても、理解しておきましょう。

両利きの経営の成功要因

  • 戦略的な意図を明確化する(探索と深化の必要性を正当化する)
  • 経営陣が新規事業の育成と資金提供にコミットする
  • 新規事業が独自の組織運営を行えるよう、既存の深化型事業から十分な距離を置く
  • 新規事業と既存の深化型事業にまたがる共通のビジョン、価値観、文化を醸成する

経営陣の明確な意思・ビジョンのもと、「新規事業が独自に動ける組織にしつつも、既存事業と共通のビジョン、価値観を揃えることで一体感を作り出す」と理解しておくといいでしょう。

人材のダイバーシティ

多様な価値観や考え方を持った人材が組織に集まると、新たな顧客ニーズに対して迅速な対応が可能となり、ビジネス機会が拡大します。

人材のダイバーシティとは「多様な人材の活用を意味します。

具体的には、「外部人材の採用」と「内部人材の活用」の両面を意識することが大事です。

人材のダイバーシティ

  • 外部人材の採用
    • 既存の採用方法とは異なる人材を採用する
  • 内部人材の活用
    • 既存の人事制度を見直す (育児・介護休暇制度、アファーマティブ・アクションの導入など)

アファーマティブ・アクション(ポジティブ・アクション)とは、マイノリティの置かれている状況を改善しようという取り組みです。

女性比率が少ない部署で、女性に絞った採用活動を行うなどがあります。

【過去問】平成26年度 第21問(組織変革)

問題

Q.変化する環境に効果的に適応していくためには、組織を戦略的に変革することが必要となることがある。一般に戦略的に組織変革を進めていくプロセスを、組織変革の必要性を認識すること、組織変革案の創造、組織変革の実施・定着という段階に分けて考えることができる。戦略的な組織変革のプロセスについて、以下の設問に答えよ。

(設問1)
文中の下線部①の組織変革の必要性を認識することに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
組織の現状を客観的に診断するために、組織内の情報に頼らず、外部環境の調査機関やコンサルタントなどから情報を収集する。

【イ】
組織変革を進めている間にも現在の業務を遂行しなければならないため、中間管理職や現場管理者を巻き込まないよう配慮し、大局観をもったトップマネジメントが現状を診断する必要がある。

【ウ】
組織メンバー間やコンサルタントとの間で、フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションを通じて、できるだけ問題が生じている現場の生のデータを収集し、予期されなかった事態についての情報にも耳を傾ける必要がある。

【エ】
変革の認識を共有する場面では、様々なコンフリクトが顕在化した場合、円滑な変革プロセスを妨害する可能性があるため、速やかに政治的な処理をしていく必要がある。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。従業員の声のなどの組織内のリッチな情報も重要になるため、不適切です。

イ:不適切。多様な領域・背景を持つ人々を集めて、対話を通じて議論を活性化させるため、不適切です。

ウ:適切。リッチな情報の説明に合致するため、適切です。

エ:不適切。コンフリクトを活用することで、組織を変革する必要性を認識させていくことが重要であるため不適切です。

(設問2)
いかに優れた変革案が作成されても、実際にその変革を実施し、定着させる過程で様々な混乱や抵抗が生じることがある。文中の下線部②の組織変革の実施・定着段階に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】
既存の組織内で権力を持っていた集団が新しい組織案ではその権力を失ってしまうことに抵抗を示す可能性があるので、そのような権力集団を排除する必要がある。

【イ】
望ましい組織変革案を支持するメンバーに対して、ボーナス、給与、昇進などの報酬を与え動機づける必要がある。

【ウ】
変革の実施段階では、非公式のコミュニケーションルートを様々なうわさや妨害情報が流れるので、非公式な情報ルートを遮断し、公式なコミュニケーションを徹底することが重要となる。

【エ】
変革を自己に有利な形で利用して権力を握ろうとする集団が登場することがあるため、混乱が収まるまで新しい組織案を提示しないようにしなければならない。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。排除するのではなく、変革のデザイン段階で参画させたほうがよいため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。非公式のコミュニケーションも活用することが大事であるため、不適切です。

エ:不適切。経営陣が新しい組織案を提示したほうが混乱が収まると想定されるため、不適切です。

【過去問】令和5年度 第23問(組織変革)

問題

Q.組織には、環境変化とそれに伴う組織変革に対して抵抗を示す側面がある。組織において変化や変革に対する抵抗が生じる理由に関する記述として、最も不適切なものはどれか

【ア】
業務プロセスを変革したとしても、それと整合するように組織構造や業績評価システムといった他のサブシステムも併せて変革しない限り、変革を元に戻す組織的な作用が働きやすいから。

【イ】
現状の資源配分パターンから最も大きな利益を得ている部門は、環境変化に伴う資源配分パターンの変革を脅威と見なし抵抗する傾向があるから。

【ウ】
支援的な組織風土によって組織の心理的安全性を高めに維持しようとする構造的慣性が組織には存在するから。

【エ】
従業員が所属する集団の規範が、変革に対する従業員の前向きな考えや行動を抑制するように作用する可能性があるから。

【オ】
従業員の思考や行動を同質化する組織社会化のプロセスが、組織の革新性を阻害する可能性があるから。

解答・解説

正解:ウ

ア:適切。業績評価システムも変わらなければ行動も変わらないため、適切です。

イ:適切。既得権益が失われる場合、変革に抵抗することになりがちなので、適切です。

ウ:不適切。支援的な組織風土によって組織の心理的安全性を高い場合は、抵抗が生じにくくなるため、不適切です。

エ:適切。集団の現状を維持しようとする力が働くと、変革に抵抗することになりがちであるため、適切です。

オ:適切。従業員の思考や行動を同質化する圧力が強いと、従来の行動を維持する圧力が強まるため、適切です。

【過去問】令和3年度 第23問(組織変革)

問題

Q.J.P.コッター(J. P. Kotter)の提唱した組織変革の 8 段階モデルによると、変革プロセスの各段階には変革を推進する場合に生じがちな独自の課題が存在し、目標とする変革を実現するために変革の推進者にはこれらの課題を克服することが求められる。
下図は、 8 段階モデルの各段階における課題を図示したものである。
図の中の空欄A~Eに入る課題の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

【ア】 
A:危機意識を高める
B:従業員の自発を促す
C:変革推進のための連帯チームを築く
D:短期的成果を実現する
E:新たな方法を企業文化に定着させる

【イ】
A:危機意識を高める
B:変革推進のための連帯チームを築く
C:新たな方法を企業文化に定着させる
D:短期的成果を実現する
E:従業員の自発を促す

【ウ】
A:危機意識を高める
B:変革推進のための連帯チームを築く
C:従業員の自発を促す
D:短期的成果を実現する
E:新たな方法を企業文化に定着させる

【エ】
A:変革推進のための連帯チームを築く
B:危機意識を高める
C:従業員の自発を促す
D:短期的成果を実現する
E:新たな方法を企業文化に定着させる

【オ】
A:変革推進のための連帯チームを築く
B:危機意識を高める
C:短期的成果を実現する
D:新たな方法を企業文化に定着させる
E:従業員の自発を促す

解答・解説

正解:ウ

組織変革の 8 段階モデルを知らなくても、組織文化の変革(組織変革)のステップである(1)変革の必要性を認識する→(2)変革案を創造する→(3)変革を実施して定着させるを理解していれば、答えられる問題です。

【過去問】平成30年度 第18問(組織学習)

問題

Q.変化が激しい環境に適応する組織にとって、組織学習を促進していくことは不可欠である。組織学習に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
シングルループ学習とは、ある目的とそれを達成するための行為の因果関係についての知識を、一度見直すことを意味する。

【イ】
組織内の人々は役割が規定され、その成果によって評価されるために、環境の変化に対応した新しい知識を獲得しても、それを直ちに個人や組織の行動の変化に反映できないことがある。

【ウ】
高い成果をもたらした組織のルーティンは、繰り返し使用することによって、より高い成果を生み出すことにつながるため、慣性の高い組織の方が長期適応する能力は高くなる。

【エ】
低次学習よりも高次学習を促進するためには、明確なコンテキストのもとで、ある行為の結果に関する大量の情報を処理し、その行為の有効性を評価する必要がある。

【オ】
部門間を緩やかな結合関係にすることによって、傍観者的学習の可能性が低下するため、組織は全体として環境の変化に適応しやすくなる。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。シングルループ学習とは、継続的な改善を加えていく学習であり、一度見直すことはダブルループ学習にあたるため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。組織学習サイクルの「役割制約的学習」に該当する行動です。

ウ:不適切。短期的には、慣性の高い組織のほうが成果が出やすいですが、環境変化が生じるときは逆機能になるため、不適切です。

エ:不適切。高次学習の推進には、 既存のフレームワークの枠組みを超える必要があり、不明確なコンテキストが必要になるため、不適切です。

オ:不適切。部門間を緩やかな結合関係にすることで、意思疎通の頻度が低下し、傍観者的学習の可能性が高くなるため、不適切です。

【過去問】令和元年度 第14問(組織学習)

問題

Q.組織学習は、一般に低次学習と高次学習に分けて考えることができる。組織学習に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
D.マグレガーのいうY理論に基づく管理手法を採用すると、低次学習が促進されるため、組織の業績は悪化する可能性が高まる。

【イ】
新たに組織に参加した組織メンバーは、組織の周縁にいるために、社会化のプロセスを通じて積極的に高次学習をさせる必要がある。

【ウ】
高次学習とは組織の上位階層で行われている学習であり、低次学習とは組織の下位階層で行われている学習である。

【エ】
組織の行動とそれが環境に与える効果の因果関係が分かりにくい場合、迷信的学習といわれる低次学習が起こりやすい。

【オ】
低次学習とは組織の成果にとって悪い影響を与える学習であり、高次学習とはより高い成果をあげるために不可欠であるため、組織メンバーに高次学習を意識させることが重要である。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。Y理論は、人は仕事が嫌いではなく、自分が設定した目的のためには自ら進んで努力するという人間観でした。X理論よりもY理論のほうが高次学習を促進するため、不適切です。

イ:不適切。新たに組織に参加した組織メンバーには、既存業務の学習である低次学習が必要になるため、不適切です。

ウ:不適切。高次学習と低次学習は、既存フレームワークの内と外に関わる学習であるため、不適切です。

エ:適切。迷信的学習とは、組織の行動とそれが環境に与える因果関係がわかりにくい状態であるため、適切です。

オ:不適切。低次学習とは組織の成果にとって悪い影響を与える学習ではないため、不適切です。

【過去問】平成29年度 第20問(知識創造理論)

問題

Q.組織的知識創造プロセスとして、野中郁次郎が提唱する SECI モデルに関する記述として、最も適切なものはどれか

【ア】 
SECI モデルにおける共同化ないし社会化(Socialization)とは、新入社員の研修活動を通じて組織文化に適応させることを意味し、組織メンバーとしての自覚を促すことによって社内での行動パターンを身につけさせることを促す。

【イ】
SECI モデルにおける表出化(Externalization)とは、新製品のイメージなどが具体的な言葉によって新製品コンセプトとして表現されていくような、社会化を通じて獲得された暗黙知を形式知に転換するプロセスを意味する。

【ウ】
SECI モデルにおける内面化(Internalization)とは、実践を繰り返すことを通じて、内面化された知識を他者にも伝えていくことを意味する。

【エ】
SECI モデルにおける連結化(Combination)とは、形式知と暗黙知が組み合わされることを通じて、すでに言語で表現されている既存の製品コンセプトが、新製品コンセプトへ転換されていくことを意味する。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。共同化とは「個人の持つ暗黙知を共同体験などで暗黙知を共有する」ステップです。選択肢の内容は内面化に関する表記であるため、不適切です。

イ:適切。表出化とは「暗黙知を形式知に転換する」ステップであるため、適切です。

ウ:不適切。「内面化された知識を他者にも伝えていくこと」は共同化であるため、不適切です。

エ:不適切。連結化とは「洗い出された形式知を結合して、新たな形式知を創出する」ことであるため、不適切です。

【過去問】令和4年度 第10問(知識創造理論)

問題

Q.野中郁次郎が提唱した知識創造理論に基づいて、組織的な知識創造を阻害したり促進したりする要因に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
経営者の主観的な思いは、組織的な知識創造を阻害する。

【イ】
組織構成員に自律性を与えると、全体の統制が取れなくなるので、組織的な知識創造は阻害される。

【ウ】
組織構成員に当面必要のない仕事上の情報を重複して共有させると、コミュニケーションに混乱が生じるので、組織的な知識創造は阻害される。

【エ】
組織構成員に複数の役割を経験させ、多面的に物事を考えさせるようにすると、組織的な知識創造は促進される。

【オ】
組織構成員間で暗黙知が共有できるまで、外部組織とはできるだけ接触させない方が、組織的な知識創造は促進される。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。経営者の主観的な思いは「暗黙知」であり、SECIモデルの循環の源であるため、不適切です。

イ:不適切。組織構成員の自律性が知識創造を妨げるとは考えにくいため、不適切です。

ウ:不適切。当面必要のない仕事上の情報を重複して共有させることは、組織的な知識創造を促進すると考えられるため、不適切です。

エ:適切。共同化から表出化のプロセスに該当すると考えられるため、適切です。

オ:不適切。外部組織からの多様な情報に接したほうが良いと考えられるため、不適切です。

【過去問】令和5年度 第11問(知識創造理論)

問題

Q.野中郁次郎が提唱した組織的知識創造理論における中核的な概念の 1 つである暗黙知に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
ある時代や分野において支配的規範となる物の見方や捉え方であるパラダイムは、手法的技能としての暗黙知である。

【イ】
暗黙知は言語化が困難な主観的知識を意味し、そのまま組織的に共有させることが容易である。

【ウ】
経験は意識的な分析や言語化によっても促進されるため、暗黙知が形式知化されると新たな暗黙知を醸成する。

【エ】
知識創造の過程は暗黙知と形式知の相互変換であり、集団における暗黙知の共有や一致が知識創造の唯一の出発点である。

【オ】
豊かな暗黙知の醸成には、経験を積み重ねることが重要で、形式知化を行わないことが推奨される。

解答・解説

正解:ウ

ア:不適切。パラダイムとは物の見方や捉え方のことを指すため、手法的技能である暗黙知とは関係がないため、不適切です。

イ:不適切。暗黙知は言語化が困難な主観的知識であるため、そのままでは組織的に共有させることができないため、不適切です。

ウ:適切。内面化の説明であるため、適切です。

エ:不適切。集団における暗黙知の共有や一致が知識創造の「唯一の出発点」ではなく、サイクルを形成するものであるため、不適切です

オ:不適切。暗黙知を形式知化して、組織に共有することが大事であるため、不適切です。

【過去問】令和5年度 第20問(組織学習サイクル)

問題

Q.J. G. マーチと J. P. オルセンが示した組織学習サイクル・モデルにおける不完全な学習サイクルに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
「曖昧さのもとでの学習」とは、組織の行動がもたらした環境の変化を適切に解釈できず、個人の信念が修正されないことを指す。

【イ】
「傍観者的学習」とは、個人が、環境の変化について傍かたわらから観察しているかのように、自らの行動を変化させないことを指す。

【ウ】
「迷信的学習」とは、個人が自ら確信している迷信に従って、自身の行動を変化させ、さらに組織の行動の変化も導こうとすることを指す。

【エ】
「役割制約的学習」とは、環境の変化によって自らの信念が変化した個人がその行動を変化させるものの、そうした変化が自らの役割の範囲内のみにとどまっていることを指す。

【オ】
不完全な学習サイクルとは、「環境の変化→個人の行動→組織の行動→個人の信念」という連結サイクルのいずれかが切断されていることを指す。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。傍観者的学習とは「個人の学習成果が組織の行動に活かされず、個人が傍観者の状態」であるため、不適切です。

ウ:不適切。迷信的学習とは「組織の行動とそれが環境に与える因果関係がわかりにくい状態」であるため、不適切です。

エ:不適切。役割制約的学習とは「与えられた役割や手続きの制約により、行動に移せない状態」であるため、不適切です。

オ:不適切。「環境の変化→個人の信念→個人の行動→組織の行動」であるため、不適切です。

今日のおさらい

今回は「組織活性化」を勉強しました。

組織学習、SECIモデルなどは頻出論点であるため、ポイントを理解しておきましょう。

組織活性化

  1. 組織が大きな環境変化に直面した場合、組織を変革して活性化していく必要がある。組織活性化の手法には、(1)組織文化の変革、(2)組織学習、(3)人材のダイバーシティがある。
  2. 組織文化の変革は、(1)リッチな情報などから変革の必要性を認識し、(2)多様な背景を持つメンバーで変革案を創造し、(3)変革を実施して定着させていく。
  3. 組織学習には、継続的な改善である「低次学習(シングルループ学習)」、既存のフレームの枠組みを超える「高次学習(ダブルループ学習)」がある。「SECIモデル」などでナレッジを共有していく一方で、「組織学習サイクル」の各段階の失敗を乗り越えていく必要がある。

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

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