中小企業診断士1次試験合格を支援する「合格ドリル」です。
今回は「企業の社会的責任(CSR)」です。 インプットしたら、過去問にチャンレジしましょう。
出題範囲との関係
【経営戦略論】
・経営計画と経営管理
・企業戦略
・成長戦略
・経営資源戦略
・競争戦略
・技術経営(MOT)
・国際経営(グローバル戦略)
・企業の社会的責任(CSR)
・その他経営戦略論に関する事項
【組織論】
【マーケティング】
今回の学習キーワード
- 企業の社会的責任(CSR)
- フィランソロピー、メセナ
- ISO26000
- 社会的責任投資(SRI)
- インパクト投資
- CSV(Creating Shared Value)
- ESG
- SDGs(持続可能な開発目標)
今回の学習キーワード
出題頻度が高くなっています。「ISO26000」「社会的責任投資(SRI)」「CSV」「ESG」の特徴を理解しておきましょう。
企業の社会的責任(CSR)
第1回で勉強しましたが、企業はゴーイングコンサーンとして利益を上げ続けていくことが重要ですが、企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の重要性も高まっています。
企業の社会的責任(CSR)とは「企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆる利害関係者からの要求に対して適切な意思決定を行うこと」をいいます。
具体的には、メセナやフィランソロピーなどの活動が挙げられます。
企業の社会的責任(CSR)
- フィランソロピー
- 企業による社会的活動や寄付行為
- メセナ
- 文化や芸術に対する企業の支援
ISO26000
ISO(国際標準化機構)では、社会的責任に関する国際規定である「ISO26000」を発行しています。
ISO26000は、企業などの営利組織だけでなく、学校、病院、国際機関、政府など、幅広い組織を対象としている点に注意しましょう。
日本産業規格(JIS)では「JIS Z 26000」の規格が存在しています。
社会的責任投資(SRI)
CSR活動を積極的に行っている企業を、証券投資の面から支援する投資活動を言います。
インパクト投資
経済的リターンと並行して、測定可能かつポジティブな社会的・環境的インパクトを生み出す企業に投資することを言います。
CSV(Creating Shared Value)
競争戦略(事業戦略)で勉強したポーターが提唱した「社会的課題の解決(社会価値)」と「競争力の向上(経済価値)」を同時に創造するという理論です。
従来の善行的な社会貢献(CSR)だけでは、企業が継続的に活動することが困難であることから、社会的課題を解決する製品を提供するなど、社会的課題の解決と競争力の向上をリンクさせていこうとする概念です。
「共通価値の創造」と訳されます。
ESG/ESG投資
ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取ったものです。企業評価において、業績などの財務情報に加えて、これら非財務情報を取り入れる動きをいいます。
企業の安定的かつ長期的な成長には、環境や社会問題への取り組み、ガバナンスが影響しているという考えが広がっています。
投資の意思決定において、従来の財務情報だけでなく、ESGも考慮に入れる手法は「ESG投資」と呼ばれています。
取り組み例もイメージできるようになっておきましょう。
ESG(環境・社会・ガバナンス)
- 環境(E)
- 再生可能エネルギーの使用、CO2の排出削減、製造工程での廃棄物低減
- 社会(S)
- ダイバーシティ、ワークライフバランス、個人情報の保護・管理
- ガバナンス(G)
- 積極的な情報開示、取締役会の多様性、資本効率への高い意識
SDGs(持続可能な開発目標)
SDGs(Sustainable Development Goals)とは「持続可能な開発目標」と呼ばれ、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国連が定めた国際目標のことです。
17の世界的目標、169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓っています。
17の世界的目標
- 貧困をなくす
- 飢餓をゼロに
- 人々に保健と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
【過去問】令和6年度 第12問(企業の社会的責任)
問題
Q.企業の社会的責任やESG投資に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【ア】
「インパクト投資」とは、測定可能かつポジティブなインパクトを社会および環境に生み出す企業に、経済的リターンを求めず投資することである。
【イ】
「統合報告書」には、企業の売上高や資産などのような従来の財務諸表で記載されている内容に加えて、温室効果ガスの排出量、有給休暇の取得率、経営者報酬の決め方などが記載される。
【ウ】
CSVとは、経済的価値を創造しながら、社会課題に対応することで社会的価値も同時に創造するアプローチである。
【エ】
環境・社会問題への取り組みが十分でないと思われる企業の株式や債券を売却することによって、投資家が企業に圧力をかけることを「ダイベストメント」と呼ぶ。
【オ】
環境に対して適切な対応をしているように見せて、実態は二酸化炭素を多く排出しているような企業を「グリーンウォッシュ」と呼ぶ。
解答・解説
正解:ア
ア:不適切。インパクト投資とは、経済的リターンと並行して、測定可能かつポジティブな社会的・環境的インパクトを生み出す企業に投資することであるため、不適切です。
イ:適切。選択肢の通りです。統合報告書が分からなくても、間違っている感じは受けないです。
ウ:適切。選択肢の通りです。
エ:適切。選択肢の通りです。試験会場ではわからない可能性が高いため、選択肢アの違和感に気づきましょう。
オ:適切・選択肢の通りです。試験会場ではわからない可能性が高いため、選択肢アの違和感に気づきましょう。
【過去問】令和5年度 第13問(企業の社会的責任)
問題
Q.企業の社会的責任に関する記述として、最も適切なものはどれか。
【ア】
A. キャロルの社会的責任ピラミッドのフレームワークでは、社会貢献責任をピラミッドの土台に、経済的責任を最上部を形成するものと位置づけた。
【イ】
M. フリードマンによると、企業の社会的責任とは株主利益の最大化であるが、彼の企業の社会的責任論は、法律や社会規範を遵守した上での競争を行うというルールを前提としたものである。
【ウ】
P. ドラッカーによると、20 世紀初頭までの経営者に企業経営における社会的責任を意識した者はいなかったので、企業の社会的責任は現代の経営者の持つべき新しい課題であるとした。
【エ】
企業の社会的責任に関し、R. フリーマンは、企業とステークホルダーは利害を巡って決定的な対立関係にあることを指摘し、両者の相互依存的関係を危険視する主張を展開した。
解答・解説
正解:イ
ア:不適切。キャロルの主張を知らなくても、企業活動の前提がゴーイングコンサーンであることを考慮すると、経済的責任とフィランソロピー的責任は逆であると類推されるため、不適切です。
イ:適切。フリードマンの主張を知らなくても、選択肢に違和感はないですね。
ウ:不適切。「社会的責任を意識した者はいなかった」と断定していますが、意識した経営者は存在していた可能性があるため、不適切です。
エ:不適切。フリーマンの主張を知らなくても、「両者の相互依存的関係を危険視」とは考えにくいです。
【過去問】令和4年度 第12問(企業の社会的責任)
問題
Q.次の文章の空欄に入る記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ISO(国際標準化機構)は、企業の社会的責任(CSR)に関する国際規格であるISO26000 を 2010 年に発行した。ISO26000 は、【 】 。
〔解答群〕
ア:ISO 独自の規格であり、日本産業規格(JIS)には対応する規格が存在しない
イ:環境マネジメントの規格である ISO14000 のように、マネジメント・システムに関する認証規格である
ウ:業種を問わず利用できるガイダンス規格である
エ:その特性から、売上高 10 億米ドル以上の企業に限定して適用される
オ:その特性から、株式会社に限って適用される
解答・解説
正解:ウ
ISO26000は、企業などの営利組織だけでなく、学校、病院、国際機関、政府など、幅広い組織を対象としているため、ウが正解です。
【過去問】令和3年度 第13問(企業の社会的責任)
問題
Q.企業の社会的責任(CSR)は重要な戦略課題である。CSR に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
【ア】
CSR で重要なのは、利益を獲得するプロセスにかかわりなく、ステークホルダー間で利益を公平に分配することである。
【イ】
CSR とは、企業は社会に与える影響について責任を持ち、社会の持続的発展のために貢献すべきとする考え方と、それに基づいて実践される諸活動のことを指す。
【ウ】
CSR を遂行するためには、企業は株主に対する責任のみならず、従業員、取引先、消費者、地域住民、行政、社会全体といった様々なステークホルダーに対する責任を自発的に果たさなければならない。
【エ】
ISO26000 は、企業のみならず、あらゆるタイプの組織の社会的責任に関する国際規格である。
【オ】
不祥事が生じないよう、企業がコンプライアンスを日ごろから徹底することは、CSR の一環である。
解答・解説
正解:ア
ア:不適切。ステークホルダーの関わり方で、利益の分配が変わってくるため、不適切です。
イ:適切。選択肢の通りです。
ウ:適切。企業の社会的責任は、「企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆる利害関係者からの要求に対して適切な意思決定を行うこと」であるため、適切です。
エ:適切。ISO26000は、営利組織だけでなく、学校、病院、国際機関、政府など、幅広い組織を対象としているため、適切です。
オ:適切。コンプライアンスの徹底も、企業の社会的責任に含まれるため、適切です。
今回のおさらい
今回は「企業の社会的責任(CSR)」を勉強しました。
最近の出題頻度が増えていますが、今回勉強したことを理解しておけば問題ないと思います。
企業の社会的責任(CSR)
- 企業の社会的責任(CSR)とは「企業が利益を追求するだけでなく、社会への影響にも責任を持ち意思決定を行う」こと。フィランソロピーとは「企業による社会的活動や寄付行為」、メセナとは「文化や芸術に対する企業の支援」などがある。
- ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字を取ったもの。企業評価において、財務情報に加えて、これら非財務情報を取り入れる動きである。
- SDGsとは「持続可能な開発目標」と呼ばれ、17の世界的目標、169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓ったものである。
中小企業診断士は難関資格ですが、正しく勉強すれば、1~2年で合格できます。
できるビジネスマンへの第一歩として、中小企業診断士の勉強を考えてみてください。
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