中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「コトラーの競争地位別戦略」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- コトラーの競争地位別戦略
- リーダー(全方位)、チャレンジャー(差別)、フォロワー(模倣)、ニッチャー(集中)
- 周辺需要拡大、非価格競争、同質化対応、最適シェア維持
- ミニリーダー戦略
試験対策
「競争地位別の戦略方針」の正誤を問う問題が出題されています。
経営戦略策定プロセスとの関係
最初に、今回の学習内容が【経営戦略策定プロセス】のどこに該当するか、確認しましょう。
今回の内容は、事業戦略において、ポーターと並んで重要なコトラーの理論になります。
コトラーの競争地位別戦略
コトラーは、市場における競争地位(シェア順位)に応じて、競争対応戦略が異なると主張しました。ポーターと同じくポジショニング学派に属します。
コトラーは、市場における競争地位に応じて「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」に分類しています。
リーダー
市場シェア首位の企業が該当します。
リーダーの市場目標は「最大シェア」「最大利潤」「名声・イメージ」で、市場全体を対象としたフルカバレッジの「全方位戦略」を採用します。
また、リーダーの戦略には定石があります。
リーダーの戦略定石
- 周辺需要拡大
- 業界全体の需要を底上げしていく戦略。市場が拡大すると、リーダーが最も利益を享受できるため、より多くの人に購買してもらうように働きかける
- 非価格競争
- 価格競争はリーダーに利潤縮小のダメージが最も大きい。ブランドイメージの毀損にもなるため、特に遵守すべき戦略
- 同質化対応
- チャレンジャー以下の戦略を同質化(模倣)する戦略。リーダーの経営資源が大きいため、余程のことがない限り、リーダーが勝つことになります
- 最適シェアの維持
- 一定以上のシェアを獲得しても、利益は向上しないため、利益率が最適なシェアを維持する
チャレンジャー
業界2位の企業が該当します。
チャレンジャーの市場目標は「市場シェア」で、リーダーにチャレンジして、リーダーの地位を奪うことです。
戦う市場はリーダーと類似していますが、リーダーよりも経営資源で劣るため、市場をある程度絞ったセミフルカバレッジにおいて「差別戦略」を採用します。
リーダーが取りたくても取れない思い切った製品戦略や価格戦略を取るといった差別化を行う場合もあります。
フォロワー
業界3番手以下の企業が該当します。
トップの座を奪うほどの経営資源は持ち合わせていないため、市場目標を「生存利潤」に置き、経済性セグメント(中〜低価格帯)で「模倣戦略」を採用します。
リーダーをはじめとする成功企業の模倣を低価格で実現していくと同時に、資源蓄積と研究開発を行うことで、チャレンジャーもしくはニッチャーのいずれかを目指していきます。
ニッチャー
市場の特定領域(ニッチ)において、独自性を発揮する企業が該当します。
ニッチャーの市場目標は「利潤」「名声・イメージ」で、採算性が低いためリーダーが扱わない分野やリーダーが気づいていない特定市場・セグメントを対象とした「集中戦略」を採用します。
特定市場・セグメントにおけるリーダーである「ミニリーダー戦略」を採用します。
基本的な戦略は、リーダーの戦略定石(周辺需要拡大、非価格競争、同質化対応、最適シェア維持)を採用していきます。
【過去問】令和5年度 第5問(競争地位別戦略)
問題
Q.下表では、ある市場のある年度におけるメーカー企業(企業A~D)の売上高(売上数量と売上金額)が示されている。「競争地位別戦略」に基づいた、各社のとる戦略に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
【ア】
企業Aは、数量シェアを増加させるために、積極的に価格を下げる。
【イ】
企業Bは、製品単価が最も高く市場拡大の利益が大きいため、市場全体の拡大を第一に目指す。
【ウ】
企業Cは、製造コストを上げて製品品質を高めながら、競合からの顧客獲得を狙う。
【エ】
企業Dは、最大のシェアを維持するためには、他社の行動に対して同質化を行うだけでなく、自社からのイノベーションも検討する。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。企業Aは売上金額が第2位のチャレンジャーであるため、価格を下げるよりも差別化が大事なるため、不適切です。
イ:不適切。企業Bは製品単価が高いが、売上金額が小さくニッチャーになります。ニッチャーの戦略は集中戦略であるため、不適切です。
ウ:不適切。企業Cはフォロワーです。フォロワーは模倣戦略が戦略であるため、不適切です。
エ:適切。企業Dはリーダー企業であり、記述の通りです。
【過去問】令和4年度 第4問(設問2)(競争地位別戦略)
問題
Q.次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
消費財を生産・販売するX業界における市場シェア(占有率)は、以下のとおりである。
A社 45 %
B社 30 %
C社 15 %
D社 10 %
なお、B社はA社と比較して市場シェアでは劣るものの、製品技術の面では、X業界でA社と対抗できるだけの経営資源を保有している。
(設問2)
X業界におけるB社の市場地位や状況を前提とした場合、B社の戦略として最も適切なものはどれか。
【ア】
A社から市場シェアを奪取しようとする場合には、経営資源を、すべての市場セグメントに偏りなく投入するのではなく、特定の市場セグメントに集中的に投入する。
【イ】
A社よりも低価格の製品を供給するフォロワーとして、A社からの攻撃を回避する。
【ウ】
A社をはじめとする競合企業への同質化によって、市場シェアの拡大を図る。
【エ】
B社の市場地位を利用して、小売店でのシェルフ・スペースの確保を、A社をはじめとする競合企業よりも有利に進める。
【オ】
規模の経済や経験曲線効果を利用して、A社をはじめとする競合企業に対するコスト面での優位性を確立する。
解答・解説
正解:ア
ア:適切。B社はチャレンジャーとして、セミフルカバレッジを採用するため、適切です。一瞬、ニッチャーの戦略と間違う可能性がありますが、他の選択肢からも判断していきます。
イ:不適切。選択肢はフォロワーの戦略であるため、不適切です。
ウ:不適切。選択肢はリーダーの戦略であるため、不適切です。
エ:不適切。選択肢はリーダーの戦略であるため、不適切です。
オ:不適切:エ:不適切。選択肢はリーダーの戦略であるため、不適切です。
【過去問】平成28年度 第7問(競争地位別戦略)
問題
Q.業界での競争地位によって、企業はリーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャーに分類できる。そのなかで、チャレンジャーとニッチャーに関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
チャレンジャーは、業界で生き残ることを目標に、購買の動機として価格を重視するセグメントをターゲットにし、徹底的なコストダウンを行い、代替品を低価格で提供していく戦略を採る。
【イ】
チャレンジャーは、市場全体をターゲットとするフル・カバレッジにより、リーダーの製品を模倣していく戦略を採る。
【ウ】
チャレンジャーは、リーダーに対する価格・製品・プレイス・プロモーションという4P の差別化よりも、ドメインの差別化を行う。
【エ】
ニッチャーは、狭いターゲットに対して、業界の価格競争には巻き込まれないように閉鎖型の販売チャネルを採用して、媒体を絞り込んだプロモーションを展開する。
【オ】
ニッチャーは、自社が属する業界のライフサイクルの導入期に活動が活発になり、他社の行動を追随する同質化を推進し、市場全体の規模を広げる役割を担っている。
解答・解説
正解:エ
ア:不適切。選択肢はフォロワーの戦略であるため、不適切です。
イ:不適切。チャレンジャーの戦略は「差別化」であるため、不適切です。
ウ:不適切。チャレンジャーはリーダーと同じ土俵で、4Pで差別化するのが基本戦略であるため、不適切です。
エ:適切。ニッチャーは特定領域に集中していくため、適切です。
オ:不適切:ニッチャーは特定領域に集中していくため、不適切です。
【過去問】平成24年度 第6問(競争地位別戦略)
問題
Q.企業は自社の業界における相対的な地位を踏まえて競争戦略を展開することが重要である。そのような競争戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
チャレンジャーは、リーダーの高い技術力が生み出した差別化された製品と同質な製品を販売し、リーダーの差別化効果を無効にすることを狙うべきである。
【イ】
ニッチャーは特定の市場セグメントで独自性を発揮できる戦略を遂行して、強い市場支配力を狙うことが必要である。
【ウ】
フォロワーは特定市場でリーダーの製品を模倣しつつ、非価格競争によって収益をあげることが基本戦略になる。
【エ】
ライバル企業に比べて技術力や生産能力に劣るニッチャーの場合、価格競争に重点をおいた販売戦略を幅広い市場で展開することが重要になる。
【オ】
リーダーは周辺の需要を拡大することによって、売り上げの増加や市場シェアの拡大を図ることができるが、その反面で新製品の投入を遅らせてしまうことになる。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。チャレンジャーはリーダーとは差別化された製品を採用するため、不適切です。
イ:適切。選択肢はニッチャーの戦略であるため、適切です。
ウ:不適切。フォロワーは経済性セグメント(中〜低価格帯)で価格競争をするのが戦略であるため、不適切です。
エ:不適切。ニッチャーは特定領域に集中し、非価格競争を採用するのが戦略であるため、不適切です。
オ:不適切:リーダーは周辺需要の拡大を図りますが、新製品の投入とは関係がないため、不適切です。
今回のおさらい
今回は「コトラーの競争地位別戦略」を勉強しました。
4つの競争地位と戦略の方向性を理解しておけば、試験対策としては大丈夫です。
コトラーの競争地位別戦略
- コトラーは、市場における競争地位に応じて、「リーダー」「チャレンジャー」「フォロワー」「ニッチャー」に分類し、採用すべき競争対応戦略が異なると主張している
- リーダーはシェア首位の企業で「全方位戦略」を採用する。また、リーダーの戦略定石には「周辺需要拡大」「非価格競争」「同質化対応」「最適シェア」がある
- チャレンジャーは「差別戦略」、フォロワーは「模倣戦略」、ニッチャーは「集中戦略(ミニリーダー戦略)」を採用する
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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