企業経営理論【35】労働基準法(労働時間、休憩・休日、賃金、産前産後)

中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。

今回は「労働基準法(労働時間、休憩・休日、賃金、産前産後)」です。インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。

労働関連法規は、5問程度出題されますが、社労士試験レベルの問題もあり、勉強の費用対効果が低いです。労働基準法の基礎を抑えることに集中しましょう。

出題範囲との関係

【経営戦略論】

【組織論】

・経営組織の形態と構造
・経営組織の運営
・人的資源管理
労働関連法規

【マーケティング】

今回の学習キーワード

  • 法定労働時間、所定労働時間
  • 時間外労働の協定(36協定)
  • フレックスタイム制
  • 事業場外労働のみなし労働時間制、専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制
  • 休憩・休日、年次有給休暇
  • 勤務間インターバル制度
  • 賃金支払の5原則、割増賃金率、平均賃金

試験対策

「労働時間」と「賃金」が頻出論点です。基本的な原則と数値を理解しておきましょう。

目次

労働基準法(概要)

労働基準法とは、労働条件の最低基準を定めることで、労働者を保護する法律です。

本来、労働条件は「使用者(会社側)」と「労働者(従業員)」が対等の立場ですが、労働者のほうが経済的に立場が弱くなることが多いため、労働基準法で労働者を保護しています。

前回は、労働基準法の全般、就業規則、労働契約、解雇を勉強したので、今日は「労働時間」「休憩・休日」を勉強していきます。

労働時間・休憩・休日

労働時間

労働時間とは「労働者が使用者の指揮命令の下に置かれている時間を言います。

労働時間にあたるか否かは客観的に判断され、就業規則の労働時間がそのまま法律上も労働時間となるわけではありません。

労働基準法では、労働者保護の観点から1日および1週間の労働時間を限定しています。

法定労働時間

  • 原則
    • 1日:8時間以内(休憩時間除く)
    • 1週間:40時間以内(休憩時間除く)
  • 例外
    • 10人未満の商業・映画演劇業・保険衛生業・接客娯楽業
    • 1日:8時間以内(休憩時間除く)
    • 1週間:44時間以内(休憩時間除く)

法定労働時間とは別に、会社が独自に定める勤務時間として「所定労働時間」があります。所定労働時間は、法定労働時間の範囲内で定める必要があります。

また、労使協定の「時間外労働の協定」(36協定)を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出ることで、法定労働時間を超えて働かせることができます。

時間外労働の上限(36協定)

  • 原則
    • 1か月:45時間
    • 1年:360時間
  • 例外
    • 1か月45時間超は「年6回」まで。年間では「720時間」が上限
    • 単月の上限は「月100時間未満」(時間外労働と休日労働の合計)
    • 複数月平均で「1か月当たり80時間」(時間外労働と休日労働の合計)

フレックスタイム制

フレックスタイム制とは「清算期間を平均して、1週間の労働時間が法定労働時間を超えないという制約のもとで、始業および終業の時刻を労働者が自主的に決定できる制度」を言います。

清算期間とは、労働者が労働すべき時間が定められた期間のことで、「1か月」から「3か月」に拡充されています。清算期間が1か月を超える場合は、労働基準監督署への届出が必要になります。

また、労使協定において、1日の労働時間を決めておく必要があります。もちろん、法定労働時間を超えた時間外労働には割増賃金が適用されます。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは「実際の労働時間に関わらず、あらかじめ決めた時間を労働時間とする制度」を言います。

みなし労働時間制には「事業場外労働のみなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3つの種類があります。

みなし労働時間制

  • 事業場外労働のみなし労働時間制
    • 外回り営業など、労働時間の算定が困難な場合、所定労働時間を労働したとみなす
    • 携帯電話等で使用者の指示命令を受けながら働いたり、事業場内で指示を受けて外回りする場合は適用できない
  • 専門業務型裁量労働制
    • 新製品の研究開発(対象業務あり)など、使用者の指示が困難な業務に適用
    • 対象者の同意が必要で、労使協定を締結し、労働基準監督署への届け出が必要
    • 労使協定で定められた時間労働したとみなす
  • 企画業務型裁量労働制
    • 経営企画など、使用者が指示しない業務に適用(対象業務なし)
    • 対象者の同意労使委員会の4/5以上による決議+労働基準監督署への届け出が必要

休憩

休憩は、原則として「労働時間の途中に与える」「自由に利用させる」「一斉に与える」必要があります。

なお、労使協定を締結した場合は、一斉付与の原則を変更することができます(労働基準監督署への届け出は不要)。

休憩時間

  • 労働時間:6時間以下
    • 与える義務なし
  • 労働時間:6時間超~8時間以下
    • 45分以上
  • 労働時間:8時間超
    • 1時間以上

試験対策上、1時間以上の休憩を与える必要があるのは8時間「超」である点を覚えておきましょう。

休日

使用者は、労働者に「毎週少なくとも1日」の休日を与えることが定められています(原則)。

ただし、例外として、4週間を通じて4日以上の休日を与える「変形休日制」も認められています。

なお、休日に関連して、「休日の振替」と「代休」の違いを理解しておきましょう。

休日の振替とは、あらかじめ休日と定められた日を労働日とし、他の労働日を休日とすることを言います。休日労働の割増賃金の支払いは不要です。

代休とは、事前に知らせることができず、急遽休日労働させた後に、その代償として休日を与えることを言います。この場合は、休日労働としての割増賃金の支払いが必要になります。

勤務間インターバル制度

勤務間インターバル制度とは「1日の勤務終了後、翌日までの出社までに一定期間以上の休息を確保するための制度」を言います。

こちらは努力義務になっています。

年次有給休暇

労働基準法では、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図るため、法定の休日のほかに毎年一定の日数を「年次有給休暇」として与える権利を定めています。

年次有給休暇の発生用要件は「雇入れ日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者」になります。8割未満の労働者には、年次有給休暇を付与する必要はありません。

年次有給休暇は、パートタイマーなど所定労働日数の少ない者にも、日数は少ないが付与されます(=比例付与)

また、年次有給休暇を与える時季や取得義務のポイントとして、以下を理解しておきましょう。

年次有給休暇を与える時季・取得義務

  • 労働者の請求する時季に年次有給休暇を与えることが原則(=時季指定権
  • 労働者が時季を指定することのできる期間は2年間
  • 使用者は、年次有給休暇のうち5日を越える部分の日数は、計画的に付与できる(=計画的付与
  • 事業の正常な運営を妨げる休暇請求に対し、他の時季に休暇を与えることができる(=時季変更権
  • 年次有給休暇10日以上の労働者には、年5日以上の取得が義務化

労働時間・休憩・休日の適用除外

管理監督者は、労働時間、休憩、休日に関する規定は適用されません。ただし、年次有給休暇、深夜残業の規定は適用される点は理解しておきましょう。

なお、管理監督者は、職制上の役職者ではなく、経営者と一体的な立場などの実態基準で判断されます。

賃金

賃金支払の5原則

賃金は労働者にとって生活の糧となるものであることから、労働基準法では、賃金の支払い方法について、5つの支払い原則を設けています。

ここでの賃金とは「賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払う全てのもの」を指します。

賃金支払5原則と例外

  • 通貨払(原則)
    • 例外:通勤定期券の現物払可(労働協約に定めが必要。労働組合がない場合、現物払は不可)
    • 例外:賃金の口座振替可(労働者の同意を得た場合)
    • 例外:賃金のデジタル払可(事前の労使協定の締結や労働者の個別の同意必要)
  • 直接払(原則)
    • 例外:使者(妻など)に支払可
    • ※未成年の場合でも、親権者または後見人は、その賃金を代わって受け取ることはできない
  • 全額払(原則)
    • 例外:所得税や社会保険料の控除可
    • 例外:社宅の家賃などの控除可(労働協約に定めが必要)
  • 毎月1回以上払(原則)
    • 例外:臨時に支払われる賃金、賞与、退職金など
  • 一定期日払
    • 例外:勤続手当、精勤手当など

割増賃金

労働者に、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた使用者は、割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金の対象となるのは、以下の場合です。

増賃金の支払い対象者

  • 時間外労働
    • 法定労働時間(1日8時間)を超えて労働させた場合
  • 休日労働
    • 法定休日に労働させた場合
    • 法定休日とは、労働基準法の休日労働の対象日。原則1週間に1日
  • 深夜労働
    • 深夜の時間帯(午後10時~午前5時まで)に労働させた場合

割増賃金の金額は、通常の労働時間または労働日の賃金に、以下の率をかけて割増した金額になります。

試験対策では、「時間外労働+休日労働」が加算した6割以上ではなく、3割5分以上になっている点に注意しましょう。

なお、1ヵ月に60時間を超える時間外労働については、割増率が「5割以上」となる点も覚えておきましょう。

ちなみに、法定労働時間(1日8時間)よりも所定労働時間が短く(例:7時間)、1時間残業した場合は所定外労働時間になり、法定労働時間に含まれるため、1時間分の割増賃金を支払う義務がない点に注意しましょう。

平均賃金

平均賃金とは、「算定すべき事由の発生した日以前3ヶ月間に、その労働者に対して支払われた賃金の総額を、その期間の総日数で除した金額」を言います。

この平均賃金は、解雇予告手当、休業手当(平均賃金の100分の60以上の手当)の算定基準として用いられます。

産前産後

労働基準法では、産前は「6週間」、産後は「8週間」は就業不可となっています。この期間はすべての女性が対象になります。

産前は請求があれば休業を取らせる必要があります。

なお、産後は「6週間」は休業を取らせる必要がありますが、産後6週間を経過した女性が請求した場合は、医師が支障がないと認めた業務に就かせることができます。

また、生後満1歳に達しない生児を育てる女性から請求があった場合、休憩時間以外で、1日2回各々少なくとも30分、育児時間を与える義務があります。

【過去問】令和4年度 第23問(労働時間、休憩・休日)

問題

Q.労働基準法の定めに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
使用者により明示された労働条件が事実と相違する場合に、労働者が労働契約を解除するためには、労働契約を解除する日の30日前までにその予告をしなければならないと規定されている。

【イ】
使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと規定されている

【ウ】
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、または公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては拒んではならず、選挙権の行使は国民の重要な権利であるから、その時間の給与は支払わなければならないと規定されている。

【エ】
労働基準法で定める労働条件の基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、当該基準に達しない部分のみならず、労働契約全体が無効となると規定されている。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。労働者からの退職の申し出は「2週間前」になるため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。試験当日はスルーしましょう。労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使した場合について、給与は必ずしも支払う必要がないとされているため、不適切です。

エ:不適切。労働基準法の基準に満たない労働条件は「無効」ですが、労働者に有利な労働条件は「有効」のままであるため、不適切です。

【過去問】令和5年度 第26問(労働時間、休憩・休日)

問題

Q.労働時間に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
1週間の所定労働時間が37時間30分で1日の所定労働時間が7時間30分の完全週休二日制の事業場において、就業規則に延長勤務を指示することがある旨規定され労働者に周知されている場合に、使用者は、時間外労働に関する書面による労使協定を締結していなくても、所定労働時間外の労働の制限がない労働者を法定労働時間以内である30分間は延長して勤務させることができる。

【イ】
12時から13時までを昼食休憩として休憩時間を与えている事業場において、一斉休憩の適用除外に関する書面による労使協定を締結したうえで、この時間帯に電話及び来客対応のために労働者の一人を当番制により待機させている場合、当番中に電話も来客も全くなかったときは、当該時間は労働時間ではなくなる。

【ウ】
使用者が実施する技術水準向上のための教育又は研修が所定労働時間外に実施される場合には、当該教育又は研修が、参加しない労働者に就業規則で定めた制裁を科すなど不利益取り扱いによって参加を強制するものではない自由参加制であっても、その時間は時間外労働になるため、時間外労働に関する書面による労使協定の締結が必要となる。

【エ】
定期路線トラック業者において、運転手に対してトラック運転の他に貨物の積み込みを行わせることとして、トラック出発時刻の数時間前に出勤を命じている場合、貨物の積み込み以外の時間の労務の提供がない手待ち時間は労働時間ではない。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。法定労働時間を超えて労働させる場合は労使協定の締結が必要ですが、法定労働時間(1日8時間、週40時間)よりも所定労働時間が短い場合は、労使協定は不要であるため、適切です。

イ:不適切。労働者を指揮命令の下に置いており、労働時間に該当するため、不適切です。

ウ:不適切。参加を強制するものではない自由参加制の場合は、時間外労働に関する書面による労使協定の締結は不要であるため、不適切です。ただし、事実上の強制と考えられる場合は、労使協定の締結が必要です。

エ:不適切。労働者を指揮命令の下に置いており、労働時間に該当するため、不適切です。

【過去問】令和2年度 第24問(労働時間、休憩・休日)

問題

Q.労働基準法第36 条の手続きによる労使協定(以下「36 協定」という)によって、法定労働時間を延長して労働させることができる時間外労働(ないし時間外労働に休日労働を加えた時間)の上限に関する記述として、最も不適切なものはどれか
なお、本問中、建設事業、自動車運転手、医師、鹿児島県及び沖縄県における砂
糖製造事業については考慮に入れないものとする。

【ア】 
違反に対して罰則が適用される時間外労働(ないし時間外労働に休日労働を加えた時間)の上限に関する規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務についても適用される。

【イ】
時間外労働の限度時間は、原則として1か月について45時間及び1年について360時間(対象期間が3か月を超える1年単位の変形労働時間制にあっては、1か月について42時間及び1年について320時間)である。

【ウ】
事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に原則としての限度時間を超えて労働させる必要がある場合においては、36協定に特別条項を付加することができるが、それによって労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間は、1か月について100時間未満の範囲内に限られ、並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間は720時間を超えない範囲内に限られる。

【エ】
使用者は、36協定の定めるところによって労働時間を延長して労働させ、又は休日において労働させる場合であっても、1か月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間は、100時間未満でなければならない。

解答・解説

正解:ア

ア:不適切。選択肢の通りです。法改正に伴い、時間外労働の上限に関する規定は、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務についても適用されないため、不適切です。試験会場では、一旦スルーして他の選択肢を見ましょう。

イ:適切。時間外労働の限度時間は、原則1か月は45時間、1年は360時間です。3か月を超える1年単位の変形労働時間制は、1か月で42時間、1年で320時間となるため、適切です。

ウ:適切。選択肢の通りです。

エ:適切。選択肢の通りです。

【過去問】令和2年度 第25問(労働時間、休憩・休日)

問題

Q.労働基準法第32条の3に定められた、いわゆる「フレックスタイム制」に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
フレックスタイム制は、一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者が仕事と生活の調和を図りながら、効率的に働くことを可能とする制度であって、当該一定期間は1か月を超えることはできない。

【イ】
フレックスタイム制を採用した場合は、労働基準法第34条第2項に定められた休憩についてのいわゆる「一斉付与の原則」は適用されない。

【ウ】
フレックスタイム制を採用する場合であって、対象となる労働者に支払われると見込まれる賃金の額が当該企業における労働者一人当たりの平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準である場合は、労働時間、休日及び深夜労働に関する割増賃金の支払いを要しない。

【エ】
フレックスタイム制を採用する場合には、労働基準法第32条の3に定められた労使協定において標準となる1日の労働時間を定めておかなければならない。

解答・解説

正解:エ

ア:不適切。フレックスタイム制の清算期間は「3か月」であるため、不適切です。

イ:不適切。フレックスタイム制でも、労働基準法の休憩時間や休憩の与え方の考え方が適用されるため、不適切です。

ウ:不適切。フレックスタイム制では法定労働時間を超えた時間外労働には割増賃金が適用されるため、不適切です。

エ:適切。選択肢の通りです。

【過去問】令和元年度 第22問(労働時間、休憩・休日)

問題

Q.「働き方改革」の一環として改正された労働基準法の第39 条に定められた年次有給休暇に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
使用者は、年次有給休暇を10労働日以上付与される労働者に、付与した基準日から1年以内に5日について、時季指定して年次有給休暇を取得させなければならないが、既に5日以上の年次有給休暇を請求・取得している労働者に対しては、時季指定をする必要はない。

【イ】
使用者は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した週所定労働日数が5日である労働者に10労働日の年次有給休暇を付与しなければならないが、8割未満である者に対してはその出勤日数に比例した日数の年次有給休暇を付与しなければならない。

【ウ】
使用者は、要件を満たした労働者に年次有給休暇を付与しなければならないが、労働基準法第41条に定められた監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者は、この対象から除かれる

【エ】
使用者は、労働者本人が時季を指定して年次有給休暇の取得を請求した場合、事業の正常な運営を妨げる場合であっても、これを変更することができない。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。 年次有給休暇の取得要件に週所定労働日数は含まれていません。また、全労働日の8割未満にはその年の有給休暇を付与する義務がないため、不適切です。

ウ:不適切。年次有給休暇は管理監督者も適用されるため、不適切です。

エ:不適切。労働働が請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は、他の時季にこれを与えることができる(時季変更権)ため、不適切です。

【過去問】令和5年度 第24問(賃金)

問題

Q.賃金又は退職金に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
従業員の業務実績に応じて、一定比率を賃金とする出来高払制度によって賃金計算をする労働契約を締結している場合には、使用者は、労働時間に応じた一定額の賃金保障をする必要がなくなる。

【イ】
使用者は、最低賃金法による最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならず、同法には、この最低賃金支払義務に違反した者に対して罰金に処する旨の規定が設けられている。

【ウ】
懲戒解雇の場合には、使用者は、労働基準法の規定により退職金として、懲戒解雇等の理由がない場合に支払われるべき額の6割を支払わなければならない

【エ】
労働基準法により賃金は毎月一回以上一定の期日を定めて支払うこととされているため、従業員が疾病治療の費用に充てるために既往の労働に対する賃金を請求した場合であっても、使用者は、あらかじめ定めた支払期日前に当該賃金を支払わなくてよい。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。出来高払制度で契約している場合でも、労働時間に応じた一定額の賃金保障をする必要があるため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。就業規則に懲戒解雇による退職金不支給を定めているケースもあり、6割とは限らないため、不適切です。

エ:不適切。従業員が疾病治療の費用のために既往の労働に対する賃金を請求した場合、使用者はあらかじめ定めた支払期日前に当該賃金を支払わなければならないと定められており、不適切です。

【過去問】令和3年度 第26問(賃金)

問題

Q.労働基準法における賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
賃金は、通貨で支払わなければならないが、労働組合がない企業について、労働者の過半数を代表する者との書面による協定があれば、使用者は通勤定期券や自社製品等の現物を賃金の一部として支給することができる。

【イ】
賃金は、通貨で支払わなければならないが、使用者は労働者の同意を得て、労働者が指定する銀行の労働者本人の預金口座へ振り込む方法で支払うことができる。

【ウ】
労働基準法で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいうが、就業規則に支給条件が明確に定められている結婚手当は賃金となることはない。

【エ】
労働者が未成年者である場合には、未成年者は独立して賃金を請求することはできず、親権者又は後見人が、未成年者に代わってその賃金を受け取ることとなる。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。労働組合がない場合、現物払は不可であるため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。就業規則に支給条件が明確に定められている手当も賃金に含まれるため、不適切です。

エ:不適切。普通に高校生がアルバイトをして賃金を受け取っているため、不適切です。

【過去問】平成30度 第25問(賃金)

問題

Q.労働基準法に定める割増賃金に関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
管理監督者を深夜に労働させた場合、通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

【イ】
契約社員を年俸制で雇用する場合、年俸額が通常の労働時間の賃金に相当する部分と時間外労働による割増賃金に相当する部分とに明確に区分されているケースでは、時間外労働の時間にかかわらず、年俸の月割額とは別に割増賃金を支払う必要はない。

【ウ】
毎週日曜日と土曜日を休日とする完全週休2日制の企業の場合、日曜日と土曜日のどちらの休日労働についても割増賃金率を3割5分以上としなければ、労働基準法違反となる。

【エ】
割増賃金の算定基礎から除外される賃金は、①家族手当、②通勤手当、③別居手当、④子女教育手当、⑤住宅手当、⑥臨時に支払われた賃金、⑦ 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金の7 種類のみであり、実際に支払われている手当がこの7種類に該当するかどうかは、その名称により判断することになる。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。割増賃金が固定払でも、固定払の額が時間外労働した時間×2割5分以上の賃金を下回っていれば、不足相当額を支払う必要があるため、不適切です。

ウ:不適切。労働基準法の休日労働日である法定休日は「1週間に1日」です。土曜日と日曜日のどちらも出勤した場合は、どちらか一方の曜日が休日労働(割増賃金率3割5分以上)、もう一方は、時間外労働(割増賃金率2割5分以上)になるため、不適切です。

エ:不適切。難しい選択肢ですが、「名称」ではなく、「実態」で判断するため、不適切です。試験会場ではスルーして他の選択肢で判断しましょう。

【過去問】平成29度 第26問(賃金)

問題

Q.労働基準法に基づく賃金の支払いに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
使用者が賃金を労働者の銀行口座への振込みによって支払うためには、当該労働者の同意を得なければならない。

【イ】
使用者は、年俸制で年俸額が600万円の労働者に対しては、毎月一定の期日を定めて月50万円ずつ賃金を支払わなければならない。

【ウ】
賃金は、直接労働者に支払わなければならないが、未成年者の親権者または後見人は、その賃金を代わって受け取ることができる。

【エ】
毎月の第4金曜日というような特定された曜日に定期賃金を支払うことを、就業規則で定めることができる。

解答・解説

正解:ア

ア:適切。選択肢の通りです。

イ:不適切。年俸制も「毎月1回以上払」の原則が適用されますが、金額までは指定がないため、不適切です。

ウ:不適切。未成年の場合でも、親権者または後見人は、その賃金を代わって受け取ることはできないため、不適切です。

エ:不適切。賃金支払5原則は「一定期日払」です。曜日を指定すると、月によって日にちが変わってしまうため、不適切です。

【過去問】平成27年度 第22問(賃金)

問題

Q.賃金の支払いに関する記述として、最も適切なものはどれか。

【ア】 
就業規則により1日の勤務時間が午前9時から午後5時まで(休憩時間1時間)と定められている事業所で、労働者に午後5時から午後6時まで「残業」をさせた場合、労働基準法第37条の定めにより、この1時間についての割増賃金を支払わなければならない。

【イ】
賃金はその全額を労働者に支払わなければならないのが原則であるが、法令で定められている源泉所得税や社会保険料などは賃金からの控除が認められている。

【ウ】
通勤距離が片道2キロメートル未満でも、自家用自動車、自転車等の交通用具を使用する場合に支給される通勤手当については非課税扱いとなる。

【エ】
労働者が業務上の災害により休業する場合には、労働者災害補償保険法に基づき休業補償給付が支給されるが、休業3日目までは事業主が、平均賃金の10割に相当する額を休業補償として支払わなければならない。

解答・解説

正解:イ

ア:不適切。所定労働時間が7時間であるため、法定労働時間に足りない所定外労働時間の1時間は割増賃金を払う必要はないため、不適切です。

イ:適切。選択肢の通りです。

ウ:不適切。難しい選択肢ですが、片道2キロメートル未満でも、全額非課税になるわけではないため、不適切です。試験会場ではスルーしましょう。

エ:不適切。難しい選択肢ですが、労働者が業務上の災害により休業する場合は、労働者災害補償保険法に基づき休業補償給付が支給されますが、支給されるのは休業4日目以降であるため、不適切です。

今回のおさらい

今回は「労働基準法(労働時間、休憩・休日、賃金、産前産後)」を勉強しました。

労働時間と賃金が出題されやすいですが、深追いはせず、基本的な部分を抑えるようにしましょう。

労働基準法(労働時間、休憩・休日、賃金、産前産後)

  1. 労働基準法では、法定労働時間は「1日:8時間以内(休憩時間除く)」「1週間:40時間以内(休憩時間除く)」と定めれれているが、時間外労働の協定(36協定)を締結することで、「1か月:45時間」「1年:360時間」を上限に労働させることができる。
  2. 年次有給休暇は「雇入れ日から6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者」に対して1年で10日与える必要がある。ただし、使用者は、年次有給休暇のうち5日を越える部分の日数は、計画的に付与できる(=計画的付与)。
  3. 労働者に、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた使用者は、時間外労働と深夜残業は「2割5分以上」、休日残業は「3割5分以上」の割増賃金を払う必要がある。ただし、法定労働時間までの所定外労働時間には割増賃金を支払う義務がない点に注意である。

中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。

できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。

この記事に満足頂いた方は、ぜひTwitterのフォローをお願いします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士(令和2年度合格)

令和元年度、1次試験合格(通信講座)
その年の2次試験はあえなく不合格。
翌年は3ヶ月の完全独学で2次試験に合格。

目次